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ピューリッツと過ごす日々
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ミザリーは心地よい眠りから目を覚ますと、自分の隣に見知らぬ男性が横たわっている事に気付いて驚きました。
「‥‥!」
「おはよう、ミザリーさん。」
『ピューリッツの知り合いかしら?』
「‥おはようございます。すみません、勝手にお邪魔して‥。あっ私はミザリーと言います。」
「‥アッハハ、知ってます。ミザリーさんに僕のこの姿を見せるのは初めてでしたね。‥僕はピューリッツですよ。」
「‥!」
「ミザリーさん、僕のこの姿嫌い?」
「‥あっ、えっ?いえ、なんていうか‥中性的で神秘的で綺麗です。嫌いではないです。」
「なら良かった。だってこれが僕の本来の姿だからね。」
ピューリッツはゆっくりと体を起こし、ミザリーの手をとりました。
「そろそろ体が癒えて元に戻ってるはずです。」
そう言って、ミザリーを立ち上がらせました。
ミザリーはこの時自分の体がとても軽くなっていることに驚きました。それにこれまで頭の中を占領していた悩みや煩わしさが一切無くなり、何とも言えぬ幸福感を感じていました。
「‥ここは天国かしら。こうして立っているだけで涙が溢れそうなほどの幸福感を感じてしまうわ。」
「それは良かったです。」
ピューリッツはミザリーの手を掴んだまま、少しずつ歩き出しました。
「‥どこへ向かうんですか?」
「僕達の住居です。さっきミザリーさんをイメージして作っておいたんです。
ここは想像力が反映される世界なので、頭でイメージしただけで家や食べ物を実際に作り出すことができるんですよ。だからとても便利なんです。」
「‥‥これが、そのイメージするだけで出来た家なの?‥凄いわね‥。」
ミザリーは目の前に突然現れた大きな屋敷を見て驚きの声を上げました。
恐る恐る中へ入ると、そこにはまるでミザリーの実家のように居心地の良さそうな空間が広がっていました。
「僕が作った時の家の内装と、少し変わりましたね。さすがミザリーさん、良いセンスです。」
「えっ、これって私の頭の中のイメージが反映されてできた内装なの?」
「そうです。さあ、もっと色んな物を作り出しましょう。」
「‥食べ物も作れるのかしら?」
ミザリーがそう言って頭の中にパンや温かいスープを思い浮かべた途端、テーブルセットとパンとスープが目の前に現れました。
「もうだいぶイメージの操作に慣れてきましたね。」
「‥そうね。フフフ、なんだか楽しくなってきちゃった。」
ミザリーはそう言うと続け様に色々な物を頭の中にイメージして作り出しましてしまいました。
「‥ピューリッツ!楽しいわ。」
「良かったです。あっ、それからもう一つミザリーさんが喜びそうなものがあります。」
「わぁ、何かしら。」
ミザリーはワクワクしながらピューリッツの言葉を待ちました。
「‥実はこの家の扉ですが、頭の中にイメージした場所へ行けるようにしておきました。」
「‥えっ、嘘!まさかそんな事まで‥。」
「できるんです。ファントムの大元‥つまり僕の父がミザリーさんの為に、この扉をプレゼントしてくれました。」
「‥‥嬉しいわ。でも‥私はここ以外のどこへも行くあてなんてないわ。」
「‥誰にも見つからずにご両親に会いに行けるんですよ。」
「‥‥あっ、えっだって‥良いのかしら。」
「良いんです。僕がミザリーさんのご両親に手紙を出しておきましたので、急にミザリーさんがご両親の元を訪れても驚かれる事はないはずです。」
「‥夢みたい!ありがとう、ピューリッツ!」
ミザリーは感極まって思わずピューリッツに抱きついてしまいました。
「‥あっ、私ったら、ごめんなさい。‥何で急にピューリッツに抱きついてしまったのかしら。」
