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番外編②
第74話 マブダチの気遣い
しおりを挟む「イツキはん! お疲れさん」
バクス爺さんの診察が終わったっちゅーことで、もともと話そうと約束しとったんや。殿下は学園、妃殿下はジェラルド殿下にかかりきりやから、時間が出来た。
イツキはんはいつもの笑顔で自分に向き合ってくれたんやけど。
(……無理しとる笑顔やな)
副隊長ほどやないけど、自分かてイツキはんが城におった時はいっしょに居たりしてたんや。感情の起伏とかについては、ちょぉならわかるわ。
まずは、場所を裏庭に変えた。
「……すみません。食堂でもよかったかもしれませんが」
「いやいや、内容が内容や。誰かが聞いたらやばいで」
錬金術師でもない、料理人のイツキはんに効能付与のスキルがあるだなんて……阿呆どもが知ったら一大事やわ。
「そうですね。レクサスさんやワルシュさんなら、大丈夫なのを理解したつもりでいたので」
「信頼されとるのは光栄や」
「レクサスさんは、私のマブダチでしょう?」
「当然や」
サフィアを繋いでくれた縁もあるが、男女の垣根を超えて友人でいられるのは貴重や。気兼ねなく会話が出来るし、変な気遣いが必要ない。
こん人には副隊長がおるし、その子どもまで生まれたんや。幸せ絶好調やのに……なんで、神はこん人にスキルをお与えされたんやろなあ?
「バクス先生には、魔力の質が以前と変わっていると言われました」
イツキはんは、軽くため息を吐いて話し出した。
内容は人によっちゃ喜ぶもんやけど、こん人にはあんまり良くないもんやろなあ?
「どんな感じなん?」
「魔法を扱うより、料理で自然に流れていく感じらしいです。簡単にブルードベリーのサラダを作っただけでわかりました」
「っちゅーことは、以前のサラダも?」
「可能性としては。いつから出来るようになったかは、私もわかりません」
自分のせいで、周りに迷惑がかかるかもしれん。
この顔は、そんな気持ちの表れやな?
今もまたため息吐いたし。
「ひとりで抱え込む必要はないで? 副隊長以外にも、自分らも居る」
「……ありがとうございます」
喜ぶより、周りを気遣う気持ちが強いんは。
イツキはんのええとこやけど……自分をあんまり大事にせぇへんとこもあるから、ちょぉ良くないやんな。
「せや! 自分、昼間は暇もろたんや。久しぶりに城まわらん?」
「……いいんでしょうか?」
「もちろんや。イツキはんは気にし過ぎや。以前の場所が、二度と受け入れられんとこちゃうで?」
むしろ、イツキはんに会いたい連中だらけで喜ばれるはずや。
とりあえず、まずは中央厨房に行くことにした。
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