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4話 第一回姉妹会議
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帰宅後、出された宿題を片付け、夕飯の準備をしながらお姉ちゃんの帰りを待つ。
しばらくしてお姉ちゃんが帰ってきた。
「ただいま~」
「おかえりー。今シチュー作ってるからもう少し待ってね」
「うん、ありがと~」
食器を並べながら今日の告白の事をいつ話すか考える。きっとお姉ちゃんは傷ついちゃうからお風呂の前かしら。それとも――
「どうしたの真希ちゃん、怖い顔してるよ?」
「え?」
考え事をしている間に部屋着に着替えたお姉ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでいる。
私が心配かけちゃ駄目じゃない! こうなったのも全部あの男の所為ね! お姉ちゃんには申し訳ないけど今全てを話してしまおう。
「お姉ちゃん、話があるから座ってくれる?」
「はなし? わかった」
食卓の椅子に対面になるように座る。
「昨日お姉ちゃんが言っていた運命の男性の名前って龍宮誠一じゃない?」
「え! なんで知ってるの?」
「その人、同じ学校の同級生だったのよ」
「ホントに! こんな偶然ある訳ないからやっぱり運命なんだわ!」
「それでね、お姉ちゃんには辛いかもしれないんだけど……」
運命の男性だと思いこんでる人が勘違いで妹に告白なんてショックすぎる。
「お姉ちゃんと間違えて告白されたの、私」
「えぇっ!」
「昨日初めて逢った時から好きになりました。運命を感じましたって。ふざけてるわよね、運命感じてると言っておきながら姉妹の区別もつかないんだから」
「……」
「やっぱりショックだよね。一緒に文句言ってあげ――」
「うわぁ~、やっぱり運命だったんだ~!」
ガタッ! と椅子から立ち上がり喜びでバンザイをしている。え? なんで喜んでるの? お姉ちゃんにとってショックな話だった筈なのに。
「な、なんで喜んでるの? ショックじゃないの? 私に告白してきたのよ?」
「真希ちゃんに告白したってことは私に告白したってことでしょ?」
「ど、どういうこと?」
昔からお姉ちゃんは突飛な行動で驚かされてきたけど、今回は別格ね。
「あのね真希ちゃん。誠一さんは私達が双子だと知らないでしょ? だから真希ちゃんを私と思い込むのは必然だし、『初めて逢った時から』と言っている事から私に対して告白してるってことじゃない?」
「で、でも! いくら双子だからって告白相手を間違うのは失礼じゃない!」
「ん~~、それはしょうがないよ。お父さんだって私達を見分けられないんだから」
「それは……」
「あと、今日初めて誠一さんと話したでしょ? だったら余計だよ」
「……」
お姉ちゃんの言ってる事は概ね正しい。肉親でさえ見分けがつかないのだから、初見で見分けるのはほぼ不可能に近い。というか何気に龍宮誠一を名前で呼んでるのが気になる。名前呼びは姉妹の特権だと思ってたのに! じゃなくて、ここは私が折れるとしても問題がいっぱいある。
「わかったわよ。お姉ちゃんの言い分でいいわ。だけど父さんとの約束はどうするの?」
「愛があれば駆け落ちなんて苦じゃないわ!」
「それは絶対にダメ! そんな事したら許さないんだから!」
「コソコソ付き合ってもダメ?」
うるうると瞳を滲ませながら上目遣いで聞いてくる。
「コソコソ付き合ったとしても婚約者はどうするの? あとお父さんにバレたらどうするの?」
「うぅ、私あのひと嫌い! お父さんなら一生懸命話せば分かってくれるよ!」
「話せば分かってくれるなら最初からあんな条件出さないと思うけど?」
「どうして……どうしてそんな意地悪ばっかり言うの! 少しくらい夢見させてよ!」
バンッ! とテーブルを叩き自分の部屋へ閉じこもってしまった。
「お、お姉ちゃん……」
なんて事をしてしまったんだろう。お姉ちゃんには悲しい想いはさせたくなかったのに私がお姉ちゃんを追い詰めちゃってるじゃない。それに運命の男性なんて言い出したのも婚約からの現実逃避みたいなものだったんだわ。なのに私はお姉ちゃんの気持ちも知らないで傷つけてしまって。こんなんじゃ妹失格じゃない。
お姉ちゃんとしっかり話し合おう。お姉ちゃんを全力でサポートしよう。少しの間でもお姉ちゃんが幸せでいられる場所を作るんだ!
