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番外編②

第60話 食材の組み合わせ次第②

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「イツキをますます尊敬するよ……」

「慣れないことをすると疲れますしね」


 育児は大変だと日本でもよくあるが、母親になった今はその苦労があちらより倍増しているのは仕方がない。

 便利グッズも娯楽もない中で、我が子と向き合って日々の生活を過ごしていくのだから。はじめは、私自身が慣れない育児で気疲れしたりもしたが、メイドさんや執事さんだけでなく、アーネストさんのフォローもあってアルベルトはすくすくと育っている。

 その日々を愛しく思わないわけがない。娯楽のようなものは、こちらに来て新しく覚えた手芸があるおかけでアルベルトがお昼寝している間は熱中してしまう。

 料理以外の趣味を持てたことは嬉しいし、形に残るからアルベルトだけでなくアーネストさんにも贈ることが出来る。今はこっそり、アーネストさんにマフラーみたいなものを編んでいるところだ。こちらには外套はあるが、マフラーの習慣がないので、似たものを試行錯誤で編んでいる。

 さておき、試作したブルードベリーのデザートサラダだ。

 アーネストさんはテーブルに置かれたサラダを見ると、軽く目を丸くされた。


「可愛らしい見た目だな?」

「白いのは、塩気を控えめにしたカッテージチーズです」

「これがチーズ?」

「生で食べられる、クリームチーズよりは固形のに近いチーズですね」

「エールが欲しくなる味だぞ」

「! それは気になりますね」


 ワルシュさんの言葉に、さらに興味を持ってくださったアーネストさんはすぐに召し上がってくれた。

 いちごのサラダ、と言う異色の料理でも食事として成立するものなら気にならないわけがないと言う感じに。

 葉物を咀嚼する音が部屋に響く中、アーネストさんは味わって口を動かしていく。

 ごくんと飲み込めば、彼の表情はとても輝かしいものとなった。これは一目瞭然といえよう。


「いかがです?」

「甘さは控えめで……マスタードの辛さと合わさるとこうなるんだな! チーズのまろやかさと一緒だとさらに食べたくなる!! これはたしかに、義父上がおっしゃる通りエールなどの酒が欲しい!!」

「だろ?」

「ふふ。とりあえず成功ですね」


 食事のレパートリーのひとつに加えていいくらい、まずひとつ決まってよかった。

 もちろん、先日リュシアーノ様と作ったいちごのクッキーは学園に伝達済みではあるが、まだまだレシピの開拓は必要。

 次はどんなレシピでこの青いいちごをアレンジしていこうか? ジャムやピューレにして、パンのお供にするのもいいかもしれないが……色が色だから、普通の食卓だと映えないかな?


「しっかし、改めて視るが……このサラダだけでも薬効はあるな」


 考え込んでいたら、ワルシュさんが鑑定をしていたのか真剣に残ったサラダを見ていたのだ。


「どんな薬効ですか?」

「風邪予防。関節痛完治……とかだな? ガキから大人まで重宝しそうだ」

「すごいですね……」

「イツキと義父上だからこそでしょう」

「ほとんどイツキの手柄だ。俺はちぃっと手伝っただけだ」

「たまたまですよ」


 けど、異世界にとって日本のバリエーション豊かなレシピは画期的だから……私が食べたい理由もちょっとあるが、もっともっと作っていこう。

 その後も、デザートも含めて色々試作したが、どれもが薬効を持つ料理になったため、学園の先生に大変喜ばれることとなった。
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