上 下
132 / 167
第10章~彼氏彼女の事情~

水樹の告白

しおりを挟む
 沙月の噂の原因が水樹にあると聞かされた。
 正直、何故そこで水樹が出て来るのか見当もつかない。

「水樹が原因ってどういう事だ?」
「疑問に思うのは当たり前だな。説明すると長くなるけどいいか?」

 と聞かれ「ああ、大丈夫だ」と返すと

「そうだな、事の始まりは沙月が中学2年で俺が3年の時だな」
「結構昔なんだな」

 中学時代に何があったのか興味が出る。

「同じ中学だったんだけど、当時はこの家によく遊びに来てたんだ」
「そうそう、あの時は毎日家に来てたよね~」

 と水樹は昔の事を語ってくれた。

 * * * * * *

「タカくん、ココア飲む?」
「あぁ、サンキューユウ姉ちゃん」

 従妹の家に行くといつもユウ姉ちゃんが世話をしてくれる
 叔母さんが仕事で遅く帰ってくるからユウ姉ちゃんが母親代わりになっていた。

「はい、お待たせ」
「いつもありがとうユウ姉ちゃん」
「それはこっちのセリフだよ。気にかけてくれてありがとう」
「叔父さんが亡くなった時に沙月と約束したから。お礼なんていらないって」

 叔父さんは俺達が小さい頃に交通事故で亡くなった。
 当時の沙月は父親っ子だったから相当ショックを受けて塞ぎ込んでた。
 その時沙月と約束をした。
 俺が沙月を守る。父親や兄の様に振る舞って沙月を守ると約束した。

 中学も学区は違ったけど沙月と同じ中学に進学した。
 高校もユウ姉ちゃんが通ってる咲崎高校に通う予定だ。

「それにしても沙月のやつ帰って来るの遅いなぁ」
「今日は委員会があるって言ってたよ」
「そうなんだ」

 時刻は18時過ぎ。日が落ちるのも早くなり外はすっかり暗くなっている。
 心配になった俺は外で待とうと玄関を開けると

「今日は送ってくれてありがとう」
「大した事じゃないよ、それじゃあバイバイ」
「バイバ~イ」

 はぁ、今日もか。
 沙月は俺に気づいたらしく手を振りながら

「タカ兄~、どうしたのこんな所で」
「沙月の帰りが遅いから待ってたんだよ」
「ごめんね、今日は委員会があったから」
「それはさっきユウ姉ちゃんから聞いた。早く家に入ろうぜ」
「うん!」

 家に入り沙月は着替えて来ると言って自分の部屋へ向かった。
 もうすぐ夕ご飯だけどその前に話しておいた方がいいかもな。

 俺は沙月の部屋まで行くとドアをノックする。

「沙月、着替え終わったかー?」
「うーん、今行くねー」
「その前に話があるんだけど少しいいか?」
「いいよー、鍵空いてるから入ってきて」

 言われ、沙月の部屋に入る。
 
「どうしたの?」

 キョトンと首を傾げて聞いてくる。
 こんな動作も原因の一因だ。

「今日一緒に居た奴は誰だ? 中田じゃなかったみたいだけど」
「今日は同じ委員の綾部君だよ。暗くて危ないからって送ってくれたの」

 屈託のない笑顔で言う。
 俺は沙月の危機管理の甘さに辟易しながら

「今週送ってくれた奴の名前を言ってみてくれ」
「え~っと、綾部君、中田君、小泉君、二ノ宮君、森君だね」

 次々と男の名前を羅列していく。

「そいつらは全員友達なのか?」
「うん! 皆優しいんだよ!」

 はぁ、とため息を吐く。
 なるべく優しいトーンで悟す様に話す。

「どうして皆優しくしてくれると思う?」
「皆が優しいからでしょ?」
「違う。そいつらは……男は下心があるから優しくするんだよ」
「下心?」
「そうだ。そいつらは沙月に好かれたい。あわよくば付き合いたいから優しくするんだ」
「えっ? でもホントに皆優しいんだよ? そんな事考えてるとは思えないよ」

