12 / 33
12、旦那様の心の変化
しおりを挟むテオは外で馬車の音がするのに気付き、窓から覗いてみました。
馬車からリリアが降りて来ました。
リリアは、この半年ほどの間にとても女性らしく成長していました。胸も膨らんできたし、腰からお尻へのラインもとても色っぽく見えました。
先日リリアがテオの職場にやってきた時も、他の隊員達に、美しい妻だと散々羨ましがられました。
「‥あいつらが騒ぐのも無理はないな。悔しいがリリアは確かに綺麗だ。‥今リリアは段々と女性の体になっていく過渡期にあるのだな‥これからもっと女性らしくなっていくのか‥。」
テオはそのまま窓からリリアを、盗み見し続けました。
リリアは何だか機嫌が良さそうでした。玄関まで迎えに来た執事に笑顔で話しかけていました。
「‥あんな風に笑う事もあるのだな‥。」
テオはリリアが笑っている様子を見て驚きました。
テオは、テオの知らないリリアを沢山知ったせいでしょうか‥、リリアを憎む気持ちが薄れている事に気付きました。
しばらくすると、テオの部屋の扉がノックされました。
リリアが約束通りテオの部屋を訪れたのです。
テオはリリアに向き合い、素直な気持ちで先日の事を詫びました。
「‥リリア、先日は僕の両親が来てる中、一人ぼっちにさせて悪かった。」
「‥‥!」
リリアはてっきりまた叱られると思っていたのでしょう。テオがいきなり謝ってきた事に驚きを隠せない様でした。
鳩が豆鉄砲をくらったような、間抜けな顔をして驚くリリアを見て、テオは思わず笑ってしまいました。
リリアは、相変わらず首を傾げてテオを不思議そうに見ています。
‥リリア、案外可愛い奴だったんだな。
この時、テオはリリアとようやく向き合おうと思い始めたのでした。
ところが、リリアはテオのそんな思いなど露知らず、愛想笑いを浮かべながらテオと会話を交わすのでした。
実はリリアはリリアで、テオの顔を見ながら、テオの話とは全く関係ない事を考えていたのです。
テオとの離婚が円満に進むように、両家の親達が私の味方になった事を、妖精王に報告に行った時の事を思い出していたのです。
『‥妖精王、今日も私の事を可愛いって褒めてくれていたわ。それに私の話を一生懸命に聞いてくれたし、本当に優しくて素敵な方だわ。
おまけに、森の平和を守っていて、妖精達にもとても好かれてるわ。‥うちの旦那様とは大違いね。
‥そう言えば妖精王が、「三年間の期限付きの結婚の最中に、万が一旦那様と私が両思いになっていたらどうするつもりだった?」って聞いてきたけど‥。
確かに最初は、もし三年の内に旦那様がベラ様の事をすっぱり諦めて、私を本気で愛してくれるようになったら‥‥離縁以外の選択肢もあったかも‥‥なんてちらっと思った事もあったけど‥‥。うん、ないわ。今は旦那様との離縁以外の選択肢を選ぶ事は絶対ないわ。』
なんて事をリリアは心の中で思っていました。
テオはリリアを部屋に戻すと、自分も久しぶりに早めに就寝しました。
翌朝テオは、これまでになかったほどスッキリと目覚める事ができたのでした。
こうして、テオは徐々にベラの家へ泊まる回数を減らし、自宅で過ごすようになったのです。
公爵邸に束の間の平和が訪れました。
2
お気に入りに追加
2,748
あなたにおすすめの小説
初夜寸前で「君を愛するつもりはない」と言われました。つもりってなんですか?
迦陵 れん
恋愛
侯爵家跡取りのクロディーヌと、公爵家三男のアストルは政略結婚といえども、幸せな結婚をした。
婚約者時代から日々お互いを想い合い、記念日にはプレゼントを交換し合って──。
なのに、記念すべき結婚初夜で、晴れて夫となったアストルが口にしたのは「君を愛するつもりはない」という言葉。
何故? どうして? クロディーヌは混乱に陥るも、アストルの真意は掴めない。
一方で、巷の恋愛小説ばりの言葉を放ったアストルも、悶々とした気持ちを抱えていて──。
政略で結ばれた婚約でありながら奇跡的に両想いとなった二人が、幸せの絶頂である筈の結婚を機に仲違い。
周囲に翻弄されつつ、徐々に信頼を取り戻していくお話です。
元鞘が嫌いな方はごめんなさい。いろんなパターンで思い付くままに書いてます。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる