初恋はかなわないけど‥

みるみる

文字の大きさ
上 下
37 / 48

37、舞踏会にて ダイアン様との再会

しおりを挟む

私が別室へ向かうと、入り口の所でダイアン様と目が合ってしまいました。

「‥レミー、久しぶり。‥しばらく見ない間に、ますます綺麗になったなぁ。」

「‥ダイアン様‥。」

ダイアン様の後ろには、フラン大国のアイシラ王女が立っていました。‥私は二人を見た瞬間、昔の嫌な記憶が蘇り、思わず顔をしかめてしまいました。

「‥レミー、君は僕の事をまだ恨んでいるかい?‥僕はあれからも君の事をずっと想っていたよ。‥それに時々無性に会いたくなっていたんだ。」

ダイアン様はそう言うと、私の髪を一筋すくい上げ、そこにキスをしました。

「‥‥奥様の前で‥最低!」

私はこの瞬間、ダイアン様に無性に腹が立ち、少し酔ってふらついていたダイアン様を、思いっきり突き飛ばしてしまいました。

‥ダイアン様は、簡単に倒れてお尻をついてしまいました。

別室にいた人達は、そんなダイアン様を見てクスクスと笑っているのでした。

ダイアン様は、情けない表情をして私に手を伸ばしました。‥起こしてくれ、という事でしょうか?私はうっかりその手を取ってしまいました。

すると、ダイアン様は口の端を吊り上げて私を見上げると同時に、掴んだ私の手を強く引き寄せ、抱きしめてキスをしようとしてきました。

「やめてー‥‥。」



「‥‥‥んぐ‥‥、んぐ‥。」

「‥‥?」

キスをされるかと思って抵抗していた私の耳に、ダイアン様の変な声が聞こえてきたので、私は思いっきり反らしていた頭をもとに戻し、閉じていた目も開けてみました。

すると、私とダイアン様の間に挟まれて、マキシム君がいました。ダイアン様は、私にキスしようとした口を、マキシム君の手で塞がれて、もがいていました。

「‥レミー、間一髪だったね。助けに入るのが遅れてごめんね。」

「‥マキシム君!なぜここにいるんですか、‥マキシム君!」

私はびっくりしたのと、嬉しいのとで、思わずマキシム君に抱きついてしまいました。

マキシム君は驚きながらも、抱きついてきた私の背中をトントンと叩いて宥めてくれました。

「レミー、怖かったね。もう大丈夫だ。」

マキシム君の腕の中は、温かくて、ほのかに汗と石鹸の香りがして、とても心地良かったので、私は公衆の面前だという事を忘れて、しばし抱きついたままでいました。

「レミー、もう大丈夫だから‥立てるかい?椅子の所まで行って腰掛けよう。」

私は渋々マキシム君から離れました。

そして、床で座り込んだままのダイアン様に再度近付きました。

私はダイアン様に対して、無性に何か一言言ってやりたくて堪らなくなったのです。

「ダイアン様!女性を馬鹿にするのも大概にして下さい!あと、お酒はきっぱりやめるべきだと思いますよ!

それと‥‥もっと身重の奥様の事を、思い遣るべきだと思います。あなたは‥‥。」


「もうやめて!」

私がダイアン様に文句を言っている最中に、アイシラ王女が割り込んできました。

「‥もういいの。もう、終わりにするわ。‥ダイアンに婚約者がいる事を知っていて近づいた私が悪いの!‥結婚した後も、ダイアンがレミーさんの事を時々愛おしそうに思い出している事も知ってたの。それにお酒に酔って、侍女達に手を出していた事も‥見て見ぬふりをしていたの。