コンコン
「お姉ちゃん、さっきはごめんない。私、全力でお姉ちゃんの味方するから」
「……ほんと?」
「本当よ! お姉ちゃんの為ならなんだってするわ!」
そう言った瞬間、部屋のドアが勢いよく開かれ、薄く笑うお姉ちゃんが姿を現した。
「いま、なんでもするって言ったよね?」
「ふぇ?」
再び私達は椅子に座り話し合う。だが今回はお姉ちゃん主導の元の話し合いになる。
「まず、真希ちゃんには誠一さんと付き合ってもらいます」
「え?」
「でも、デートは私が行きます。この意味がわかる?」
「まったく」
「一から説明するからちゃんと聞いててね」
お姉ちゃんが提案したのはこうだ。
一 私がお姉ちゃんのフリをして告白を受け入れる。
二 連絡先はお姉ちゃんの物を渡す
三 週一回のデートの時はお姉ちゃん本人が行く
四 習い事や会食がデートと被った時は私がお姉ちゃんのフリをして出席
五 学校やデート以外でのやり取りは私がお姉ちゃんのフリをして誤魔化す
六 情報共有を怠らない
七 他人に知られてはならない
まとめるとこんな感じだった。
お姉ちゃんの代わりに習い事や会食に出席するのはまだいい。ただ学校生活までお姉ちゃんのフリをするのには限界がある。それなりに友人はいるし、友人じゃなくても不思議がられる。
「学校生活までお姉ちゃんのフリをするのは無理よ」
「そっかぁ。だったら条件をつけよう!」
「条件?」
「うん。告白をOKする条件として学校での接触禁止とか」
「怪しまれないかしら?」
「そうしたら家が厳しくて付き合ってる事がバレたら引き離されちゃうって本当の事を言えば納得してくれるんじゃないかな?」
「そんなに上手く行くかしら」
「大丈夫! 私の運命の男性だもん、理解ってくれるよ!」
どこからそんな自信が出てくるのかわからないけど、お姉ちゃんを信じよう。さっき全力でサポートするって誓ったばかりだしね。
「作戦はこれで全部?」
「う~ん、そうだね。今のところはこれで大丈夫だと思う」
「じゃあ遅くなったけど夕飯にしましょ。お腹空いちゃった」
「さんせ~い! 実は私もお腹ペコペコだよ~」
「おかわりあるから沢山食べてね」
こうして第一回姉妹会議は閉会した。
明日から私達姉妹の一世一代の勝負が始まる。
バレるかどうかは私の演技次第といっても過言じゃない。もし父にバレたらお姉ちゃんの不幸が確定してしまう。それだけはどんな手を使っても阻止しなければならない――――。
しばらくしてお姉ちゃんが帰ってきた。
「ただいま~」
「おかえりー。今シチュー作ってるからもう少し待ってね」
「うん、ありがと~」
食器を並べながら今日の告白の事をいつ話すか考える。きっとお姉ちゃんは傷ついちゃうからお風呂の前かしら。それとも――
「どうしたの真希ちゃん、怖い顔してるよ?」
「え?」
考え事をしている間に部屋着に着替えたお姉ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでいる。
私が心配かけちゃ駄目じゃない! こうなったのも全部あの男の所為ね! お姉ちゃんには申し訳ないけど今全てを話してしまおう。
「お姉ちゃん、話があるから座ってくれる?」
「はなし? わかった」
食卓の椅子に対面になるように座る。
「昨日お姉ちゃんが言っていた運命の男性の名前って龍宮誠一じゃない?」
「え! なんで知ってるの?」
「その人、同じ学校の同級生だったのよ」
「ホントに! こんな偶然ある訳ないからやっぱり運命なんだわ!」
「それでね、お姉ちゃんには辛いかもしれないんだけど……」
運命の男性だと思いこんでる人が勘違いで妹に告白なんてショックすぎる。
「お姉ちゃんと間違えて告白されたの、私」
「えぇっ!」
「昨日初めて逢った時から好きになりました。運命を感じましたって。ふざけてるわよね、運命感じてると言っておきながら姉妹の区別もつかないんだから」
「……」
「やっぱりショックだよね。一緒に文句言ってあげ――」
「うわぁ~、やっぱり運命だったんだ~!」
ガタッ! と椅子から立ち上がり喜びでバンザイをしている。え? なんで喜んでるの? お姉ちゃんにとってショックな話だった筈なのに。
「な、なんで喜んでるの? ショックじゃないの? 私に告白してきたのよ?」
「真希ちゃんに告白したってことは私に告白したってことでしょ?」
「ど、どういうこと?」
昔からお姉ちゃんは突飛な行動で驚かされてきたけど、今回は別格ね。
