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転落

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彼女は忙しくなってきたこともあり、実家を離れ、3階建てのマンションを借り、1人暮らしをしていた。

広い部屋に、最低限必要な物だけ揃えた、ガランとした部屋だった。

大道が運転する車で仕事に行き、家に帰って寝るだけの日々を過ごしていた。

そんな日々に少し淋しくなっていた。
同い年の子は、学校生活をたのしんでる。彼女は学業を断念するしかなかった。

自分で決めた道
そう心に言い聞かせ、ミュージックソングス出演の仕事へ向かった。

ミュージックソングス本番

番組の流れはわかっている、いつも通り椅子に座り出番を待っている時、男が近くに座った。


なにかを手に握らせてくる。
彼女は、ドキっとしたが番組本番中、変に動くことはしなかった。

「すぐ隠して」


小さな声でとなりから聞こえた。
彼女は目立たないように胸元へ隠した。

CM中

席の移動がある、その時だれが渡してきたのかわかった。

マルチタレントで、歌手としても活動し始めた、
桜庭ゆうまだった。


なにを渡してきたのか気になるが、仕事に集中した。


本番が終わり楽屋へ戻る、着替えの時に渡された物を確認すると紙切れだった。とりあえずバッグに入れて後で見ることにした。


別に特別な事と捉えていない彼女は、マネージャーに、なにも言わなかった。

家に帰り、ふと紙切れの事を思い出す。
バッグを漁り、紙切れを確認した。

電話番号が書いてある。
だけど今は疲れていて、休みたい。

紙切れをテーブルにおいて、ゆっくり休んだ。

次の日も仕事へ向かう。
車で移動中、仲良くしているカップルが目に入る。
彼女は、いいなぁ~。と思いながら見ていた。


男女の恋愛観には疎かった。
仕事一本できた彼女は、男がどういうものか、まったくわかっていない。


仕事から帰り、ふとテーブルの上の紙切れを見る。

昼間見たカップルの事を思いだしていた。


男の人はどういう話しをするんだろ?
せっかく渡してくれたしちょっと掛けてみようかな?と思い、彼女は、電話をかけた。


数回呼び出し音の後、ゆうまは電話にでる。


「はぁい?もしもし?誰?」
少し冷たい感じの声。


彼女は名前を名乗り、掛けた理由を伝える。

ゆうまの声は高くなり、優しい話し方になった。

最初はぎこちない、平凡な内容だったが徐々に楽しくなった。

男の人とまともに話した事のない彼女は新鮮に感じていた。

この日から毎日電話するようになる。

ゆうまは彼女を自宅へ誘った。
彼女はためらったが、楽しさに負けて自宅へ向かう。

数時間しか一緒にいれなかったが、すごく嬉しかった。

次の日もゆうまの自宅へ向かう。
そして交際を迫られた。

優しく甘く頼りがいのある言葉に彼女は落ちてしまった。

ゆうまは心の支えだった。

ゆうまを思い仕事を頑張る。

彼女はゆうまを信じて疑わなかった。






    
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