「ミザリーさん、この世界は嘘の付けない世界なんです。つまり理性や建前や常識よりも、本能や本心が優先されて現れる世界なんです。」
「そんな‥。」
ミザリーはニヤニヤしながら近づいてくるピューリッツを警戒して、両手を口に当てました。
「‥なので、ミザリーさんは今嘘が付けません。」
「‥‥。」
「ミザリーさん、僕と結婚してこの世界で一緒に暮らして下さい。良いですか?」
「‥‥ピューリッツ、あなたの事はちっとも嫌いじゃないし、私はここであなたとずっと暮らしていたい!」
ミザリーは口をしっかりと押さえていたはずなのに、何故かその手を振り払い大声でそう叫んでしまいました。
「良かった‥。」
ピューリッツは真っ赤な顔をして恥ずかしがるミザリーを抱きしめると、そっと口づけを交わしました。
「‥!」
「すみません。‥どうしても僕の本能が抑えられなかったもので‥。」
ピューリッツはそう言って悪戯っぽく肩をすくめました。
ミザリーはそんなピューリッツの事を驚いた顔で見つめました。
「‥ピューリッツって元々そんな性格だったの?」
「そうですよ。」
そう言ってピューリッツは再びミザリーに口づけをしました。
「あっ‥もう!」
ミザリーは少し嫌がる素振りを見せてみせましたが、ピューリッツには彼女が満更でもなかった事がバレバレでした。
ピューリッツはクスクス笑いながらミザリーの首筋や肩にもキスをしていきます。
ミザリーは初めて味わう甘い気持ちに戸惑いながらも、自分の本能に従いピューリッツを受け入れました。
それから数日後、ピューリッツは突然二人の結婚式を挙げようと言い出しました。招待客は一人もいない二人だけの式です。
二人で一緒に結婚式で着る衣装をイメージして作り出し、それを身に纏いファントムの大元である大木の下へ立ち、向き合いました。
「‥僕は健やかなる時も病める時も一生ミザリーさんを愛し続けると誓います。」
「‥私も一生ピューリッツを愛し続ける事を誓います。」
二人は互いに永遠の愛を誓い合い、本当の夫婦になったのです。
「‥‥!」
「おはよう、ミザリーさん。」
『ピューリッツの知り合いかしら?』
「‥おはようございます。すみません、勝手にお邪魔して‥。あっ私はミザリーと言います。」
「‥アッハハ、知ってます。ミザリーさんに僕のこの姿を見せるのは初めてでしたね。‥僕はピューリッツですよ。」
「‥!」
「ミザリーさん、僕のこの姿嫌い?」
「‥あっ、えっ?いえ、なんていうか‥中性的で神秘的で綺麗です。嫌いではないです。」
「なら良かった。だってこれが僕の本来の姿だからね。」
ピューリッツはゆっくりと体を起こし、ミザリーの手をとりました。
「そろそろ体が癒えて元に戻ってるはずです。」
そう言って、ミザリーを立ち上がらせました。
ミザリーはこの時自分の体がとても軽くなっていることに驚きました。それにこれまで頭の中を占領していた悩みや煩わしさが一切無くなり、何とも言えぬ幸福感を感じていました。
「‥ここは天国かしら。こうして立っているだけで涙が溢れそうなほどの幸福感を感じてしまうわ。」
「それは良かったです。」
ピューリッツはミザリーの手を掴んだまま、少しずつ歩き出しました。
「‥どこへ向かうんですか?」
「僕達の住居です。さっきミザリーさんをイメージして作っておいたんです。
ここは想像力が反映される世界なので、頭でイメージしただけで家や食べ物を実際に作り出すことができるんですよ。だからとても便利なんです。」
「‥‥これが、そのイメージするだけで出来た家なの?‥凄いわね‥。」
ミザリーは目の前に突然現れた大きな屋敷を見て驚きの声を上げました。
恐る恐る中へ入ると、そこにはまるでミザリーの実家のように居心地の良さそうな空間が広がっていました。
「僕が作った時の家の内装と、少し変わりましたね。さすがミザリーさん、良いセンスです。」