ダイアンは、私の初恋の人なの。こんな彼でも愛していたのよ‥。」

アイシラ王女は、そう言って泣き出してしまいました。

するとダイアン様は嘲笑しながら、信じられない言葉をアイシラ王女に吐き捨てたのでした。

「‥アイシラのお腹の子だって、誰の子か知れたものじゃないだろ?‥どうせ愛人との子供なんだろう?」

その言葉を聞いたアイシラ王女は、ダイアン様の頬を思いっきり平手打ちしました。

「この子はあなたの子よ!‥愛人なんていないわ。頼りにならないあなたに代わって、私が政治を行なっていたのよ‥。あなたのいう愛人達は、そんな私の為に一生懸命に動いてくれた側近達よ。」

「‥そんな、‥そうだったのか。僕はてっきり君が僕の事を裏切ったのだと思って‥‥。だから、侍女達と浮気してしまったというのに‥。」

「‥もう、いいわ。あなたは我が国の王になる器でない事は、よく知っていたの。‥もう、いいの。終わりにしましょう。あなたの事を解放してあげるわ。‥さようなら、ダイアン。」

アイシラ王女は、そう言ってダイアン様から目を逸らすと、私のいる方を見てきました。

「‥あなたに謝ったりしないわ。だって‥私だって充分苦しんだのよ。」

アイシラ王女はそう言って、泣きそうな笑顔を私に見せると、一人その場から去って行きました。

取り残されたダイアン様は、相変わらず床に座り込んだままで、茫然としていました。

そこに、メディチ王国のミカエル王太子夫妻が現れました。

「‥レミー?」

「ルビーさん‥、ルビー様!」

レミーは、婚約者選定時代に仲の良かったルビーさんとの再会を喜びました。

「レミー、色々と力になれなくてごめんね。」

「‥私こそ、黙っていなくなってごめんなさい。」

レミーはミカエル王太子に気付き、礼をしました。するとミカエル王太子は、すまなそうな顔をしてレミーを見てきました。

「レミーさん、弟が済まなかった。あなたに我が国がした事を済まなく思う。‥許してくれとは言わないが‥、せめて謝罪の気持ちだけでも受け取ってくれ。」

そう言って、レミーに頭を下げてしまいそうな勢いの王太子様を制して言いました。

「そんな‥王太子様、お願いですから謝らないで下さい。もう済んだ事ですから。それより‥‥ダイアン様はこれからどうなりますか?」

「ダイアンはメディチ王国へ戻し、領地で隠居してもらうつもりだ。‥王位継承権も剥奪してな。」

王太子様はそう言うと、ルビー様を連れて去って行かれました。

やっと騒動が落ち着いて、野次馬達も立ち去った後、別室には私とマキシム君だけが残っていました。

‥‥タケル君も、いつの間にかいなくなっていました。

私とマキシム君は手を取り、お互いに見つめ合っています。

私は、マキシム君の一挙手一投足に集中していました。

室内に緊張感が漂う中、マキシム君が言いました。

「レミー、僕は君が好きだ。結婚を前提に付き合って欲しい。」

「‥はい!私もマキシム君が大好きです。宜しくお願いします!」

私はそう言って、マキシム君に抱きつきました。

それを‥マキシム君は、戸惑いながらも受け止めてくれて、抱きしめ返してくれました。

私は、この時人生で最高に幸せな瞬間の中にいました。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

辺境伯令息の婚約者に任命されました

風見ゆうみ
恋愛
家が貧乏だからという理由で、男爵令嬢である私、クレア・レッドバーンズは婚約者であるムートー子爵の家に、子供の頃から居候させてもらっていた。私の婚約者であるガレッド様は、ある晩、一人の女性を連れ帰り、私との婚約を破棄し、自分は彼女と結婚するなどとふざけた事を言い出した。遊び呆けている彼の仕事を全てかわりにやっていたのは私なのにだ。 婚約破棄され、家を追い出されてしまった私の前に現れたのは、ジュード辺境伯家の次男のイーサンだった。 ガレッド様が連れ帰ってきた女性は彼の元婚約者だという事がわかり、私を気の毒に思ってくれた彼は、私を彼の家に招き入れてくれることになって……。 ※筆者が考えた異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。クズがいますので、ご注意下さい。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...