親切なミザリー

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アリスの立てていた計画とは‥

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ファンタス子爵家令嬢のアリスは、突然のミザリーの死に激しく動揺していました。

「なんで死ぬのよ‥。あの日にミザリーを断罪して国外追放しておかなきゃミザリーが隣国へ行かないじゃない。‥ミザリーの更なる罪を断罪させる為という口実がなくなって、私と王子が隣国へ行けなくなってしまうじゃない‥。

それに攻略対象の男達全員の好感度を高くしておかないと、アポロ王子の好感度が段々と下がってしまって、王子が隣国へ行く際に同行する事すら出来なくなってしまうというのに‥。

それにしてもストーンの奴、何故急に私を裏切ったのかしら。‥あいつには相当サービスしてやったというのに!

‥ああ、私の本命‥隣国の王子ゼウス様には一体どうやって見染められればいいと言うの!?」

アリスは一人王宮の一室で悩んでいました。

アリスはミザリーの断罪を予定していた日からずっとアポロ王子が王宮に用意した自分の部屋での無期限の滞在を許されていたのです。

‥あの日ミザリーがきちんと王子達に断罪されていたら‥王様や他のミザリーを慕う人達の邪魔を避けてこっそりとミザリーを隣国へ追いやれていたら、全ては計画通りに進んでいき、アリスがこんなにも悩む事はなかったはずなのです。

「ああ、ミザリーめ!私の計画を何もかも邪魔してきて!嫌な奴!‥まったく死んでからも私の邪魔をするんだから!」


そう言って、アリスは枕をぼこぼこに殴って鬱憤を晴らしていました。


そしてそんなアリスの様子を廊下から覗き見る者がいました。アポロ王子の弟、イカロスでした。

イカロスは廊下まで漏れ聞こえてきたアリスの声を不審に思い、扉の外に控えていた護衛にことわりをいれて、アリスの部屋の扉を少し開けて中の様子を伺っていたのでした。

「‥アリスの計画‥‥?」

イカロスは、アリスの独り言を一言も聞き漏らさないように耳に神経を集中しました。


アリスの計画‥‥それは、アリスが前世でプレイしていた乙女ゲームの「アリスの恋愛大作戦!モテすぎて困っちゃう♡」ゲームの隠しクエスト「隣国の王子ゼウス様」の攻略計画の事です。


前世、交通事故で亡くなる直前まで、アリスの前世の姿‥つまりOL矢吹純子は、推しの為にその乙女ゲームに課金しまくって日に何時間もプレイしていたのです。

アリスは前世で矢吹純子として亡くなってから、このゲームの世界のヒロインのアリスに自分が転生していた事が分かった時には信じられなくて動揺しました。

ですが精神的に落ち着いてから、鏡に映った可愛らしい容姿の自分を見た途端歓喜しました。

この容姿ならこのゲームの世界で、前世果たせなかった野望を叶えられそうだと確信したのです。


「‥OL時代には給与の大半をゲームに費やしたわ。なのに最後まで隠れクエストのゼウス様ルートが解放されなかったのよね。試せる選択肢はほとんど試したのに。

先にゼウス様を攻略してた親友の紗栄子が、王様夫妻の留守中に、王子達とミザリーをこっそり断罪して隣国へ逃げるように仕向けるようにしたら隠れクエストが解放されたって言ってたから真似しようと思ったのに‥。

ゲームの筋書き通りなら、ミザリーが着の身着のまま隣国へ逃亡して飢えと寒さから隣国で窃盗という新たな罪を犯していたはず。

そうしたら、ミザリーが国内で犯していた別の罪状を持って、ミザリーの両国における数々の罪を裁く為に王子様と私が隣国へ行く予定だったんだのに‥もうっ!

そこで、やっと隣国の王子ゼウス様に私が見染められるはずだったのに~!!

本当に何度思い返しても腹が立つわ!

‥はぁ、どうしよう。ミザリーが死んだ今、いったいどうすればゼウス様と出会えるのかしら。」


アリスはぼこぼこになぐってボロボロにした枕を抱いて、悶々としていました。


アリスにとってこの世界での生きる目的は隣国の王子ゼウス様の攻略だけでした。

アリスがミザリーの婚約者アポロ王子や他の男達に近づいたのもその為でした。

前世で日本人だったアリスにとって、この国のアポロ王子をはじめとする男どもの容姿‥‥長い金髪の巻毛、色白、彫りの深すぎる顔立ち、痩せ型の姿は自分の好みの異性の姿ではなかったのです。
 

そんな中唯一この国で気に入ったのは、ストーンだけでした。

こげ茶の短髪に筋肉質で少し日焼けした肌、それに少し俺様タイプで頼りになるところも気に入っていました。

ですが、ストーンの欲求を受け入れて一度体を許してしまってからはストーンはやたらとアリスを独占しようとしてきたのです。

「本命のゼウス様に会うまでは、アリスは皆んなのアリスでなくてはならないのに!‥ストーンってば図々しいのよ!

体まで許したというのに、あれ以来私に構ってこないのも腹立つわ!

‥でも絶対に私からはストーンに話しかけてやらないんだから!そんな事したら益々ストーンがつけあがるもの。

‥はぁ、なかなか思い通りには行かないわね。イラつくわ‥。」


アリスはそう言って、ベッドの上でしばらくジタバタしていましたが、いつの間にかイビキをかいて眠ってしまいました。


そんなアリスの様子を伺い見て、イカロスは呆れた笑いを浮かべました。

「アリスか。‥思ったよりも品性の無い、イカれた令嬢だな。‥これまで交流を避けてきて正解だったな。‥それにしても、訳の分からない事をずっと喋っていたが、どういう意味なんだ?」


イカロスはそう呟くと、色々と思案しながら自室へと戻って行きました。
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