「えっ、これって私の頭の中のイメージが反映されてできた内装なの?」
「そうです。さあ、もっと色んな物を作り出しましょう。」
「‥食べ物も作れるのかしら?」
ミザリーがそう言って頭の中にパンや温かいスープを思い浮かべた途端、テーブルセットとパンとスープが目の前に現れました。
「もうだいぶイメージの操作に慣れてきましたね。」
「‥そうね。フフフ、なんだか楽しくなってきちゃった。」
ミザリーはそう言うと続け様に色々な物を頭の中にイメージして作り出しましてしまいました。
「‥ピューリッツ!楽しいわ。」
「良かったです。あっ、それからもう一つミザリーさんが喜びそうなものがあります。」
「わぁ、何かしら。」
ミザリーはワクワクしながらピューリッツの言葉を待ちました。
「‥実はこの家の扉ですが、頭の中にイメージした場所へ行けるようにしておきました。」
「‥えっ、嘘!まさかそんな事まで‥。」
「できるんです。ファントムの大元‥つまり僕の父がミザリーさんの為に、この扉をプレゼントしてくれました。」
「‥‥嬉しいわ。でも‥私はここ以外のどこへも行くあてなんてないわ。」
「‥誰にも見つからずにご両親に会いに行けるんですよ。」
「‥‥あっ、えっだって‥良いのかしら。」
「良いんです。僕がミザリーさんのご両親に手紙を出しておきましたので、急にミザリーさんがご両親の元を訪れても驚かれる事はないはずです。」
「‥夢みたい!ありがとう、ピューリッツ!」
ミザリーは感極まって思わずピューリッツに抱きついてしまいました。
「‥あっ、私ったら、ごめんなさい。‥何で急にピューリッツに抱きついてしまったのかしら。」
「ミザリーさん、この世界は嘘の付けない世界なんです。つまり理性や建前や常識よりも、本能や本心が優先されて現れる世界なんです。」
「そんな‥。」
ミザリーはニヤニヤしながら近づいてくるピューリッツを警戒して、両手を口に当てました。
「‥なので、ミザリーさんは今嘘が付けません。」
「‥‥。」
「ミザリーさん、僕と結婚してこの世界で一緒に暮らして下さい。良いですか?」
「‥‥ピューリッツ、あなたの事はちっとも嫌いじゃないし、私はここであなたとずっと暮らしていたい!」
ミザリーは口をしっかりと押さえていたはずなのに、何故かその手を振り払い大声でそう叫んでしまいました。
「良かった‥。」
ピューリッツは真っ赤な顔をして恥ずかしがるミザリーを抱きしめると、そっと口づけを交わしました。
「‥!」
「すみません。‥どうしても僕の本能が抑えられなかったもので‥。」
ピューリッツはそう言って悪戯っぽく肩をすくめました。
ミザリーはそんなピューリッツの事を驚いた顔で見つめました。
「‥ピューリッツって元々そんな性格だったの?」
「そうですよ。」
そう言ってピューリッツは再びミザリーに口づけをしました。
「あっ‥もう!」
ミザリーは少し嫌がる素振りを見せてみせましたが、ピューリッツには彼女が満更でもなかった事がバレバレでした。
ピューリッツはクスクス笑いながらミザリーの首筋や肩にもキスをしていきます。
ミザリーは初めて味わう甘い気持ちに戸惑いながらも、自分の本能に従いピューリッツを受け入れました。
それから数日後、ピューリッツは突然二人の結婚式を挙げようと言い出しました。招待客は一人もいない二人だけの式です。
二人で一緒に結婚式で着る衣装をイメージして作り出し、それを身に纏いファントムの大元である大木の下へ立ち、向き合いました。
「‥僕は健やかなる時も病める時も一生ミザリーさんを愛し続けると誓います。」
「‥私も一生ピューリッツを愛し続ける事を誓います。」
二人は互いに永遠の愛を誓い合い、本当の夫婦になったのです。
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