「あのね真希ちゃん。誠一さんは私達が双子だと知らないでしょ? だから真希ちゃんを私と思い込むのは必然だし、『初めて逢った時から』と言っている事から私に対して告白してるってことじゃない?」
「で、でも! いくら双子だからって告白相手を間違うのは失礼じゃない!」
「ん~~、それはしょうがないよ。お父さんだって私達を見分けられないんだから」
「それは……」
「あと、今日初めて誠一さんと話したでしょ? だったら余計だよ」
「……」
お姉ちゃんの言ってる事は概ね正しい。肉親でさえ見分けがつかないのだから、初見で見分けるのはほぼ不可能に近い。というか何気に龍宮誠一を名前で呼んでるのが気になる。名前呼びは姉妹の特権だと思ってたのに! じゃなくて、ここは私が折れるとしても問題がいっぱいある。
「わかったわよ。お姉ちゃんの言い分でいいわ。だけど父さんとの約束はどうするの?」
「愛があれば駆け落ちなんて苦じゃないわ!」
「それは絶対にダメ! そんな事したら許さないんだから!」
「コソコソ付き合ってもダメ?」
うるうると瞳を滲ませながら上目遣いで聞いてくる。
「コソコソ付き合ったとしても婚約者はどうするの? あとお父さんにバレたらどうするの?」
「うぅ、私あのひと嫌い! お父さんなら一生懸命話せば分かってくれるよ!」
「話せば分かってくれるなら最初からあんな条件出さないと思うけど?」
「どうして……どうしてそんな意地悪ばっかり言うの! 少しくらい夢見させてよ!」
バンッ! とテーブルを叩き自分の部屋へ閉じこもってしまった。
「お、お姉ちゃん……」
なんて事をしてしまったんだろう。お姉ちゃんには悲しい想いはさせたくなかったのに私がお姉ちゃんを追い詰めちゃってるじゃない。それに運命の男性なんて言い出したのも婚約からの現実逃避みたいなものだったんだわ。なのに私はお姉ちゃんの気持ちも知らないで傷つけてしまって。こんなんじゃ妹失格じゃない。
お姉ちゃんとしっかり話し合おう。お姉ちゃんを全力でサポートしよう。少しの間でもお姉ちゃんが幸せでいられる場所を作るんだ!
コンコン
「お姉ちゃん、さっきはごめんない。私、全力でお姉ちゃんの味方するから」
「……ほんと?」
「本当よ! お姉ちゃんの為ならなんだってするわ!」
そう言った瞬間、部屋のドアが勢いよく開かれ、薄く笑うお姉ちゃんが姿を現した。
「いま、なんでもするって言ったよね?」
「ふぇ?」
再び私達は椅子に座り話し合う。だが今回はお姉ちゃん主導の元の話し合いになる。
「まず、真希ちゃんには誠一さんと付き合ってもらいます」
「え?」
「でも、デートは私が行きます。この意味がわかる?」
「まったく」
「一から説明するからちゃんと聞いててね」
お姉ちゃんが提案したのはこうだ。
一 私がお姉ちゃんのフリをして告白を受け入れる。
二 連絡先はお姉ちゃんの物を渡す
三 週一回のデートの時はお姉ちゃん本人が行く
四 習い事や会食がデートと被った時は私がお姉ちゃんのフリをして出席
五 学校やデート以外でのやり取りは私がお姉ちゃんのフリをして誤魔化す
六 情報共有を怠らない
七 他人に知られてはならない
まとめるとこんな感じだった。
お姉ちゃんの代わりに習い事や会食に出席するのはまだいい。ただ学校生活までお姉ちゃんのフリをするのには限界がある。それなりに友人はいるし、友人じゃなくても不思議がられる。
「学校生活までお姉ちゃんのフリをするのは無理よ」
「そっかぁ。だったら条件をつけよう!」
「条件?」
「うん。告白をOKする条件として学校での接触禁止とか」
「怪しまれないかしら?」
「そうしたら家が厳しくて付き合ってる事がバレたら引き離されちゃうって本当の事を言えば納得してくれるんじゃないかな?」
「そんなに上手く行くかしら」
「大丈夫! 私の運命の男性だもん、理解ってくれるよ!」
どこからそんな自信が出てくるのかわからないけど、お姉ちゃんを信じよう。さっき全力でサポートするって誓ったばかりだしね。
「作戦はこれで全部?」
「う~ん、そうだね。今のところはこれで大丈夫だと思う」
「じゃあ遅くなったけど夕飯にしましょ。お腹空いちゃった」
「さんせ~い! 実は私もお腹ペコペコだよ~」
「おかわりあるから沢山食べてね」
こうして第一回姉妹会議は閉会した。
明日から私達姉妹の一世一代の勝負が始まる。
バレるかどうかは私の演技次第といっても過言じゃない。もし父にバレたらお姉ちゃんの不幸が確定してしまう。それだけはどんな手を使っても阻止しなければならない――――。
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