君と密かに恋をする

梧 哉

文字の大きさ
上 下
29 / 47

29 ※

しおりを挟む
「……っ……、ん……ッ」

 玄関ドアの鍵がかかる音を聞きながら、そのドアに押し付けられる形で、来実くるみあきらの口づけを受けていた。

「……はぁ……ッ、んんっ」

 どうしてこうなった?!

 脳裏の片隅で思ったものの、思考は昶の舌の動きに霧散する。

「ふ……っ……ん」

 少し浮かされた唇の隙間から熱い息を吐く来実の指は、昶のシャツを握りしめている。

「慣れてないのが可愛い。キスだけでとろっとろだな」

 怖がらせるぐらいの深いキスなのに、来実は昶にしがみついて、つたないながらも応えてくれる。それが、庇護欲と独占欲をかきたてる。

 唇を触れ合わせるだけのキスを何度もして、押し付けていた身体をはなす。

「おいで」

 腰を引きよせながら彼女を寝室へ連れ込み、ベッドへ座らせる。

「あの…っ、シャワーだけでも…っ」
「あとで」
「だって…っ」
「あとで一緒に入ろ。今は来実を食べる方が先」

 昶は言いつつ彼女の体をベッドへ寝かせて、覆いかぶさる。顔の両側へ両腕をつき、完全に捕獲したうえで唇を塞いだ。

 薄くのせてあった口紅がとれるほどに舐めてから、舌先で口内を舐める。
 彼女の舌に自らのそれを絡ませると、来実の体が小さく震えた。

「ん、んっ……ぁ、……ッ」

 息もつけないほど深く口付けながら、来実の服をはだけさせていく。
 
「可愛い。あー、ほんとにヤバイかも」
「なに、が?」
「ん? 来実が可愛すぎて、壊さない自信がない」
「怖いからやめてください……」
「気持ちよくない?」

 昶の指が来実の体を撫でると、ひくり、と彼女の喉が震える。

「来実が本当に怖いことは絶対しない。だから、おれに全部ちょうだい?」

 服の裾から指を入れて素肌を撫でると、彼女の熱い息が零れ落ちる。

「……ん、大丈夫、ですから」

 だから、ちゃんと全部、もらってください。

 熱い息と一緒に吐き出された言葉に、昶が目を丸くする。

「佐藤さんだけじゃ、ないんですよ?」
「―――……ほんと、おれのこと煽るの、得意だね」

 昶の辿る指に熱い息を吐けば、彼の指が胸のふくらみを撫でた。

「おれが触れるとびくびくするね。……気持ちいいんだ?」
「んっ……、こんな、……なったこと、な…から、わかんな、……っ」

 処女か、と問われれば答えはNOだ。だが、気持ちいいと思ったことがあるか、の問いもNOなのだ。
 今までこれほど――相手が触れるだけで体が震えることなど一度もない。体の奥がきゅんと絞られる感覚を逃がすように、熱い息を吐く。

「じゃあ、気持ちイイのも、はじめて?」
「んっ……!」

 言葉を出すことができずに首を縦に振ると、彼は来実の服を脱がせながら目を細めた。

「上の口も下の口も、全部感じて……おれがいないとダメにしてあげる」

 昶だけを見て、昶だけを感じる。今まで恋愛に感じていた劣等感も、全部、彼に預けてしまっていいのだろうか。

「いい、の?」
「おれがそうしたいんだ。――おれがいないと眠れないくらいになってほしい。足も手も全部絡めて、眠りたい」

 まっすぐに言われて、来実の思考がほどけていく。
 会話をしながら気付けば裸にされて、素肌をゆるゆると彼の指が辿る。

「あぁ、……ちょっと触れただけなのに、こんなにして」

 言いつつ、昶の指が胸の先に指を乗せてくるりと撫でた。

「あぁ…っ!」
「こっちは触ってないのにってる」
「も…っ、やだっ……んっ!」
「上の口は恥ずかしがってるけど、下の口は……ほら」

 ほら、と言いながら昶の指が蜜に濡れた場所を撫でる。

「ひゃあ……っ」
「濡れてとろとろ」
「なっ、…撫でないで……っ」
「気持ちいい?」
「やぁ…っ!」
「嫌じゃないでしょ? 気持ちイイって言って?」
「んっ! はぁ…っはぁ…っ、ぁ、ん…ッ」
 
 指は胸と蜜口を撫で、唇は反対の胸を舐めながら、昶は柔らかい声音で言葉をつづる。

「女性はね、気持ちが凄い大事なんだって聞いたことがある」
「気持ち…?」
「そう。セックスして気持ち良くなるのに、男以上に、女性は相手への信頼度が関係してくるって。相手を信頼して任せてもいいって、その気持ちがセックスにも影響をするんだ」

 胸の先を舐めていたのをとめて、昶は真っ直ぐ彼女を見下ろす。

「おれはこんな性格だし、おれの側にいるのが嫌になるかもしれない。だけど、隣にずっといてほしいのは、来実だけだ」

 真っ直ぐな視線と言葉に、来実は目を丸くして、それから小さく笑って両手を差し出した。

「こんな格好でするセリフじゃないですよ」

 ふふっ、と笑う彼女を昶は抱き上げ、自分の腿の上に乗せる。向かい合わせの中、来実は彼の唇の端へ触れるだけのキスをした。
 
「キスしたいって思うのも、触りたいって思うのも、あ…昶さんだけです」

 全身を真っ赤に染めて、来実は抱きついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎ ——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。 ※連載当時のものです。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。

どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。 婚約破棄ならぬ許嫁解消。 外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。 ※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。 R18はマーク付きのみ。

処理中です...