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第13話 レベル上げ

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 秘策を実行する為に山岳地帯までやってきた。
 エリーによれば、レベル上げなら草原よりこっちの方がいいらしい。

「それで、秘策って何?」
「その前にサーシャに確認だけど、俺が倒したモンスターの経験値はサーシャに入るんだよな?」
「はい、そうです」

 サーシャに確認を取ると意気揚々と答える。

「わかった! 正樹がモンスターを倒しまくるのね」
「まぁ、そういう事だな」
「そんなの全然秘策じゃないじゃない」
「俺の秘策はここからだ」

 そう、俺がモンスターを一匹一匹倒してたのでは通常と変わらない。
 だからこその秘策なのだ。

「この世界のモンスターはポップして現れる。それをチマチマ倒してたんじゃ時間がかかりすぎる。だから俺のスキルで大量に敵をポップさせて、それを俺が一気に仕留める。こうすれば通常の何百倍の速さでレベルアップできるって訳だよ」
「なるほどね~、それなら、らくちんだね」

 俺が秘策について説明すると鞘華は納得したが、サーシャが不思議そうに訊ねてくる。

「マサキ様はそんな事もできるのですか?」
「まぁな。前に言った魔法の様な物で大概の事は何とかなる」
「それはもう魔法の域ではないですね」
「魔法の様な物は魔法じゃないからな」
「そうでした。失礼しました」

 ペコリと頭をさげる。
 そんな仕草が可愛い。
 おっと、あまりサーシャを見てると鞘華がやきもち焼くからさっさとレベル上げしよう。

「取りあえず10匹位から試してみるか」

 そう言ってスキルを使う。
 すると何もない所からモンスターがポップする。

「本当にモンスターが現れました! 凄いです!」
「まだまだ正樹はこんなもんじゃないわよ」

 半信半疑だったのか、サーシャは驚いていた。
 そして何故か鞘華が自慢げにしている。
 モンスターに襲われる前に倒さなくちゃな。
 今度は出現したモンスターを一気に即死させる。
 
「上手くい行ったな」
「さすがですマサキ様!」
「どうだ? レベルは上がったか?」
「はい、一気に6も上がりました」
「それってどうやって分かるの?」
「頭の中に数字が浮かび上がるんです」
 
 そういう仕組みになってるのか。

「レベルが上がって力が強くなったとか感じる?」
「はい、一気に上がったので今なら一撃でスライムを倒せそうです」

 スライムを一撃って……。
 まぁ、昨日は攻撃自体はじき返されてたから成長はしてるのか。

「よし、この調子でどんどんいくぞ」
「はい!」

 その後モンスターをひたすら倒した。
 最後の方は面倒臭くなって、一気に100万匹をポップさせ倒していた。

「ふう、そろそろ終わりにするか」
「お疲れさまです!」
「レベルは今いくつだ?」
「凄いですよ! なんと8507まで上がりました!」
「え? 8507? 99が最高じゃないの?」
「レベルに上限があると聞いた事がありません」

 インフレし過ぎたのか?
 しかし、領主の保有する奴隷の数が領主のレベルで、それが奴隷に上乗せされる仕組みなら、この程度は大丈夫かな?

「とにかく、それだけのレベルがあれば大抵のモンスターは敵じゃないな」
「はい、今なら一つ目龍も一撃です」

 元気に返事をして、俺には分からない例えを言ってくる。
 とにかく帰ろうとして、鞘華が居ない事に気づいた。

「おい、鞘華が居ない。探すの手伝ってくれ!」

 俺がそう呼びかけると

「サヤカ様ならあちらの岩陰にいらっしゃいますよ」

 サーシャが指さした方向へ向かうと

「すーっ、すーっ」

 岩陰で眠る鞘華の姿を発見した。
 よかった。何処もケガとかしてないようだ。
 こうして寝顔を改めて見ると綺麗な顔だな。
 この子が彼女で、昨日はあんな事してしまったんだよなぁ。
 等と考えていると

