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セイアレス大神官の想い
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私は生まれた時から天賦の才を持っていた。特に神力が膨大にあり、学者や教授らを驚かせた。生家は伯爵家で血筋も財もうなるほどあったが、愛情だけは与えられなかった。愛人に興じる父に、お茶会と夜会にしか興味のない母。
初めて読んだ本の中の聖女に、憧れを抱いたことも自然な流れであったと思う。聖女は私が初めて見る理想の女性だったからだ。私は聖女に理想の母を見、理想の姉を見た。
15になった頃、私は既に大神官の職を得ていた。私の神力を考えれば当然の処遇だろう。私よりも年上の神官が私の足元にひれ伏す。
女性と縁がなかったわけではなかった。私は父と母の遺伝子のお陰か、美醜に関してはとても優れていた。皆が私を一番に美しいと形容する。馬鹿な、私よりも美しいものがいるではないか。それは聖女だ・・・。聖女こそが世界で一番美しく、穢れのない唯一のものなのだ。
私は何年も聖女を召喚することを望んで研究をつづけた。私の生涯を終えない内に成功するのだろうか心配したが、とうとう私は聖女召喚に成功した。
しかし、正確に計算し周到な準備をしたのにも関わらず、聖女は二人召喚された。おかしい。そんなことがあるはずがない。私は失敗したのだろうか?
片方の聖女が魔力ゼロだという決断が下された。私は失敗したのだ。けれども、私にはもう一人の聖女が残っている。理想に近い清楚な聖女が・・・。
私は私の失態を隠すために、偽の聖女を放逐した。恐らくあの少女は長くは生きられないだろう。ウェースプ王国は豊かな国だが、何の後ろ盾もない口のきけない少女の行きつく先は想像がつく。
エルドレッド第二王子を王に据え、聖女ユイカを王女にする企みは、最近うまくいっていない。アルフリード第一王子が最近エルドレッド王子と接触をはかっているようで、そのせいでエルドレッド王子の鬱屈した劣等感を刺激することが難しくなってきた。
それに、最近聖女ユイカの修行もうまくいっていない。彼女は享楽的で、私の母を思い起こさせる。そんな筈ではない。聖女はもっと清らかで無垢で清楚な女性なのだ。どこかで間違ったのだろうか?
聖女ユイカが襲撃者に襲撃された。おかしなことに聖女の命を狙っていたはずの賊は、彼女の命を取る寸前で中断したようだ。この時点で私の疑惑は確信に変わった。
聖女ユイカは偽物だ。私は聖女召喚に失敗したのだ。
その真実は私を苦しめた。もう私が生きている間に聖女召喚は叶わないだろう。そんな時に、私はアルフリード王子の執務室で、信じられないことを耳にした。
男爵令嬢のセシリアが自分が本物の聖女だといい始めた。そういえば彼女の姿には覚えがあった。そう、最初の聖女召喚の時に私が偽物だと判断して放逐した少女だ。
彼女が目の前で凛とした姿で立つ彼女は、美しい長く黒い髪をなびかせて黒曜石のように輝く瞳で言った。彼女には時を止める能力があると・・・。
そう、これは誰にも知られていないが、前聖女ハナ様には時を止める力があったと、代々、大神官の間で秘かに伝えられている秘密中の秘密だ。
私は確信した、彼女こそが聖女であると。私の聖女召喚の儀式は成功していたのだと・・・・。
聖女サクラ様・・。私の理想の女性。願わくばアルフリード王子と結婚していただいて、ウェースプ王国を繫栄に導いてほしい。それが私の願いだ。
私は今日も神に祈る。私に聖女を授けていただいた感謝を・・・。
ああ・・・私の聖女様・・・。
初めて読んだ本の中の聖女に、憧れを抱いたことも自然な流れであったと思う。聖女は私が初めて見る理想の女性だったからだ。私は聖女に理想の母を見、理想の姉を見た。
15になった頃、私は既に大神官の職を得ていた。私の神力を考えれば当然の処遇だろう。私よりも年上の神官が私の足元にひれ伏す。
女性と縁がなかったわけではなかった。私は父と母の遺伝子のお陰か、美醜に関してはとても優れていた。皆が私を一番に美しいと形容する。馬鹿な、私よりも美しいものがいるではないか。それは聖女だ・・・。聖女こそが世界で一番美しく、穢れのない唯一のものなのだ。
私は何年も聖女を召喚することを望んで研究をつづけた。私の生涯を終えない内に成功するのだろうか心配したが、とうとう私は聖女召喚に成功した。
しかし、正確に計算し周到な準備をしたのにも関わらず、聖女は二人召喚された。おかしい。そんなことがあるはずがない。私は失敗したのだろうか?
片方の聖女が魔力ゼロだという決断が下された。私は失敗したのだ。けれども、私にはもう一人の聖女が残っている。理想に近い清楚な聖女が・・・。
私は私の失態を隠すために、偽の聖女を放逐した。恐らくあの少女は長くは生きられないだろう。ウェースプ王国は豊かな国だが、何の後ろ盾もない口のきけない少女の行きつく先は想像がつく。
エルドレッド第二王子を王に据え、聖女ユイカを王女にする企みは、最近うまくいっていない。アルフリード第一王子が最近エルドレッド王子と接触をはかっているようで、そのせいでエルドレッド王子の鬱屈した劣等感を刺激することが難しくなってきた。
それに、最近聖女ユイカの修行もうまくいっていない。彼女は享楽的で、私の母を思い起こさせる。そんな筈ではない。聖女はもっと清らかで無垢で清楚な女性なのだ。どこかで間違ったのだろうか?
聖女ユイカが襲撃者に襲撃された。おかしなことに聖女の命を狙っていたはずの賊は、彼女の命を取る寸前で中断したようだ。この時点で私の疑惑は確信に変わった。
聖女ユイカは偽物だ。私は聖女召喚に失敗したのだ。
その真実は私を苦しめた。もう私が生きている間に聖女召喚は叶わないだろう。そんな時に、私はアルフリード王子の執務室で、信じられないことを耳にした。
男爵令嬢のセシリアが自分が本物の聖女だといい始めた。そういえば彼女の姿には覚えがあった。そう、最初の聖女召喚の時に私が偽物だと判断して放逐した少女だ。
彼女が目の前で凛とした姿で立つ彼女は、美しい長く黒い髪をなびかせて黒曜石のように輝く瞳で言った。彼女には時を止める能力があると・・・。
そう、これは誰にも知られていないが、前聖女ハナ様には時を止める力があったと、代々、大神官の間で秘かに伝えられている秘密中の秘密だ。
私は確信した、彼女こそが聖女であると。私の聖女召喚の儀式は成功していたのだと・・・・。
聖女サクラ様・・。私の理想の女性。願わくばアルフリード王子と結婚していただいて、ウェースプ王国を繫栄に導いてほしい。それが私の願いだ。
私は今日も神に祈る。私に聖女を授けていただいた感謝を・・・。
ああ・・・私の聖女様・・・。
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