761 / 784
番外編②
第75話 元まかない番だから
しおりを挟む「「「「イツキさーん!!」」」」
厨房に行けば、料理人の連中がイツキはんを取り囲んだわ。これ見て、イツキはんがさっきと違う笑顔になるのは当然やて。
「お久しぶりです」
「久しぶり! 元気そうだね!!」
ミュラーの親友だったか? 若手の料理人がイツキはんの前に立ったら、笑顔全開やわ。
「エリオさん。前より背が伸びていませんか?」
「そうそう。ミュラーほどじゃないけど、体つきも変わってきたんだよ」
「料理番の方はどうです?」
「イツキさんのくれたレシピ見ながら、まずは基本をがんばっているよ。料理長にもちょっと褒められるようになったんだ」
そうか。こいつが今のまかない料理番か? イツキはんには近しい存在やったから、話し方も他の奴らとちゃうんやな?
タメ口やけど、敬意は払っている感じやし。
「ん? 先輩は?」
「そう言えば、ワルシュさんいませんね?」
先輩がいないことに気がつくと、奥の方からちょぉいかついおっさんが出てきたわ!?
「……久しぶりだな、イツキ。料理長は今管理室で試作の研究だ」
「副料理長! ご無沙汰してます!」
「ああ。すっかり貴族の夫人だな?」
「まだまだ新米ですよ」
副料理長はんか……先輩ほどやないけど、悪人面やな? イツキはん全然怖がっておらんけど。
先輩が奥で研究っちゅーことは、多分イツキはんが作った薬効料理についてやろなあ? この間自分も見たけど、あれはほんまえぐい料理や。
今もどっかで、ゲイリッシュ先輩が護衛しとるだろうけど……それでも、絶対やなんて言えん。ひとつのきっかけで、危機とかチャンスやなんて訪れるからな。
冒険者時代、自分はいくつも体験したもんや。
「料理長に用か?」
「いえ。お忙しいようでしたら大丈夫です。今日はお城に少し用があったので」
「ふむ。……そっちの騎士は?」
「レクサスさんです。アーネストさんの部下さんで、私のお友だちですよ」
「……どーも」
「……なるほど」
こん人、冷静に観察してくる感じが、ある意味先輩より怖いわ~……。
「イツキさんイツキさん! 私、ちょっとずつまかないのお手伝いするようになったんっす!!」
いきなり、若い女料理人がイツキはんの前に出てきた。手に持ってた皿の中には……四角い黄色スライムみたいなん?
なんなん、あれ??
「あ。寒天寄せ出来るようになったんですね?」
「ぜ、是非! 食べていただきたいんす!」
せっかくだから、とイツキはんがひと口食べたんやけど。
今も屋敷で料理を作り続けるイツキはんの判定は厳しかった。
「火の加減が少し強いですね? 粗熱を取るのが甘いので……冷やし方も、いまいち。歯応えが弱いです」
「うぅう……」
「さすが、イツキさん。容赦ない!」
「がんばるっす!」
「味はまずまずなので、もっと丁寧さを意識しましょう」
料理人のイツキはんの見解。
異世界の人間だったこともあって、やっぱり飛び抜けとるわ……。
413
お気に入りに追加
5,498
あなたにおすすめの小説
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下
七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」
死の床で陛下はわたくしに謝りました。
「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」
でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。
1000歳の魔女の代わりに嫁に行きます ~王子様、私の運命の人を探してください~
菱沼あゆ
ファンタジー
異世界に迷い込んだ藤堂アキ。
老婆の魔女に、お前、私の代わりに嫁に行けと言われてしまう。
だが、現れた王子が理想的すぎてうさんくさいと感じたアキは王子に頼む。
「王子、私の結婚相手を探してくださいっ。
王子のコネで!」
「俺じゃなくてかっ!」
(小説家になろうにも掲載しています。)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。