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第10章~彼氏彼女の事情~

報告

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 修学旅行の振替休日も終わり、久しぶりの学校に登校する。
 今日は沙月と付き合った事を皆に報告する予定だ。

 その事に関しては不安は無いのだが、今の俺には一つ心配事がある。
 それは柚希に彼氏が出来た事だ。

 妹がいる奴ならたかだかそんな事で心配するとかシスコンかよ! と思うだろう。
 だが、柚希は自己顕示欲が高い! 自分にとってプラスになる存在しか認めない。
 そんな柚希が彼氏を作ったという事は、その彼氏に何かしらの価値があるのだろう。
 しかも相手は大学生なので、その辺りも心配だったりする。

 と、色々考えている内に学校に着いた。
 教室入り自分の席に鞄を置きいつもの溜まり場へ向かうと

「トモー! おっはよー!」

 と南が元気に挨拶してくる。
 
「おはよう、友也君」

 楓も挨拶してくる。
 二人とも今までと変わらず接してくれる。
 なので俺も今までどうりに挨拶を交わす。

 中居や水樹達にも挨拶をして話を聞いていると、どうやらクリスマスの話をしているらしい。

「でもでも~、中居君と及川は二人で過ごしたいっしょ~?」

 と田口が通常運転でウザさを発揮すると

「こ、恋人なんだから一緒に過ごしたいに決まってるでしょ!」

 と及川が田口に反撃すると、中居が

「そうか、佳奈子は俺と居たいんだな」
「えっと、その、あう~」

 と揶揄って及川が茹タコ状態になってしまった。
 なんだかんだとこの二人は上手くいってるみたいだ。

 丁度中居と及川の話が出たので、この機会に話しておこう。

「えっと、皆に報告があるんだけど」

 と言うと、楓と南がピクリと反応した。
 そして中居と水樹は

「なんだぁ? もしかして彼女できたか?」
「そっかぁ、友也にもようやく春がきたか」

 と、まだ報告していないのに彼女が出来た体で揶揄ってくる。
 まぁ、彼女出来たのは当たってるんだけど。

「実は沙月と付き合う事になりました」

 と言うと

「沙月? 誰だ?」
「中居は人覚えるの苦手だからなぁ。でも沙月を選ぶとはなー」
「え! 沙月ちゃんと付き合ったの! 今度恭子ちゃんとダブルデートしない?」

 と田口が発言した瞬間に水樹が肘打ちをする。
 
「田口! 少しは自重しろ」

 水樹の言葉で察した及川が

「そうだよ! 本当にデリカシー無いんだから」

 と及川が言うと、楓と南は

「大丈夫大丈夫、私とトモはマブダチだから!」
「まぁ私はまだ諦めてないけどね~」

 と気にしてない素振りを見せた。

「だから皆も気にしないでね~」

 と楓が締めた。
 ホントに二人には感謝しなければならない。

 田口の提案はスルーして

「まぁ、今度改めて紹介するよ」

 と言うと中居が

「今度? 今日会ってみたいわ」
「そうだな、それなら帰りにファミレス寄っていくか」
「あ? なんでファミレスなんだ?」
「マジで覚えてないのな。友也のバイト先の女の子なんだよ」
「なるほどな。佐藤、今日は彼女はバイトはいってるのか?」
「あ、ああ。確か入ってたはずだけど」

 と言うと中居が「なら決まりだな」と言い

「放課後皆で佐藤の彼女見に行こうぜ」

 と言って放課後皆でファミレスに行く事が決定してしまった。
 俺がやれやれといった感じでその様子を見ていると、楓と南が

「おめでとう、友也君」
「トモ、おめでとう」

 と言ってくれた。
 
「ありがとう、二人には感謝してる」

 とお礼を言うと

「お礼なんていいよ~」
「そうそう、それよりも沙月ちゃんを大事にしてあげてね」
「まぁそれで別れたら友也君は私が貰っちゃうけどね」

 と二人は明るい笑顔を見せてくれた。


 その後授業や昼休みでも普段通りに過ごした。

 放課後になりグループで集まると

「んじゃ早速佐藤の彼女に会いに行くか」

 という中居の言葉で俺達はファミレスに向かった。
 一応沙月には昼休みに今日行く事をLINEで伝えておいた。

 ファミレスに着き店内に入ると男の先輩が席へ案内してくれた。
 席に着くなり中居が

「で? 彼女はどれよ?」

 と聞いてきたが、それに対して及川が

「そんなに佐藤の彼女がきになるんだー。へー、ふーん」

 中居がずっと沙月の事を気にしていたのでヘソを曲げてしまったらしい。
 
「なんだよ、佳奈子は気になんねぇのか?」
「そりゃ気になるけど……」

 及川は丸め込まれてしまった!
 中居は改めて

「で? どの子なんだ?」

 と聞いてくる。

「17時出勤だからまだ来てないよ」
「なんだよ、だったら取りあえず何か頼むか」
「そうだな、友也のオススメは何だ?」

 と沙月が出勤するまで待つことになった。

 一通り食事を済ませてクリスマスパーティーについて話していると

「私はやっぱり友也さんと過ごしたいですね~」
「まぁ、付き合って初めてのクリスマスだしな」
「はい、それにやっぱり好きな人と一緒に過ごしたいじゃないですかぁ」
「まぁ、そうだな……って沙月! いつの間に!」

 いつの間にか沙月がテーブルに来ていた。
 しかもナチュラルに会話に参加していたので気づかなかった。
 
 沙月はテヘッと舌を出した後

「友也さんとお付き合いしてる桐谷沙月きりやさつきです。皆さんよろしくお願いします」

 と言ってペコリとお辞儀をした。
 
 皆の反応は

「俺は中居だ、よろしく」
「私は及川佳奈子っていってコイツの彼女やってます。気軽に佳奈子って呼んでね」
「俺は田口って紹介するまでもないかな。恭子ちゃんの彼氏で~す」
「久しぶり、私は新島楓です。よろしくね」
「私は水瀬南です! よろしくー!」

 と順番に自己紹介をしたが、水樹だけ自己紹介をしなかった。
 俺がそれにツッコむと

「あれ? 言ってなかったけ? 俺と沙月は従妹同士なんだよ」
「そうなんですよ~。こんな軽薄な男が従兄だなんて嫌になっちゃいます」

「「「「「「は?」」」」」」

 前から妙に仲が良いとは思ってたけどまさか従妹だったとは。

「マジで! もしトモと沙月ちゃんが結婚したら水樹が御兄さんになるの?」
「ま、そうなるな」

 と話していると、バコォーン! という音と共にいきなり後頭部に物凄い衝撃が走った。

「も、もう、友也さんったら~。結婚なんてまだ早いですよ~」

 と言いながら持っていたトレーを抱きしめてクネクネしていた。

 何で俺が叩かれるんだと思いながらも、こんな乙女な部分も可愛いなと感じてしまった。
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