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16、ロベールのその後
しおりを挟むロベールが王都に戻った後、これまでロベールを愛妾のように可愛がってくれた王都の高貴なご婦人達も、ダンテのロベールへの評価を耳にしたせいで、ロベールを避けるようになり、ロベールは画家としての顧客を全てなくしてしまいました。
その後‥画家としての顧客を失ったロベールは、ダンテのアドバイス通り単価の少ない本の挿絵や酒場のポスターを描きながら、奥さんと子供と共に慎ましく暮らしていったようです。
ロベールの展示会が終わりロベールが王都へ帰ると、ロザンナがキャロルのもとにやって来ました。
「あんた、ロベールに何をしたのよ!」
「‥えっ?」
キャロルがとぼけていると、ロザンナが文句を言ってきました。
ロザンナの話によると‥ロザンナはロベールがこちらにやってきた時に、必ず貢物をしてデートをしてもらっていたのだそうです。ロベールにゴダール商会を商会したのもロザンナでした。
ロザンナは、ロベールの事が別れても大好きだったのです。それに‥ロベールがいつか子供が大きくなったら、奥さんと別れてロザンナと結婚すると言ってくれてたんだそうです。
「ロザンナ、ロベールの子供が大きくなったらって‥その頃あなた何歳になってると思う?ロベールに適当な事を言われて騙されてたのよ。‥あなた、自分だけを愛してくれる人を見つけて幸せにのりなさいよ。」
キャロルは歳上のロザンナに、まるで言い聞かせてやるかのように言いました。
ロザンナは力なく立ち上がると応接間を出て玄関口までフラフラと歩いて行きました。
キャロルも玄関までロザンナと共に歩いてきました。ロザンナを見送る為ではありません。
ロザンナと応接間で話している時に、窓の外にガナンを乗せた馬車が屋敷の門にとまったのが見えたので、ガナンを玄関まで迎えに来たのです。
キャロルは、髭をはやして頭もボサボサになった、作業着姿のガナンが玄関に向かって歩いてくるのをドキドキしながら見つめていました。
ガナンとすれ違いざまに、ロザンナがガナンに舌打ちしました。
「‥邪魔よ、どきなさい!この庭師風情が!」
そう言ってガナンを睨んでロザンナは去って行きました。
キャロルはその様子を見て思わず笑ってしまいました。
ガナンはすれ違いざまにロザンナを見ても全く目もくれなかったし、ロザンナもガナンを見てもガナンだと気付かないばかりか、庭師と間違えて舌打ちまでしたのですから‥。
「ただいま、キャロル。」
「アハハハ、アハハッ。おかえりなさい、旦那様。」
「キャロルー!会いたかった!」
ガナンがキャロルを抱きしめました。キャロルも強く抱きしめ返しました。
「旦那様、こんなにも長い間私を放っておいたのですから、今日は私の言う事をたくさんきいてもらいますよ。」
キャロルは悪戯っぽい笑顔でガナンに言いました。
「アハハハ、いいよ。何でも言ってごらん。」
「お姫様だっこでお部屋まで連れてって下さい。」
「はい、仰せのままに。」
ガナンはそう言って、キャロルを軽々と持ち上げ、歩き出しました。
キャロルはガナンに抱かれながら、侍女のマリーとエリにウインクをしました。
それを見たマリーとエリは、ほっとしたように笑い合いました。ヴィンセント男爵家にやっと平和が戻ってきたのですから。
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