 全くどこまでピュアなんだ。
 まぁ今まで俺がそういった事から避けさせてたってのもあるだろうが。

「いいか? そいつらは単に付き合いたいって思ってるだけじゃない」
「どういう事?」
「付き合ってエッチな事したいと思ってるんだよ」
「えええ!? まだ中学生なのに?」
「そんなのは関係ないんだよ。特に中学生男子なんて頭の中はそういう事しか考えてない」
「そんな……」
「俺の言う事が信じられないか?」
「タカ兄の事は信頼してるよ」
「だったらこれからは男に優しくされてもおいそれとそれに甘えるな」
「……うん。タカ兄がそう言うなら頑張る」
「ああ、偉い偉い」

 そう言って頭を撫でる。
 沙月には窮屈な思いをさせてしまうかもしれない。
 だけど沙月は俺が守ってやらないといけないんだ。

「そろそろ夕飯も出来てる頃だから下に行くか」
「うん! お姉ちゃんのご飯美味しいから楽しみ~」

 それから夕飯を御馳走になって家に帰った。


 沙月に注意してから一週間が過ぎた。
 あれから一度も男と帰って来てはいないとユウ姉から聞いた。

 これで受験に専念できる。
 と言っても推薦が決まっているので面接の受け答えを考えるだけだが。

 授業が終わり友達と喋っていたら遅くなってしまった。
 この時間だと今日も沙月の家には行けなそうだ。
 
 自転車置き場に向かう途中で沙月の姿が見えた。
 今日は行けなくなった事を伝えようと近づくと、男の姿があった。
 気になった俺はこっそり後を着ける事にした。

 後を着けていくと二人は体育館裏にまでやってきた。
 嫌な予感がする。
 声が聞こえる位置まで移動して会話に聞き耳を立てる。

「どうしたの宮田君、こんな所まで来て」
「あ、あのさ。桐谷は……好きな男子とかいる?」
「えっ? 今は居ないよ」
「そっか」
「どうしてそんな事聞くの?」
「……お、俺、桐谷の事が好きなんだ! 付き合ってください」


 嫌な予感は的中してしまった。
 そして俺は気が付けば告白した男子を殴り飛ばしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

悪役令嬢の最強コーデ

ことのはおり
恋愛
◆コンプレックスを抱えるすべての乙女に捧げる、笑いあり涙ありの恋愛ファンタジー!◆  前世はまるで、日本社会という名の牢獄に無実の罪で投獄されたような不幸な人生だった。そこから一転、別世界の超絶美女貴族令嬢に生まれ変わったローズは、今度こそ「両想いの奇跡」を体験して幸福を手に入れようとしていた。ところが、社交界デビューのその日、ローズは気付いてしまう。この世界は前世でプレイしたことのある着せ替え&乙女ゲームの世界で、自分はあろうことか悪役令嬢だということに。 従僕男性との身分違いの恋に苦しみながら、ローズは破滅フラグを全力でへし折ってハッピーエンドを目指します。そうこうするうちに、なぜかヒロインの恋愛相手にモテまくってしまい…… ★この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。 ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。 断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。 ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。 更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。 平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。 しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。 それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね? だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう? ※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。 ※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……) ※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

日本

桜小径
エッセイ・ノンフィクション
我々が住む日本国、どんな国なのか?

ロンガニアの花 ー薬師ロンの奔走記ー

MIRICO
恋愛
薬師のロンは剣士セウと共に山奥で静かに暮らしていた。 庭先で怪我をしていた白豹を助けると、白豹を探す王国の兵士と銀髪の美しい男リングが訪れてきた。 尋ねられても知らんぷりを決め込むが、実はその男は天才的な力を持つ薬師で、恐ろしい怪異を操る男だと知る。その男にロンは目をつけられてしまったのだ。 性別を偽り自分の素性を隠してきたロンは白豹に変身していたシェインと言う男と、王都エンリルへ行動を共にすることを決めた。しかし、王都の兵士から追われているシェインも、王都の大聖騎士団に所属する剣士だった。 シェインに巻き込まれて数々の追っ手に追われ、そうして再び美貌の男リングに出会い、ロンは隠されていた事実を知る…。 小説家になろう様に掲載済みです。

処理中です...