上 下
33 / 43

2大ドS会談

しおりを挟む
「お前、私の王妃に何のようなんだ?」

デューク王が両腕を胸の前で組んで、健司の前に立ってのけぞりながら言う。デューク王は185センチの長身だから私はかなり見上げないといけないのだけど、健司のほうは182センチあるので、あまりのけぞり効果は期待できそうにない。

「結婚式は5日後でしょう。まだ婚約者の筈ですが?」

健司がデューク王の威嚇に負けず、ひょうひょうと答えると、デューク王がまたまた負けじと言い返す。

「私の推定未来の王妃だよ。後5日で、嫌なのに自らねだって私の物になる予定のユリカだ。嫁姑問題も順調で、あまりに私の母上と仲睦まじくて私が嫉妬してしまいそうだよ。ははは・・ところで君は誰なんだね?」

あんたさっき ケンジ・レンジョウ って自分で言ってたじゃないよ!!すると健司が自己紹介をしていないのにやっと気が付いたような顔をして軽く礼をしながらいう。

「ああ、挨拶が遅れましたね。初めまして、ケンジ・レンジョウ、ブレダ独裁王国の国王です。百合香の初めての男で、元彼でもあります」

ちょっとなんて紹介の仕方するのよ!!しかも何気に自分で独裁国家だって認めたね。さすが地球代表のドS野郎・・・。するとデューク王が蔑むような目つきをして言った。

「お前がブレダ王国を政略した話は聞き及んでいる。どうだ私の力のおこぼれで王になれた気分は・・・」

再び健司がしれっとした顔で言い返す。

「そうですね。どこかの国の王様がブレダ王国の反対勢力にかなりの武器と情報を流してくれていて助かりました」

どこかの国としか言わなかったけれど、私にはどこの国か分かった。うん。そんなことする王様ってねぇ。しかも元婚約者の国なのに・・・いや元ブレダ王国産の肉塊・・むにゃむにゃ

「その上、兵士の使う井戸水に進行が遅い毒が混入されていましてね。体調を崩している兵が続出していましたので、井戸水を浄化してから万病に効く薬だといって適当に小麦粉の粉を与えておいたら、兵士にかなり崇拝されましてね。それからは赤子の手をひねるように簡単に王位を頂戴しました」

「そうか。それは運がよかったな」

デューク王は未だに蔑んだような笑顔を貼り付けながら言った。健司が続ける。

「そういえば王女のエリョリーナでしたか?彼女がデューク王のことを猟奇殺人鬼だといっていましたが本当なんでしょうか?」

「失礼だな・・・私は殺人は趣味じゃない。あっさり殺してしまうと面白くないじゃないか。大体1ヶ月は苦痛に苦しんで死んでもらうのが理想なんだが、なかなかうまくいかなくて結局生きながらえてしまうんだ。この微妙なさじ加減が難しいね」

「そうですね。私もブレダ国王以下を船に乗せて荒海に流す刑にしたのですが、隣国のデルミア農国に流れ着いたようで、そこで王女と麦を作っているらしいです」

そう健司が言った後、二人は互いに目を逸らさないまま大声で笑い始めた。

「「はははははは!!!」」

怖い・・・怖すぎるドS同士の会話・・・。その後デューク王が私の肩を抱き寄せて言った。

「ところでユリカはお前の元彼女というではないか、やはり顔が気持ち悪くて性格が気分が悪いといわれて振られたのか?」

健司も負けじと私の右手を取り、自分の両手ではさみながら言い返す。

「そうですね。振られた気ではありませんでしたよ。一人で遊んでいるように思わせておいて、実は僕に手のひらの中で転がされて遊ばれていたのに気がついていない・・・という感じで泳がせていましたからね。あと少しで僕の嫁にしようとしたところに異世界に召還されて、いま腹黒ドS王の嫁にされそうになっています」

健司が私の手の甲にキスをしながら言う。それを見てデューク王が私の体をぐいっと両腕で引き寄せて、後ろから抱きつく形になるようにしてそれを阻止する。

「それは気の毒だね。残念だがユリカはもう私のものだ。歯のおうとつの具合もこの間31本分覚えたところだ。この間なんか、デュークずっと好きなの。抱いて欲しい。といってねだってきたよ。可愛い女だね全く」

ひいーーーー。それは私の闇歴史なの!!忘れてくださいーーー!しかも私の台詞のところだけどうして裏声なの?!!その上、どうして親知らず1本抜いている事まで分かったの!!

