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結婚式 後編

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私は慎重に足を一歩一歩進めて、教会の扉まで歩く。そうでないと、この重量級ウェディングドレスを引きずって歩くことなど不可能だった。一歩一歩前のめりになりながら進んでいく。あれ?ウェディングドレスってこんなんだったっけ?

扉が開いて、天井の高い荘厳な雰囲気の豪華な装飾が目に入る。周囲には着飾った招待客たちが一斉に私の方を見ていいた。床に敷き詰められている赤い長いカーペットの先に、デューク王がいるのが見えた。

何だか私を見て含み笑いをしている。私は一瞬で察した。これはデューク王の嫌がらせだと!こんな重いウェディングドレスが普通の訳がなかった。

苛立ちを隠しながら、必死でデューク王の傍までたどり着こうとする。周囲の出席者たちも奇妙な顔で見守っている。それもそうだろう、花嫁が両手にブーケを持ちながら前のめりで必死の形相で歩いているのだ。ドレスの裾がその度にずーーーーずーーーと引きずる音を立てる。

静寂に包まれた教会に、裾を引きずる音だけが大きく響いていた。

ずーーーーーずーーーーーー。

私はもう限界に来ていた。これ以上歩くと上半身と腰から下が離れてしまいそうなくらい極限状態だった。

「うぉぉぉぉぉ!!デューク王!苦しめ!!」

そこに突然、躍り出た一人の男がいた。手にナイフを持っている。ナイフは見事私の腰に刺さった。

私はすぐさま彼の手を取り、ナイフを奪ってからお礼を言った。助かった。

「ありがとう!私がもう限界なのを見かねてくださったんですね。少しの間このナイフ借りてもいいですか?もうちょっと切っておきたいので。あ、心配しないでください。どうせ飾りなので取ってしまっても下着姿にはなりませんから・・・」

そういって爽やかに笑った。私が重量級のドレスの裾を切り取って手を離すと、ゴンッ!!という固い音がしてドレスの裾が床に落ちた。

あんのぉ、ドS王めぇぇぇぇ!!!私はナイフを片手に持ったまま、史上最も凶悪な顔をしてデューク王を見た。すると何を誤解したのかその男は悲鳴を上げて逃げ出していった。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あ・・・でも、このナイフあなたのじゃ・・・」

私が引き留めるのも聞かずに、彼は脱兎のごとく教会を去っていった。その場に残された私はナイフを片手に佇んでいた。何やら誤魔化すかのように楽団が音楽を奏で始める。おそらくかなりできる有能な侍従が、私に目配せをした。

それから何事もなかったふりをして、式は進んでいった。私は軽くなった体でスキップを踏みながらデューク王の傍らにしおらしくたった。よしノーという準備は万端だ。デューク王が私の手を取ると、それが合図だったのか神父が厳かに語り始めた。

いくつかの文言を繰り返した後、最後の質問にはいる。

「汝、幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで愛し、慈しみ、貞操を守ることをここに誓いますか?」

デューク王が、満足げな笑みを浮かべ答える。

「誓います」

次は花嫁の番だ・・。

「汝、幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで愛さず、慈しまず、貞操を守らないことをここに誓いますか?」

「いいえ、誓いません」

私はドヤ顔で言い切った。デューク王をしてやったりの表情で見返す。だが何かがおかしい。結婚式は中止になるはずなのに、神父様は未だに決められた文言を続けている。

「ではここに神の名において、デューク・デン・ボッシュ王とユリカ・セリザワが夫婦になったことを認めます」

「い・・・意義ありぃ!!!」

思わず私は片手をあげて神父様に詰め寄った。招待客が目をまん丸に見開いて驚いている。花嫁が突然、法廷ばりに手を上げて意義を唱えたのだ。

だってわたし誓わないって言ったよね!!どうなっているの???

「ユリカお前、誓いませんっていう事だけに集中していて、神父のいう事を聞いてなかったんだろう?」

デュークが最高に面白いといった顔で笑いをかみ殺しながら私を見て話す。

え?え・・?

さっき確か・・・汝、幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで愛さず、慈しまず、貞操を守らないことをここに誓いますか・・・・・?

ぎゃぁぁぁぁぁ!!駄目だぁ!結婚認めちゃってるわ・・!!

私は精神が宇宙までぶっ飛んでいくのを感じながら、デューク王の誓いのキスを受けていた。唇に柔らかい感触があるが、もうそんなことはどうでも良かった。茫然としたまま誓いのキスを終え、茫然としたままデューク王と招待客の歓声の嵐の中を歩く。

そこに突然とんでもない珍客が現れた!!

ガッシャアァァァァァーーーーーン!!!

大きなステンドグラスが割れて床に散らばる。太陽の光がガラスの欠片に反射してキラキラ光っている。レオールとシューリ、ドイールが咄嗟に私の傍に集まった。

な・・・何ごと?!!!

そこに現れたのは、白いたてがみを持つ金の瞳をした3メートルはあろうかと思われるライオンだった!!

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