上 下
86 / 167
第七章~ヒメゴト~

名前

しおりを挟む
「これからどうする? 何処か行きたい場所とかあるか?」

 と既に仲良さそうに話している柚希と沙月に問いかける。
 すると沙月が

「ハイ! 文化祭の出し物の材料買いたいんですけどいいですか?」

 と何故か挙手しながら言う。
 それに続いて柚希が

「ハイ! ショッピングモール行きたいです」

 と柚希も挙手しながら言う。
 すると沙月がそれに食いつく。

「私見たい服あったんだ~。あの雑誌に載ってたヤツ見た?」
「見た見た! カワイイよね~」

 と既にショッピングモールに行く気満々だ。
 しかし友華さんの意見も聞かないとな。

「友華さんは何処か行きたい所ありますか?」
「わ、私もショッピングモールで大丈夫です」

 という訳で、皆でショッピングモールに行く事になった。

 
 ショッピングモールに着くなり、柚希と沙月が二人して服が見たいから別行動しようと提案してきた。
 俺は別に構わなかったが、何のために四人で来たのか分からない。

「それじゃあ、こっちの買い物が済みましたら連絡しますね」

 と沙月が言い、二人並んで消えて行った。

「えっと、どうしましょうか?」
「わ、私は佐藤君に任せます」

 ん~、何処に行くのがベストなのだろう。
 それにこの人混みだと友華さんがはぐれそうだ。

 そこまで考えて、今まで忘れていた事に気づく。
 友華さんと連絡先交換していなかった。

「あの、迷惑じゃなければ連絡先交換しませんか? 万が一はぐれたら大変なので」
「あ、は、はい! 全然迷惑なんかじゃないです! LINEで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。コードを見せて貰えれば読み取ります」
「わ、分かりました。少し待ってくださいね」

 と慌ただしくスマホを取り出して操作している。

 結論から言うと、IDを見せてうち込んで貰った。
 コードを見せて貰い、読み取ろうとしたのだが、友華さんの手が震えていて読み取れなかった。
 ならばと、俺のコードを出して読み取ってもらおうとしたが、またもや手が震えて読み取れなかったのだ。

 連絡先交換だけでドッと疲れを感じたが、改めて友華さんに行き場所を尋ねる。

「どこ行きます? 友華さんの好きな場所でいいですよ」
「わ、私は本当にどこでも大丈夫ですので、佐藤君の行きたい所でいいですよ」

 俺に遠慮しているのが手に取る様に分かる。
 なので、友華さんが好きそうな場所を考える。

「でしたら、本屋に行きませんか? ラノベの新刊を買いたいので」

 と提案すると、目を輝かせて

「は、はい! 私も新刊気になってました」

 と、友華さんのヲタクスイッチが入った。

 本屋に着き、ラノベコーナーを見ていると、友華さんがテンション高く話しかけてくる。

「佐藤君! このラノベ読みましたか? 最新刊出てますよ!」
「お! 異世界ヒロインとの修羅場な彼女か。勿論読んでますよ」
「あっ! こっちには妹プロもありますよ!」

 といった感じで終始友華さんのテンションは高かった。
 かく言う俺も結構テンション上がってしまった。

 本屋を後にしてベンチで休んでいると、沙月から連絡があった。
 1階の噴水前で待っているらしい。

 友華さんにそれを伝え、向かおうとすると

「あ、あの! 少しいいですか?」

 と呼び止められた。

「どうかしましたか?」
「えっと、いきなりこんな事言い出すなんておかしいと思われるかもしれないんですけど……」

 え? 何この緊張感! もしかして告白か?

「佐藤君の事を沙月みたいに呼んでもいいですか?」
「え?」
「や、やっぱりダメですよね! 図々しくてすみません!」
「いや、沙月みたいにって事は名前で呼ぶって事ですか?」

 と聞くと、耳まで真っ赤にして頷いた。

「そんな事ですか、全然かまいませんよ。寧ろ呼んで欲しいです」
「あ、ありがとうございます!」

 そんなやり取りをしていた所為か、時間がそこそこ経っていたので柚希から早くして! と連絡がきた。

 待ち合わせ場所の噴水前に着くと、若干イライラした様子の二人が居た。

「お兄ちゃん遅い!」
「女の子を待たせるとかやりますね~」

 と二人から口々に責められる。
 
「まぁお兄ちゃんだから今回は見逃すけど、次回からは気を付けてね!」
「分かったよ。それより昼は何処で食べる?」

 とさりげなく話題を変える。

「美味しそうなパンケーキ屋があったのでそこに行きましょう」

 と沙月が提案する。

「お昼にパンケーキ? そんなんじゃ食べた気にならないだろ?」
「はぁ? お兄ちゃん本気でそれ言ってるの?」
「友也さん、流石にそれはありえないです」
「なんでだよ、パンケーキはおやつだろ?」
「「はぁ」」

 二人同時に溜息を吐かれた!
 俺何か間違った事言ったのか?

「あのねお兄ちゃん、女の子は食事してる時でも『可愛い』を意識するの!」
「なので、ガッツリ食べる様な物はNGです。」
「その点パンケーキなら見た目から可愛いからね」
「美味しいってリアクションも取りやすいんですよ!」

 と柚希と沙月が息ぴったりで交互に説明する。
 なるほど、デートの時は注意しないとだな。

「という訳でパンケーキ屋さんに行きましょう」
「友華さんもそれでいいですよね?」
「え? あ、はい。大丈夫です」

 と柚希はさりげなく友華さんをサポートして歩き出した。
 
 柚希を見ていると、リア充にはまだ遠いなと実感させられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

“5分”で読めるお仕置きストーリー

ロアケーキ
大衆娯楽
休憩時間に、家事の合間に、そんな“スキマ時間”で読めるお話をイメージしました🌟 基本的に、それぞれが“1話完結”です。 甘いものから厳し目のものまで投稿する予定なので、時間潰しによろしければ🎂

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※完結済み、手直ししながら随時upしていきます ※サムネにAI生成画像を使用しています

処理中です...