健司も負けじと私の右腕を持って自分のほうに引き寄せる。もうデューク王と健司の距離のほうが恋人同士の距離になっている。私はそれに挟まれているだけみたいな。

「へえ、でも僕はもう4年間も百合香と恋人同士だったからね。寝技は34通り試してあるし、百合香から押し倒された事は4年間で5回もあった」

いやーーーっ!!この会話。私の居場所無さ過ぎる!!そういえばこの二人超似たもの同士なんだよね。もしかしたらものすごく気が合うんじゃないの!!

私は二人が会話に夢中なうちに、こっそりこの羞恥プレイから逃れようとしたところを二人に、それぞれに腕を引っ張られながら質問された。

「「ユリカ!お前はこいつと僕と、どっちを選ぶんだ??!!」」

私は迷わず即決して即答した。ここはもちろん、これでしょ!!!

「私はベン・スミス近衛兵を選びます」

鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしている二人を残して、チャンスとばかりに私はその場から逃げ出した。

地球代表ドSと異世界代表ドSの2大会談。なんて心臓に悪いんだ・・・。ふぅ・・・。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

あなたにかざすてのひらを

あさまる
ファンタジー
※最終話2023年4月29日投稿済。 ※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。 苦手な方はご遠慮下さい。 紅花かすみ。 ごく普通な女子高生。 そんな彼女には、幼馴染が二人いた。 いつから一緒にいるのか。 どのようなきっかけで仲良くなったのか。 そんなものは覚えていない。 それでも、かすみは彼女らの幼馴染であった。 雲一つない青空。 真っ黒な日傘と真っ赤な日傘。 今日もかすみは彼女らと登校するのであった。 ※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。 誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。

『ラズーン』第二部

segakiyui
ファンタジー
謎を秘めた美貌の付き人アシャとともに、統合府ラズーンへのユーノの旅は続く。様々な国、様々な生き物に出逢ううち、少しずつ気持ちが開いていくのだが、アシャへの揺れる恋心は行き場をなくしたまま。一方アシャも見る見るユーノに引き寄せられていく自分に戸惑う。

異世界召喚されたら【聖女様】って呼ばれたんですけど、正装がバニーガールなんですけど!!??

綾瀬 りょう
ファンタジー
異世界に召喚されて聖女様って呼ばれるのは別にいいんですけど、正装がバニーガールだなんて、聞いてないよ?!? 主人公 炎谷 美麗(ぬくたに みれい)24歳。大学を卒業して就職した職場で頑張るぞ!!と思っていたらいつの間にか異世界に召喚されていた!!聖女様の正装がバニーガールというのだけ信じられないんですけども!?! ミュゼァ26歳 前聖女の子にて歴代最強の魔法の使い手。第一王子の右腕的役割を果たしている、ところもあるとかないとか。 オズワルド26歳 リュー国の第一王子。聖女が国に縛られることを好んでいないが、魔物や邪気などから国を守れる力を持っているのが選ばれた人だけなので、全力で守ろうと思っている面もある。 遊び人に見えるけど責任感が強い。婚約者がいる。 【小説家になろう・カクヨムにも同等の作品を掲載】

絶対零度女学園

ミカ塚原
ファンタジー
 私立ガドリエル女学園で起こった、謎の女生徒凍結事件。原因不明の事件を発端として、学園を絶対零度の闇が覆い尽くす。時間さえも凍結したかのような極寒の世界を、正体不明の魔がうごめき始めた。ただ一人闇に立ち向かうのは、病に冒され夢を挫かれた少女。この世に火を投じるため、百合香は剣を取って巨大な氷の城に乗り込む。 ◆先に投稿した「メイズラントヤード魔法捜査課」という作品とは異なる方向性の、現代が舞台のローファンタジーです。キービジュアルは作者本人によるものです。小説を書き始めたのは今年(2022年)が初めてなので、稚拙な文章は暖かい目で読んでくださると幸いです。

遺された日記【完】

静月 
ファンタジー
※鬱描写あり 今では昔、巨大な地響きと共に森の中にダンジョンが出現した。 人々はなんの情報もない未知の構造物に何があるのか心を踊らせ次々にダンジョンへと探索に入った。 しかし、ダンジョンの奥地に入った者はほぼ全て二度と返ってくることはなかった。 偶に生き残って帰還を果たす者もいたがその者たちは口を揃えて『ダンジョンは人が行って良いものではない』といったという。 直に人もダンジョンには近づかなくなっていって今に至る

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...