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第六章~選択~

三角関係?

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 『楓と佐藤が別れたのは私の所為だよね?』

 ミナミは今にも泣きそうな表情でそう言った。
 自分があんな事をしなければ俺達が別れる事は無かったと思っての言葉だろう。
 そんなミナミの言葉を受けて、楓は

「確かに南がアクションを起こさなければ別れなかったかもしれない」

 楓の言葉を受け、ミナミの目から遂に涙が零れる。
 しかし、楓はそんなのお構いなしに言葉を続ける。

「私は独占欲が強いから友也君に言い寄る女子は許さないし渡さない!」

 ミナミは涙を流しながら静かに楓の話を聞いている。

「本当ならどうして私達が付き合ってるのを知っててそんな事をしたのか、私の彼氏に手を出すとどうなるか教えないといけないんだけどね」

 手を出すとどうなるか教えないといけないという俺迄怖くなるセリフを聞いたミナミは

「わかってる……覚悟はしてきた」

 と涙を拭って楓を真正面から見る。
 それに対し楓は「ふぅ……」と息を吐き

「でもね、例外が一人だけ居るの。それが南」

 遠回しに南の事は責めないという言葉を聞いて

「友達だから例外ってこと? そんなのは望んでない!」

 と少し語気を強めて言う。
 だが楓は「そうじゃない」と前置きをした後に

「友達でも私は容赦なんかしないよ。寧ろその裏切り行為は絶対に許さない」

 と言うとミナミは

「だったらどうして私は例外なの? 楓を裏切ったんだよ!」

 と楓の言っている事が理解できない! と頭を振る。

「逆に聞くけど、南はどうして私達が別れたと思う?」
「それは私が佐藤に手を出したからでしょ?」
「手を出された位じゃ別れたりしないよ。さっきも言った通り相手を徹底的に追い詰めて終わりだもん」
「意味がわからないよ、どうして私を責めないの?」

 ミナミの言葉を受け、楓は漸く理由を話す。

「私が最初に南を裏切ったからだよ」

 ミナミは「どういう事?」と聞き返す。

「南が友也君の事好きだって知ってて横取りしちゃったから」

 ミナミは驚いた表情を見せながら

「そんなのは告白する勇気が無かった私が悪いんだよ」

 と、あくまで自分が悪いと主張する。
 
「それでも友達の好きな人を奪った事には変わりないから」
「それが理由で別れたならそんな同情みたいな事しないでよ!」
「同情なんかじゃない! それに私は友也君を諦めた訳じゃない」
「同情じゃないなら何で別れたの? それに佐藤を諦めた訳じゃないってどういう事?」

 ミナミの言葉に少し間を空けて楓が答える。

「付き合う時に友也君に自分の好きは私に比べて小さいって言われたの。私はその時はそれでもいいって思って付き合ったんだけど、南がアプローチしてきて恐くなったの。小さいままの好きじゃその内南に取られちゃうって。だから一旦別れてもう一度アプローチして、今度は大きな好きになって貰えるようにね」

 楓の言葉を聞いたミナミは若干怒りながら

「それって楓の我が儘だよね? 佐藤はそれでいいの?」
「最初は別れたくなかったよ。でも楓に水瀬の気持ちも考えて、どちらと付き合うか考えて欲しいって言われたから承諾した。ちゃんと二人の気持ちと向き合って決めたいと思う」

 俺の話を聞いたミナミは楓と向き合って

「えっと、つまり私と楓で一から勝負してどちらが選ばれるか勝負するってこと?」

 ミナミの疑問に楓はコクンッと頷き

「どっちが友也君に選んで貰えるか真剣勝負だよ!」

 と言いながら楓は手を前に出す。

「そっか、チャンスがあるなら掴まなきゃ勿体ないね」

 と言って楓の手を握り握手を交わす。

「でも、別れてからも名前で呼ぶんだね」
「うん、好きだからね!」

 そう言葉を交わすと、ミナミはこちらを向き、今まで二人だけの秘密だった事を言葉にする。

「それじゃあ私は佐藤の事トモって呼ぶから佐藤はミナミって呼んでね♪」
「いいのか?」

 あだ名の事を今まで隠してきたのにそれでもいいのか? というニュアンスで聞き返す。

「大丈夫! ドンドン呼んでいいからね!」
「わかった、よろしくミナミ」
「よろしくね~トモ」

 と改めて呼び名を確認していると、楓が

「言い忘れてたけど、キャンプの最終日にどちらか決めて貰う事になってるから」

 と余りに短い期間にミナミは焦ったように

「そういうのは早く言ってよー! トモ、早速一緒に帰ろ?」
「あ、ズルい! 私も一緒に帰る!」
「ふふ~ん、私とトモは最寄り駅同じだから結構チャンスあるかも」
「うう~! そう言えばそうだった」
「はは、今まで付き合ってたんだから少しはハンデ貰わないとね~」
「うっ!」
「それじゃあトモ、帰ろっか?」

 と言い俺の腕を掴んで教室から出て行こうとすると

「途中まで一緒なんだから私も帰る~!」

 と言いながら、ミナミとは反対側に立つ。
 両手に花状態になりながら教室を後にした。

 こうして俺達三人の奇妙な関係が出来上がった。 
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