730 / 784
番外編②
第44話『黄金色のフルーツタルト』②
しおりを挟む
休憩が終わったら、リュシアーノ様にはいちごをカットしていただく。私は艶出しに必要なナパージュを作っていく。
通常だとゼラチンを使うが、寒天粉でも作るのは可能なので鍋に材料を入れる。沸騰してきたら火を止めて、レモン汁とリキュールを大さじ1ずつ加えれば、あとは魔法で冷やすだけ。
トロトロになったら、これでナパージュは完成だ。
「イツキ。こっちも出来たわ」
リュシアーノ様の方も、まな板に乗せてあったいちごをきれいにカットしてくださっていた。土台の生地もうまく冷めたし、あとはいちごを配置よく並べてナパージュでお化粧していく。
ナパージュを塗っていくと、金色の果物がさらに金塊のように輝いていた。これは凄い事だとリュシアーノ様と笑い合った。
「素晴らしいですね」
「大発見じゃないかしら? 金色の果物がさらに輝くだなんて」
「ええ、そうですね」
もう一度お茶にして食べたいところだったが、時間が夕方に近くなっていたためにリュシアーノ様にはワンホールの半分を亜空間収納で持ち帰っていただくことになり。
私は、アーネストさんと食べるべく普通に冷蔵庫に入れて保管しておくことにした。異世界でも共通する道具があるのは本当にありがたいことだ。
「……凄いな。さらに輝いているように見える」
アーネストさんが帰宅されてから、食後のデザートにとタルトをカットして出してみると……やはり凄い出来なのか顔を綻ばせてくださった。
「リュシアーノ様と作ってみたんです」
「殿下と? 料理の腕が上がっておられるな」
「学園でも簡単なお菓子作りから実習があるそうですよ」
「ああ、レクサスがサフィア殿から聞いていたと言ってたな。俺たちの時代にはなかったが、君がきっかけらしい」
「私ですか?」
何かしたのかと首を傾げると、アーネストさんは何故か苦笑いされた。
「君は本当に自分の価値を過大評価しないんだな。そこも愛らしいが」
「えっと……ありがとうございます?」
「アレルギーがきっかけとはいえ、様々なレシピを披露しているだろう? その素晴らしさに国民でも市井だけでなく、貴族も感心を示した。この功績は君が生み出したんだ。だから、あの時に勲章を陛下からお与えされたんだ」
「そ、そうなんですね」
自覚はあるつもりではいたが、まだまだだった。
異世界からの渡航者ということで、知識などのチートとかは理解していたのに……影響力は計り知れないでいた。
アレルギーの重要さだけでなく、食文化にも大きく影響を与えてしまっていたのだ。難しい料理はほとんど伝えていないが、それでもこちらの世界では画期的だったのだろう。
タルトのナパージュですら、リュシアーノ様があんなにも驚いていたのだから……自重しようにももう遅いが。
「とりあえず、食べていいか? イツキはまだか?」
「あ、はい。まだです」
「じゃあ、食べよう」
不安が色々浮かんではきたが、この人の前だと泡のように浮かんでも溶けていくようだ。
柊司を残してしまった不安もまた浮かんだが、息子も生まれた今は、もう日本には戻れない。
頷いた私は席に着き、ほぼ同時に金色のいちごタルトを口に運んだ。サクサク、ほろほろに崩れていく土台もだが……中央のカスタードクリームの上に贅沢と言わんばかりに載せた、たっぷりの金色のいちご。そのジューシーながらも、さっぱりとした甘さが合わさって!
「「美味しい」」
そして、同じタイミングに声を上げた時の顔も……アーネストさんの表情から、私も笑顔なのがわかった。
不安はまだまだ多いが、やっぱりこの人とアルベルト。他の皆さんがいらっしゃることで、私は幸せだ。
だから、夢でもいいからこの時間が続いて欲しい。
通常だとゼラチンを使うが、寒天粉でも作るのは可能なので鍋に材料を入れる。沸騰してきたら火を止めて、レモン汁とリキュールを大さじ1ずつ加えれば、あとは魔法で冷やすだけ。
トロトロになったら、これでナパージュは完成だ。
「イツキ。こっちも出来たわ」
リュシアーノ様の方も、まな板に乗せてあったいちごをきれいにカットしてくださっていた。土台の生地もうまく冷めたし、あとはいちごを配置よく並べてナパージュでお化粧していく。
ナパージュを塗っていくと、金色の果物がさらに金塊のように輝いていた。これは凄い事だとリュシアーノ様と笑い合った。
「素晴らしいですね」
「大発見じゃないかしら? 金色の果物がさらに輝くだなんて」
「ええ、そうですね」
もう一度お茶にして食べたいところだったが、時間が夕方に近くなっていたためにリュシアーノ様にはワンホールの半分を亜空間収納で持ち帰っていただくことになり。
私は、アーネストさんと食べるべく普通に冷蔵庫に入れて保管しておくことにした。異世界でも共通する道具があるのは本当にありがたいことだ。
「……凄いな。さらに輝いているように見える」
アーネストさんが帰宅されてから、食後のデザートにとタルトをカットして出してみると……やはり凄い出来なのか顔を綻ばせてくださった。
「リュシアーノ様と作ってみたんです」
「殿下と? 料理の腕が上がっておられるな」
「学園でも簡単なお菓子作りから実習があるそうですよ」
「ああ、レクサスがサフィア殿から聞いていたと言ってたな。俺たちの時代にはなかったが、君がきっかけらしい」
「私ですか?」
何かしたのかと首を傾げると、アーネストさんは何故か苦笑いされた。
「君は本当に自分の価値を過大評価しないんだな。そこも愛らしいが」
「えっと……ありがとうございます?」
「アレルギーがきっかけとはいえ、様々なレシピを披露しているだろう? その素晴らしさに国民でも市井だけでなく、貴族も感心を示した。この功績は君が生み出したんだ。だから、あの時に勲章を陛下からお与えされたんだ」
「そ、そうなんですね」
自覚はあるつもりではいたが、まだまだだった。
異世界からの渡航者ということで、知識などのチートとかは理解していたのに……影響力は計り知れないでいた。
アレルギーの重要さだけでなく、食文化にも大きく影響を与えてしまっていたのだ。難しい料理はほとんど伝えていないが、それでもこちらの世界では画期的だったのだろう。
タルトのナパージュですら、リュシアーノ様があんなにも驚いていたのだから……自重しようにももう遅いが。
「とりあえず、食べていいか? イツキはまだか?」
「あ、はい。まだです」
「じゃあ、食べよう」
不安が色々浮かんではきたが、この人の前だと泡のように浮かんでも溶けていくようだ。
柊司を残してしまった不安もまた浮かんだが、息子も生まれた今は、もう日本には戻れない。
頷いた私は席に着き、ほぼ同時に金色のいちごタルトを口に運んだ。サクサク、ほろほろに崩れていく土台もだが……中央のカスタードクリームの上に贅沢と言わんばかりに載せた、たっぷりの金色のいちご。そのジューシーながらも、さっぱりとした甘さが合わさって!
「「美味しい」」
そして、同じタイミングに声を上げた時の顔も……アーネストさんの表情から、私も笑顔なのがわかった。
不安はまだまだ多いが、やっぱりこの人とアルベルト。他の皆さんがいらっしゃることで、私は幸せだ。
だから、夢でもいいからこの時間が続いて欲しい。
490
お気に入りに追加
5,493
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。