上 下
75 / 182
第1章

第七十四話 宰相と……

しおりを挟む
夕食の後、皆に宰相のゾンヌフの所に行ってくると伝えて、宿を出た。

カラル以外の3人は宰相にそんなに簡単に会えないよ、とか、約束はちゃんとしているの?とか母親みたいに心配してくれた。優しいな3人とも。

カラルはちょっと含みのある笑いをこらえている感じだった。

さてと、砂浜から例の金ぴかマスクを装着して、飛び立つ。イドンの街に領域テリトリーを展開させる。宰相のゾンヌフは広い屋敷の中、2階の部屋で一人で酒を飲んでいる。護衛は1階に数名いるな・・・。

2階のベランダから部屋に入る。極私的絶対王国マイキングダム発動。
カラルに作ってもらった金ぴかのマスクをひらひらとゾンヌフの前に持って行く。
何度も目をこするゾンヌフ。

ベランダからすっと中に入る。

「お休みの所失礼しますよ、宰相」

「貴兄か、よくぞ参られた」

「アレ?不法侵入だよ、怒らないの?」

「ガハハハハハ、そなたのくらいの強者(つわもの)であればどんな要塞であっても、ひらりとかいくぐってきてしまうのであろう?」

確かにその通りなんだが、物腰が柔らかいだけかと思ったが豪快な男だな・・・。

「約束通り届けてくれたのだな、ありがとう。なに一人で寂しく酒を飲んでいるところだったんだ。一杯どうだ!」

俺は極私的絶対王国マイキングダムでグラスを棚から取り寄せて、ボトルを傾ける宰相からお酌をしてもらう。ついでに防音効果を持たせる。これでここでの声は1階まで届かない。

「これまた、面妖な技よのぉ・・・。ふむ、面白い、そなた俺と友になってくれんか?」

「はい?」

「たまに会いに来るだけでいい、言葉遣いもお互い無礼講と行こうじゃないか。この役職になるとなかなか腹を割って話せる奴がおらん。頼む!」
話の展開が見えないが、結構酔っぱらってるのか?でも確かに面白い。

「いいよ、・・・それでは、友に」
といってグラスを上げる。
「友に」
ゾンヌフとグラスを合わせた。小気味良い音が響く。

こんな短い間に友達ってできるものなのか?

「じゃあ始めに自己紹介といこうか、俺はゾンヌフだ。カガモン帝国の宰相をしている。今は休暇中だ。とはいえ、数日後には皇帝陛下も来られるのでその下準備中だ」

「そうか・・・俺は・・・」
といって名を名乗ることができないことに気が付いた。えーと、えーと俺の小学校のあだ名は明人(アキヒト)からメイジンって呼ばれてたから・・・・。

「ジーンだ」
と適当に命名する。

「冒険者をやっている。今はエソルタ島を奪還するためにここに来ている、ここにしばらく滞在する予定だ」

「すげー!ジーンの話でけえな、俺の皇帝陛下の世話なんか鼻くそみたいだな!ガハハハハ」
豪快に笑い飛ばすゾンヌフ。しかし、急に真面目な顔になり語りだした。

「アカネアからいろいろ話は聞いた。長い長い捕虜の期間、次々と人は連れていかれ、そして戻ってこなかった。明日は我が身かと思い続けて、生かされている恐怖。そう思い続けて生きている人がまだあの島にはいるのか?」

「ああ、いる。それがあと2000人だ」

「そうか・・・俺にできることがあれば何でもするから、相談してくれ」

「わかった」

「それとあの連れてきてくれた18人にはジーンの事は口外をしないことを約束させた。人の口には戸はたてられねぇって言うが、やらないよりかはましだ。お前の持っている飛行する魔法はどこの国にとっても脅威だ。それを俺は守りたい」

「・・・」

「おそらく冒険者ラッテ級の強さなんだろ?」

友となるのであれば話してもいいか、顔も隠してるし・・・。

「口外しないというのであれば話すが・・・」

「この仮面にかけて、口外しない」

俺があげた仮面じゃないか。こういう時は「命に」とか、「誇りに」とかに掛けるんだよ。何に掛けてんだよ、おっさん。

「ははっ!!面白いな。まあいいや、・・・そうだな、どの種族の奴よりも強い。おそらく魔人にも対抗できるようになってきた」

「最強じゃないか~。うわ~傭兵として雇いたいわ~。なぁなぁいくらなら雇われる?」

「丁重にお断りします」
俺はそう答えた後、2人で馬鹿笑いをした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...