親切なミザリー

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助けに来たサボン令嬢

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旅行を終えたアリスは、それ以降学園に来ることはありませんでした。

そんなアリスの代わりに生徒会メンバーとして指名されたのは、サボン令嬢でした。

サボン令嬢は、その高圧的な態度とは裏腹に、誰よりも真面目に雑用や仕事に取り組んでいました。

それにサボン令嬢は、王家からきたアポロ王子との婚約の申し込みを受けて、正式にアポロ王子の婚約者となったのです。

「アポロ王子!」

「なっ、なんだよ‥。」

「‥アリスさんはどこにいますの?」

「‥‥。」

「アポロ王子?あなた最近勉強も生徒会の仕事も疎かにして、お部屋でアリスさんをおもちゃにして楽しんでるようじゃないの。」

「‥‥さあな、アリスがどこにいるかなんて知らないな。」

「‥!」

生徒会室でサボンと共に書類の整理をしていたサリエルは、アポロ王子とサボン令嬢のやり取りをききながら、ドキドキしていました。

『アリスさんがアポロ王子の部屋でおもちゃにされてるだって!?‥なんて破廉恥な!二人はまだ学生で、しかも婚約者でもないのにそんな深い仲になっていたのか?』

顔を真っ赤にして、手にした書類を落とし動揺をみせるサリエルに、サボン令嬢は言いました。

「フフフ。サリエル、あなたの想像とはちょっと違う事態になってるのよ。‥あなたも私やダクトと一緒にアポロ王子の部屋に乗り込んでみる?」

「‥‥えっ、あの、‥。」

「サボン、やめろ!俺の部屋に入るな!お前は昔からなんで俺の邪魔ばかり‥。」

アポロ王子が頭を掻きむしりながら苛々した様子を見せていましたが、サボン令嬢はダクトとサリエルを連れて学校を出て、アポロ王子の部屋を目指しました。

アポロ王子はというと、サボン令嬢には逆らえないのか、三人を追ってくる様子もなく、何もかもを諦めたかのようにソファーに座り項垂れていました。
 
「サボンさん、男の俺達が行ってはまずいんじゃないですか?その‥見られてはいけない姿をしてるかもしれないじゃないですか。やっぱり‥行くのはやめておきます。」

途中で、サリエルはそう言って生徒会室へ戻ろうとしましたが、サボン令嬢はそれを制して強引にアポロ王子の部屋までサリエルとダクトを引っ張って連れて行きました。

そしてサボン令嬢がアポロ王子の部屋の扉を開けると、アポロ王子の部屋の片隅に、鎖で繋がれたアリスが檻に入れられているのが見えました。

檻の中のアリスは、旅行先で着ていたドレスのままずっと檻の中に閉じ込められていたのか、本人もドレスもかなり薄汚れていました。

「‥‥サボン令嬢!それにダクト様とサリエル様も‥。もしかして、私を助けに来てくれたの!‥ねぇ、早くして!アポロ王子が来る前に早くここから私を出してーっ!!」

檻の中でアリスは、サボン令嬢達を見て一瞬満面の笑みを浮かべましたが、すぐに鬼気迫る表情に戻り、そう叫びました。

「‥アリスさん、あなたをここから出してあげるわ。」

サボン令嬢はそう言うと、何故か合鍵を持っていて、その鍵で檻を開けてアリスを檻と鎖から解放しました。

「‥サボンさん!ありがとう!‥ねぇ、私を救うようにミザリーから頼まれたの?ねぇ、ミザリーと何を話したの?教えて。‥ねぇ、ミザリーは隣国の王子様やネックレスの話はしてなかった‥?ねぇ‥。」

「無礼者!触るな!馴れ馴れしく私を呼ぶな!‥それにミザリーと何を話したかですって?‥そんな事をお前に教える義理なんかないわ!

それに‥お前を含めて生前のミザリーを虐めた奴らには罰を与えるから、覚悟してなさい!」

「えっ、えっ?だってサボンさん‥じゃなくて、サボン様が先にミザリーを虐めてたじゃないですか。‥なのに‥。」

アリスは納得いかないのか、思わずサボン令嬢につっかかってしまいました。

「うるさい!ミザリーを虐めていいのは私だけよ!‥お前達雑魚が私のミザリー虐めに便乗して、理由なくミザリーを虐めるのは許されるべきでないわ!‥だからあんたも、せいぜい覚悟してなさい。」

「‥いいもん、ミザリーの幽霊に頼むもん!ミザリーは、きっと私を助けてくれるわ。」

アリスはそういうと、サボン令嬢の前で、プンと頬を膨らませて怒りながらそう言うと、さっさとアポロ王子の部屋から出て逃げて行きました。

そんなサボン令嬢とアリスのやりとりを呆気に取られてみていたのは、ダクトとサリエルでした。

「サボン令嬢、ミザリーの幽霊とは、なんの話ですか?」

「サボン令嬢、ミザリーは‥あなた以外の生徒達からも虐められていたのですか?やはり、ミザリーが皆んなに嫌がらせをしていたというのは‥‥ただの根も葉もない噂だったのですね!ミザリーは‥皆んなに嫌がらせをするどころか虐められてたんですね!」

サボンは、訳が分からないといった感じで戸惑いを見せるダクトとサリエルに向かって言いました。

「‥あんた達もミザリー殺しの犯人として、私からすでに王様には密告しておいたから。‥覚悟しておきなさい。」

「‥なっ、ミザリーは自殺だ!何を根拠に!」

興奮した様子のダクトがそう言い返すと、サボン令嬢は冷静に言いました。

「‥ミザリーの幽霊が出てきて私に教えてくれましたの。」

サボン令嬢はそう言うと、ダクトとサリエルを部屋に残してさっさと出て行ってしまいました。

「‥はっ!何が幽霊だ。アリスもサボンも全くもって、アポロにふさわしくない。どいつもこいつも‥。」

「‥ダクト!それよりも、俺達どうやらここに閉じ込められたようだぞ!扉があかないんだ!」

この場にいないアリスやサボン令嬢に対して悪態をついていたダクトでしたが、扉をガチガチャしながらそう叫ぶサリエルを見て、動揺しました。

「なんだと!かしてみろ、‥本当に開かないじゃないか。おい、開けろっ!おい!」
  
こうしてサボン令嬢の罠に嵌ったダクトとサリエルは、王の取り調べを受けるまでの間ずっとアポロ王子の部屋に閉じ込められる事になったのでした。
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