【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
381 / 616
第十二章 異界の年明け

381.手を差し伸べる

しおりを挟む







 ◆◇◆











 エディオスさんの執務室前に到着。

 セリカさんは、これ以上にないってくらい……めちゃくちゃ、緊張されてカチコチ状態だ。エディオスさんとちゃんとお話出来るのだろうか……。

 僕が扉をノックしてお声をかけてもそのままだったので、扉が開くのを待ちました。


「カティア。…………と、セリカか?」


 開けてくださったのはセヴィルさんだった。今朝も会ったのに、やっぱり綺麗でカッコいい……僕にはもったいないくらいの婚約者さんだ。


「あの。セリカさんがエディオスさんに御用があって」
「セリカが? …………大丈夫か?」


 セヴィルさんが気づいても、セリカさんはまだカチコチ状態のままでした。僕がドレスの裾を軽く引っ張っても治らないくらいに。


「セリカさん、セリカさん!」


 もう少し強く引っ張ってから声をかければ、さすがにセリカさんでもハッと我に返ってくれました。


「あ、あら……私」
「エディオスさんのところに着きましたよ?」
「え、えぇ……」
「呼んでくるか?」
「他の方って中には?」
「休憩に行かせていたから、俺とエディオスだけだ」
「じゃ、セヴィルさん……少しだけ僕とお茶でも?」
「……それは嬉しい申し出だが、セリカをエディオスとだけに?」
「か、かかか、カティアちゃん!?」
「セヴィルさんはもう知っていますので! じゃ!!」
「ふゅふゅぅ!!」


 僕とクラウでセリカさんの背中を押して、お部屋の中に押し込む形で入ってもらい。

 セヴィルさんが、苦笑いされながら扉を閉めて下さったので……セリカさんにはもう逃げ場はないものと同じ。

 さてさて、いきなり告白になるかはわからないけど……進展があってほしいなあ?


「……カティアも、色々積極的になったな?」
「そうですかね?」


 たしかに、自分の恋とかには臆病な部分が大きかったけど……。今は、皆さんが、セヴィルさんがいらっしゃるから大丈夫だと思える部分が大きい。

 だから、つい笑うとセヴィルさんが僕に手を差し出してきた。


「茶会は本当か?」
「ファルミアさん達に、ちょっと識札飛ばしますね?」


 せっかくなので、お茶会は二人きりで過ごしたい。クラウはいるけど、今更だからね?

 識札を飛ばしてから……僕らは手を繋いで僕の部屋に向かうことにした。クッキーについては、バレンタイン本番にセヴィルさんには食べてもらうことになったよ?


「……楽しみにしている」
「はい。美味しいクッキー、また作りますね?」


 バレンタインまで、あと少し……セヴィルさんの誕生日も間近。あのイヤリングを渡すのも、もうすぐだ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...