気になる人

みるみる

文字の大きさ
上 下
25 / 31

皇太子夫婦からの招待状

しおりを挟む
 ユアンが生まれて半年程経った頃、私達夫婦宛に皇太子から招待状が届きました。

「ああ、ディランのお披露目会が行われるようだ。」

「……。」

 ユアンを抱っこしたまま無反応でいる私を夫がそっと抱き寄せます。

「辛いだろうが…二人でディランの晴れ姿を見守ってやろう。」

 夫のその言葉を聞いて、私の頬に涙が伝い落ちました。

 夫は指でそれをそっと拭うと…両手でさらに強い力で私を抱きしめました。

 私の心は本当に壊れてしまったのでしょうか。夫に抱きしめられながら何かを話しかけられても、何も心に響いてはこないのです。

 目の前の景色、自分の事を抱きしめる夫、それに…

 今抱っこしているユアンのことですら現実味を感じられないのです。

 ぼーっとしたまま遠くを見つめる私の事を、夫は悲しそうな表情で見つめてきます。

 時間がどれほど過ぎたのでしょうか、窓の外の景色が昼間の明るい景色から暗いシルエットだけの景色に変わり始めていました。

 夫も業務に戻っており、そばには誰もいませんでした。
  
 ユアンだけが自分の腕の中に抱かれて眠っています。

「ディラン…。」

 誰もいない部屋の中、小さな声でそっとその名を呼んでみました。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

それは絶対にお断りしますわ

ミカン♬
恋愛
リリアベルとカインは結婚して3年、子どもを授からないのが悩みの種だったが、お互いに愛し合い仲良く暮らしていた。3年間義父母も孫の事は全く気にしていない様子でリリアベルは幸福だった。 しかしある日両親は夫のカインに愛人を持たせると言い出した。 不妊や子供に関する繊細な部分があります。申し訳ありませんが、苦手な方はブラウザーバックをお願いします。 世界観はフワッとしています。お許しください。 他サイトにも投稿。

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから

キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。 「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。 何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。 一話完結の読み切りです。 ご都合主義というか中身はありません。 軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。 誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...