令和百物語

みるみる

文字の大きさ
上 下
55 / 100

第五十五夜 仏間のお坊さん

しおりを挟む

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、

「お母さん、おばあちゃん一時間くらいお経さん唱えてるよ。ぼけたの?」

「呆けてないよ。お年寄りは信心深いの。ああやって、毎日ご先祖さまを供養してるのよ。」

「そうなの?じゃあ拓君もやった方が良い?」

「駄目だよ、お父さんに叱られるから。お父さん、南無阿弥陀仏の宗教じやないんだって。」

「じゃあ、拓君はお化けが出た時は何を唱えて、やっつければいいの?」

「‥その時はしょうがないから、拓君がその時覚えてる言葉を言えば良いよ。」

「じゃあ、その時だけ南無阿弥陀仏するね。」


僕の家にはおばあちゃんとお父さんとお母さんと僕がいる。

おばあちゃんは毎日一時間以上は仏壇にいる。だけど、お父さんはそれが嫌だと言っていた。お父さんは無宗教者だから、宗教が嫌いだと言っていた。あと、仏壇が家にあるのも嫌いなんだそうだ。

お父さんは、南無阿弥陀仏の事でおばあちゃんとよく喧嘩をしていた。

だから、おばあちゃんはしばらく南無阿弥陀仏をやめてたのに、最近またやり始めていた。どうしても長年の習慣でやめられないのだそうだ。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、

チーン、チン、チン、

南無阿弥陀仏‥


「あっ、終わったね。お父さんが仕事から帰ってくる前で良かったぁ。」

僕はおばあちゃんのいる仏間に向かった。

ガラガラ、

「おばあちゃん、終わった?あっ、こんにちは。」

おばあちゃんの真横にお坊さんがいた。かがみ込んで、おばあちゃんの顔をじっと見つめていた。僕が見てる前ですっと消えてしまったが‥‥。

「拓也、ここに誰かいるのか?」

「うん、お坊さんがいた。おばあちゃんの顔をじっと見つめてたよ。」

「お坊さんかぁ、知らんなぁ。気配も感じんかった。まだいるのか?もう帰ってしまったか?」

「あのね、お化けだったみたい。拓君の目の前でさっき消えた。」

「‥幽霊か、お坊さんの?」

「うん。」

「おばあちゃん、目が見えないから分からんかったなぁ。

アハハ、何か言ってくれれば気付いたのに。」

「‥ふうん。」

僕はおばあちゃんの部屋を出て、居間に行った。

「拓也、仏間に行ってたの?」

「うん。」

「おやつ、昨日の残りで良い?」

「‥‥ねぇ、お母さん。僕ね、お化けが出ても南無阿弥陀仏は唱えない事にした。南無阿弥陀仏してるおばあちゃんの真横にお坊さんの幽霊がいたんだよ。」

「えっ幽霊みたの、昼間だよ。見間違いじゃないの?」

「昼間でも幽霊いたんだよ。おばあちゃんなんかさぁ、思いっきり真横で幽霊に見られてるのに、目が悪いから気が付かなかったんだって。」

「‥うちに幽霊出るのか、嫌だな。」

お母さんは、僕の見た幽霊の話にびびっていた。僕はお父さんにも幽霊の話をしたくて、お父さんの帰りを待っていた。

ガラガラ、

「ただいま。拓也~、お父さんだよ~。」

僕はお父さんが仕事から帰ってきたから、玄関でお父さんにら抱きついて、さっきの幽霊の話をした。

「そっか、幽霊かぁ。でもお父さんが帰って来たからもう大丈夫だぞ!」

お父さんは、そう言って僕を安心させようとしてくれた。でも、僕はお父さんが怖がってくれなかったのを少し残念に思ってしまった。

でも、その夜お父さんが仏間の前を通る時に、小声で南無阿弥陀仏を唱えながら通るのを見てしまった。

僕は、お坊さんの幽霊に南無阿弥陀仏は効かないよって声をかけたかったけど、我慢した。僕が見てた事をしったら、お父さんのプライドが傷付くからです。

結局、お化けが出た時に何を唱えれば良いのかは分からずじまいだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】キミの記憶が戻るまで

ゆあ
BL
付き合って2年、新店オープンの準備が終われば一緒に住もうって約束していた彼が、階段から転落したと連絡を受けた 慌てて戻って来て、病院に駆け付けたものの、彼から言われたのは「あの、どなた様ですか?」という他人行儀な言葉で… しかも、彼の恋人は自分ではない知らない可愛い人だと言われてしまい… ※side-朝陽とside-琥太郎はどちらから読んで頂いても大丈夫です。 朝陽-1→琥太郎-1→朝陽-2 朝陽-1→2→3 など、お好きに読んでください。 おすすめは相互に読む方です

番、募集中。

Q.➽
BL
番、募集します。誠実な方希望。 以前、ある事件をきっかけに、番を前提として交際していた幼馴染みに去られた緋夜。 別れて1年、疎遠になっていたその幼馴染みが他の人間と番を結んだとSNSで知った。 緋夜はその夜からとある掲示板で度々募集をかけるようになった。 番の‪α‬を募集する、と。 しかし、その募集でも緋夜への反応は人それぞれ。 リアルでの出会いには期待できないけれど、SNSで遣り取りして人となりを知ってからなら、という微かな期待は裏切られ続ける。 何処かに、こんな俺(傷物)でも良いと言ってくれる‪α‬はいないだろうか。 選んでくれたなら、俺の全てを懸けて愛するのに。 愛に飢えたΩを救いあげるのは、誰か。 ※ 確認不足でR15になってたのでそのままソフト表現で進めますが、R18癖が顔を出したら申し訳ございませんm(_ _)m

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

処女壊体-the making of a saint-

柘榴
ホラー
 外見も内面も醜い男……『高城 亮』という男がいた。彼の人生には光は無かった。特に女性には虐げられ、罵られ続けた人生の中で、彼の望む女性像は歪み、更に狂っていった。  そんな中、高城は『吹山 茜』という名の才色兼備の『聖処女』と出逢った。今までの人生の中で味わった事の無い興奮と熱狂の中、その歪み狂った思想によりある決断をする。 『僕は、美しい彼女の存在を永久に保全しなければならない。その責任が僕にある。そのためには、彼女にどのような施しをする必要があるのか、考えた。大学で医学を齧った末に僕はある結論に辿り着いた。彼女の美しさを永久に保全するためには、この醜く脆い生身の肉体のままでは不可能であると。僕を否定するその四肢も、汚らしく赤黒い臓物も、濁った血肉も彼女には必要ない。僕は彼女という存在を永久に保全するため、彼女を【生き人形】に仕上げた』  今の茜は不完全である。その現状……茜の肉体と心を全て破壊し、新たに完全なる茜を造り出す。

神送りの夜

千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。 父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。 町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

処理中です...