「マサキ様、起こさなくていいのですか?」

 と、声を掛けられて我に返った。

「おーい、鞘華起きろー」

 軽く肩を揺すってみる。

「んん……すーっ」

「起きろー、もう帰るぞー」

 今度は頬っぺたをプニプニ突いてみた。

「ん~、あ、おはよう」
「おはよう、待たせて悪かったな、もう帰るぞ」
「わかった~」

 そう言って両手を上に挙げ、伸びをする。
 すると、鞘華の大きな胸が制服越しでも強調してきた。
 思わず唾を飲み込む。

「あ! 今私の胸見てたでしょ~?」
「わ、悪い、つい」
「いいわよ別に。どうせこの後お風呂だしね」

 俺と鞘華がイチャついていると

「マサキ様、マサキ様」
「ん?」

 サーシャから声が掛かりそちらを向くと

「おぉう!」

 腰を中腰にして、両腕で胸を挟んでこれでもかと言わんばかりに胸を強調している
 胸は鞘華より大きく、シャツのボタンがしっかり留まっていない為、ブラックホールの様に俺を谷間に吸い寄せる。

「どうですか? 大きさなら負けませんよ」
「凄く良いです」

 ほぼ条件反射で返事をしていた。
 そんな俺の頭に衝撃が走った。
 鞘華にぶたれたのだ。

「へー、正樹は大きいのが好きなんだー」

 感情の籠ってない声で鞘華が言う。

「違うんだよ! これは男としての条件反射であって、決して大きいから見てた訳じゃないんです」
「胸なら何でもいいんだ~」
「いや、鞘華が一番だよ」
「本当かな~?」
「なら、今夜証明してやる!」
「~~~っ」

 顔を真っ赤にして黙ってしまった。
 というか、今とんでもないことを口走ってしまったような。

「お二人が仲がいいのは分かりましたから、そろそろ帰りませんか?」

 やや呆れ気味のサーシャに促されて帰路に就いた。


 宮殿に帰り夕食を済ませ、いつものリビングで休憩しながらレベルの話になった。

「結局、サーシャのレベル上げは上手くいったの?」
「聞いて驚け! なんと8507まで上がったぞ!」
「それって凄いの?」
「凄いぞ。何と言うか、その、凄いぞ!」
 
 俺もレベル8507がどれだけ凄いのかわかっていなかった。
 サーシャに助け舟を出して貰う。

「今の私なら、殆ど敵なしだと思います」
「へー、そうなのね」
「サヤカ様も同じ位レベルが上がってると思いますが?」
「へ? 私が?」
「はい、サヤカ様もマサキ様の所有物ですので経験値は入ってると思います」
「そーなの?」

 俺に聞かれても困る。
 しかし、この世界では鞘華は俺の所有物=奥さんになっているからサーシャの言う通り経験値が入っていてもおかしくない。

「鞘華は自分でレベル確認出来ないのか?」
「どうやるの?」
「確か、念じると頭の中に数字が浮かぶらしいぞ」
「なるほど、やってみる」

 鞘華は腕を組んで、んん~と念じている。

「数字が出てきた! 9830だって!」

 驚いた事にサーシャよりもレベルが高い。

「私凄くない? 9830よ? サーシャより高いわ!」

 鞘華は何もしてないけどね。
 なんて事は口に出さず、どうして鞘華の方が上なのかサーシャに聞いてみる。

「それはマサキ様に愛されているからでしょう。主人との絆が強いほど得られる経験値が多くなりますから」
「そういうもんなの?」
「はい、なので主人は所有物、特に女に愛情を捧げて強くするのが一般的です。傍にいる女性が強ければ護衛にもなりますので」
「そうだったのか。でも、男の場合はどうやって絆を深めるんだ?」
「杯を交わして忠誠を誓わせ、一緒にお酒を飲む事で絆を深めます」
「なるほど」

 心の中で安堵の息を吐いた。
 男とも身体で絆を深めるんじゃないかと想像してしまったよ。
 そこでふと、鞘華がBLコーナーに居た事を思い出し、鞘華の様子を伺う。

「男同士だとお酒なのね。そこは友情を深めるような感じね」
「主と奴隷では友情は芽生えないとおもいますが」
「そうなんだ~、何だか寂しいわね」
 
 サーシャとそんなやり取りをしていた。
 これは白でいいのかな?
 そもそも、俺と行き合ってるんだしノーマルだと信じよう。

「どうしたの? こっちじろじろ見て」
「い、いや、これで鞘華も戦力になったな~って思って」
「ふふん! 正樹は私が守ってあげる」
「ははー。有り難き幸せ」

 こんな他愛のないやり取りが凄く楽しい。
 思いがけず鞘華のレベルも上がったし、本格的に攻略を始めてもいいだろう。
 それは明日考えるとして、今はお風呂イベントを楽しもう。
 その後は鞘華の胸が一番だと証明しなければ!
 俺は意気揚々と風呂の準備をした。
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