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第五章~過去との決別~

作戦失敗

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 ゲームセンターで合流する予定だったのに中居が居なかったのは楓に遭遇したから移動したって事か。
 ナイス中居!

「どうする友也、俺達だけでやるか?」
「それしかないだろうな、楓に見つかる訳にはいかないし」
「オッケー、任せろ」

 水樹はそう言って田口達に合流し

「よし、次は俺な」
「おっ、水樹君もやる気満々だね~」
「まぁな」

 そう言ってコインを入れて殴る。

ズドォン!

 豪快な音を立てた後結果が表示される。
 田口程ではないがかなり高い数値だ。

「あ~あ、やっぱ田口には敵わないか」
「いやいや~、水樹君も凄いっしょ~」

 水樹は謙遜しているがかなり高い数値だった。
 もしかしたら細マッチョなのかな。
 等と思っていたら荒井に声を掛けられた。

「今度は佐藤君の見てみたいな~」

 少しニヤニヤしながら言ってくる。
 それに乗っかる様に池上も

「最近勢いに乗ってる佐藤君ならいい数字でるんじゃない?」

 と訳の分からない言い分で煽られる。
 それを聞いていた水樹が

「いいね、友也もやってみろよ」

 と言ってきた。
 それに対し俺は

「初めてやるんだぞ、何かアドバイスないか?」
「腰を回転させて腕を真っすぐ前に突き出す!」
「それだけ!?]
「とりあえずそれだけに集中してやってみろ」
「わかった」

 コインを入れグローブを嵌めると荒井と池田からヤジの様な応援が飛んでくる。

「頑張れよ~」
「佐藤君のカッコイイとこ見たいな~」

 俺はそんなヤジを無視して拳を構える。
 腰を回転させて真っすぐ突き出すんだったな。
 言われた事を頭の中で繰り返しながらマシンに拳を叩きつける。

ズドォンッ!

 おお! 結構いい音したな。
 そして数値が表示されると、なんと水樹とほぼ変わらない数値が出た。

「やったな友也、本当に初めてか~?」
「いや~、やっぱ佐藤君パないわ~」
「水樹のアドバイスのおかげだよ」

 水樹と田口が褒めてくれる。
 俺の数値を見た荒井と池田はさっきまでの元気はどこへやら、静かになってしまった。
 そこに水樹が

「今度はお前達の番な」

 と笑顔で言っているが、どこか威圧感を感じる。
 それを二人も感じ取ったのか、渋々といった感じでコインを入れる。

ドンッ!
ドォンッ!

 俺達に比べたら音に余り迫力が無い。
 数値を見ても俺より30以上低い。
 田口はそんな二人に向かって

「もっと鍛えないとだめっしょ~、男なら腕力だって~」

 と言われ更に落ち込む。
 しかし水樹は

「まぁそんなに落ち込むなって、取りあえず喉乾いたしどっか移動しね?」

 と今度は威圧感の無い笑顔でそう言う。
 その言葉に二人は

「さ、サンキュ」
「そうだね、何処かカフェでも行こうか」

 とすぐに立ち直った。
 なんというか現金な奴等だ。

 ゲームセンターから出ようとした時思わぬ人物と遭遇した。

「佐藤、悪ぃ」

 及川と楓と一緒に居るはずの中居がそこに居て何故か謝って来る。

「どうしたんだよ、急に謝って」

 俺がそう疑問を口にすると水樹が

「さっきは言えなかったけど、どうやら及川が口を滑らしたらしい」
「それってまさか……」
「新島に今回の事知られた」

 なんてこった。
 出来れば今回の事に楓は関わって欲しくなかった。
 俺が固まっていると中居の登場にビックリしていた荒井と池上に近寄っていき

「お前らちょっと付き合え」

 威圧感たっぷりにそう言う。
 それに対し二人は

「ど、どうしたの中居君?」
「そ、そうだよ。いきなり付き合えなんて言われても……」

 そう言う二人に対して中居は今度は怒気を込めて

「黙って着いてこい」

 と睨みを利かせる。
 それで二人は何かを察したのか、急に大人しくなった。

 中居先導の元、俺達は駅から少し離れた個人で経営してる喫茶店まで来た。
 入り口の所に及川が立っており、俺達を確認すると走ってこちらに合流する。
 及川は顔の前で手を合わせ

「ごめん佐藤!、私が余計な事言っちゃったから」
「全くだ。お前の所為で計画が全部パァだからな」

 必死に謝る及川に中居がイライラしながら文句を言う。

「バレちゃったのならしょうがないよ、それで楓は?」

 いつまでも謝り続ける及川なので話題を逸らす。

「楓なら喫茶店の中にいるけど……」

 何やら言葉を濁す及川に

「楓がどうかしたのか?」

 と聞くと

「あんなに怒ってる楓見るの初めて……」
「そっか……」
「ホントにごめん!」
「もういいって、な?」
「佐藤がそう言うなら……」

 及川でも見た事無い程怒ってるのか。
 やっぱり楓に内緒にしてたのが悪かったかな。

 俺達の会話を聞いていた荒井と池上が

「やっべ、家から呼び出しだわ! 悪いけど此処で帰るわ」
「お、俺もそろそろ予備校あるんだった!」

 と言い出し帰ろうとするが、水樹が二人の肩を掴み

「何言っちゃってんの? 帰す訳ないでしょ」

 と真剣モードで言い、二人の目の前に居た田口は指を鳴らしながら

「まぁまぁ、もうっちょっと付き合いなよ~」

 と不敵な笑みを浮かべて言う。
 こう見ると結構迫力あるな。
 そして最後に中居が

「帰ってもいいけど、どうなるか分かってるよな?」

 と睨みを利かせる。

 中居、水樹、田口の学年トップカースト三人に睨まれた二人は観念したのか

「わ、わかったよ」
「そういえば予備校明日だったかも」

 と肩を落としながら言う。

 及川を先頭に喫茶店に入ると、俺達を見つけた楓が立ち上がってこちらを睨みつけていた。
 
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