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第五十五夜 仏間のお坊さん
しおりを挟む南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、
「お母さん、おばあちゃん一時間くらいお経さん唱えてるよ。ぼけたの?」
「呆けてないよ。お年寄りは信心深いの。ああやって、毎日ご先祖さまを供養してるのよ。」
「そうなの?じゃあ拓君もやった方が良い?」
「駄目だよ、お父さんに叱られるから。お父さん、南無阿弥陀仏の宗教じやないんだって。」
「じゃあ、拓君はお化けが出た時は何を唱えて、やっつければいいの?」
「‥その時はしょうがないから、拓君がその時覚えてる言葉を言えば良いよ。」
「じゃあ、その時だけ南無阿弥陀仏するね。」
僕の家にはおばあちゃんとお父さんとお母さんと僕がいる。
おばあちゃんは毎日一時間以上は仏壇にいる。だけど、お父さんはそれが嫌だと言っていた。お父さんは無宗教者だから、宗教が嫌いだと言っていた。あと、仏壇が家にあるのも嫌いなんだそうだ。
お父さんは、南無阿弥陀仏の事でおばあちゃんとよく喧嘩をしていた。
だから、おばあちゃんはしばらく南無阿弥陀仏をやめてたのに、最近またやり始めていた。どうしても長年の習慣でやめられないのだそうだ。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、
チーン、チン、チン、
南無阿弥陀仏‥
「あっ、終わったね。お父さんが仕事から帰ってくる前で良かったぁ。」
僕はおばあちゃんのいる仏間に向かった。
ガラガラ、
「おばあちゃん、終わった?あっ、こんにちは。」
おばあちゃんの真横にお坊さんがいた。かがみ込んで、おばあちゃんの顔をじっと見つめていた。僕が見てる前ですっと消えてしまったが‥‥。
「拓也、ここに誰かいるのか?」
「うん、お坊さんがいた。おばあちゃんの顔をじっと見つめてたよ。」
「お坊さんかぁ、知らんなぁ。気配も感じんかった。まだいるのか?もう帰ってしまったか?」
「あのね、お化けだったみたい。拓君の目の前でさっき消えた。」
「‥幽霊か、お坊さんの?」
「うん。」
「おばあちゃん、目が見えないから分からんかったなぁ。
アハハ、何か言ってくれれば気付いたのに。」
「‥ふうん。」
僕はおばあちゃんの部屋を出て、居間に行った。
「拓也、仏間に行ってたの?」
「うん。」
「おやつ、昨日の残りで良い?」
「‥‥ねぇ、お母さん。僕ね、お化けが出ても南無阿弥陀仏は唱えない事にした。南無阿弥陀仏してるおばあちゃんの真横にお坊さんの幽霊がいたんだよ。」
「えっ幽霊みたの、昼間だよ。見間違いじゃないの?」
「昼間でも幽霊いたんだよ。おばあちゃんなんかさぁ、思いっきり真横で幽霊に見られてるのに、目が悪いから気が付かなかったんだって。」
「‥うちに幽霊出るのか、嫌だな。」
お母さんは、僕の見た幽霊の話にびびっていた。僕はお父さんにも幽霊の話をしたくて、お父さんの帰りを待っていた。
ガラガラ、
「ただいま。拓也~、お父さんだよ~。」
僕はお父さんが仕事から帰ってきたから、玄関でお父さんにら抱きついて、さっきの幽霊の話をした。
「そっか、幽霊かぁ。でもお父さんが帰って来たからもう大丈夫だぞ!」
お父さんは、そう言って僕を安心させようとしてくれた。でも、僕はお父さんが怖がってくれなかったのを少し残念に思ってしまった。
でも、その夜お父さんが仏間の前を通る時に、小声で南無阿弥陀仏を唱えながら通るのを見てしまった。
僕は、お坊さんの幽霊に南無阿弥陀仏は効かないよって声をかけたかったけど、我慢した。僕が見てた事をしったら、お父さんのプライドが傷付くからです。
結局、お化けが出た時に何を唱えれば良いのかは分からずじまいだった。
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