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番外編②
第38話 稽古しながら
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「ほーん。アルベルトがそろそろ一歳なんか」
ある日、副隊長と部隊長の打ち合い稽古の時にレクサスが興味深そうに聞いてきた。本気ではないが、油断していたら一本を取られるので気を抜いてはいけない。元冒険者であるこいつは、魔物討伐の経験は豊富なので変速的な攻撃は俺より上だ。
それでも俺は、瞬足が得意技だからギリギリ勝ててはいる。兄上らに幼い頃から散々鍛えられていたからな。貴族といえど、いつ何時戦争が起こった時に……幼くとも武の心得なしにのうのうと生きていてはいかん。
これはハインツベルト家だけでなく、大概の貴族の家訓にされているためイージアス国では珍しくもない。
さておき、アルベルトとはまだ数回しか会わせていないがイツキの息子ということもあり、レクサスはかなり気に入っているようだ。
「ああ。宴は身内だけでやるが、また顔を出してくれ」
「もち。せやったら、なんか祝いの品だけでも贈らせてもらうわ」
「わかった。イツキも喜ぶだろう」
「救世主の息子の祝いなあ。国に広まったら、下手するとジェラルド殿下よりも押し寄せてきそうやんな」
「……ないとは言い切れん」
殿下の二歳の生誕記念祭もそれなりに国民は城下街で騒いだらしいが、イツキの人気は別格だ。
アレルギーの発見もだが、生産ギルド経由で伝わっている美味い料理のレシピは今やなくてはならない物となっている。
イツキが異世界からの渡航者なのは極秘だが、美味い料理は是非共有したいと言うので、ワルシュ義父上と協力して公開しているのだ。
おかげで、ジェイシリアを含める主要の街ではそのレシピをもとに作った料理が市場などで売り出されている。
だが、やはり本物には敵わない。
俺と屋敷の者は、イツキの手料理を直に味わえるからな。イツキもアルベルトの育児をしながらも、気晴らしがしたいと私室横に厨房を作らせてほしいと願ったくらいだ。
普通の貴族の女主人であればあり得んが、イツキは普通の女性ではなく料理人。屋敷の料理長に指示するだけでは、物足りないのも無理はないのだ。
そんな彼女を慕う人間は俺以外にも、老若男女問わず多い。華美な容姿ではないが、慈愛の象徴とも言える俺の妻は最高にいい女だからな。心意気に惹かれる人間がいるのは無理もない。
そのおかげで、縁が繋がった人間はレクサスを含めかなりいる。
「んで? 小耳に挟んだんやけど。ジェラルド殿下の呼び出しでアルベルトがダチ認定されたん?」
「サフィア殿に聞いたのか?」
「おん。リュシアーノ殿下が言っとったって」
レクサスの妻もイツキのおかげで縁が結ばれた王女殿下の第一メイドだからな。今は殿下と学園に行かれているが、この間の帰還の時にでも聞いたのだろう。
「俺も直接は見ていないが、かなり気に入られたらしい。近しい年代の同性の友として、おそらく一番だ」
「ええんとちゃう? イツキはんの子どもやったら、殿下と幼馴染みになっても」
「畏れ多いことだが、イツキだと気にしないだろうな」
「せやな」
そのアルベルトの生誕への宴に必要なメニュー……メインは決まったが、飲み物で果物が多く必要とイツキは言っていたが。
採取もいいだろうが、ここは義父上にもお伺いしよう。せっかくの孫の祝いに協力してくれるだろうからな。
ある日、副隊長と部隊長の打ち合い稽古の時にレクサスが興味深そうに聞いてきた。本気ではないが、油断していたら一本を取られるので気を抜いてはいけない。元冒険者であるこいつは、魔物討伐の経験は豊富なので変速的な攻撃は俺より上だ。
それでも俺は、瞬足が得意技だからギリギリ勝ててはいる。兄上らに幼い頃から散々鍛えられていたからな。貴族といえど、いつ何時戦争が起こった時に……幼くとも武の心得なしにのうのうと生きていてはいかん。
これはハインツベルト家だけでなく、大概の貴族の家訓にされているためイージアス国では珍しくもない。
さておき、アルベルトとはまだ数回しか会わせていないがイツキの息子ということもあり、レクサスはかなり気に入っているようだ。
「ああ。宴は身内だけでやるが、また顔を出してくれ」
「もち。せやったら、なんか祝いの品だけでも贈らせてもらうわ」
「わかった。イツキも喜ぶだろう」
「救世主の息子の祝いなあ。国に広まったら、下手するとジェラルド殿下よりも押し寄せてきそうやんな」
「……ないとは言い切れん」
殿下の二歳の生誕記念祭もそれなりに国民は城下街で騒いだらしいが、イツキの人気は別格だ。
アレルギーの発見もだが、生産ギルド経由で伝わっている美味い料理のレシピは今やなくてはならない物となっている。
イツキが異世界からの渡航者なのは極秘だが、美味い料理は是非共有したいと言うので、ワルシュ義父上と協力して公開しているのだ。
おかげで、ジェイシリアを含める主要の街ではそのレシピをもとに作った料理が市場などで売り出されている。
だが、やはり本物には敵わない。
俺と屋敷の者は、イツキの手料理を直に味わえるからな。イツキもアルベルトの育児をしながらも、気晴らしがしたいと私室横に厨房を作らせてほしいと願ったくらいだ。
普通の貴族の女主人であればあり得んが、イツキは普通の女性ではなく料理人。屋敷の料理長に指示するだけでは、物足りないのも無理はないのだ。
そんな彼女を慕う人間は俺以外にも、老若男女問わず多い。華美な容姿ではないが、慈愛の象徴とも言える俺の妻は最高にいい女だからな。心意気に惹かれる人間がいるのは無理もない。
そのおかげで、縁が繋がった人間はレクサスを含めかなりいる。
「んで? 小耳に挟んだんやけど。ジェラルド殿下の呼び出しでアルベルトがダチ認定されたん?」
「サフィア殿に聞いたのか?」
「おん。リュシアーノ殿下が言っとったって」
レクサスの妻もイツキのおかげで縁が結ばれた王女殿下の第一メイドだからな。今は殿下と学園に行かれているが、この間の帰還の時にでも聞いたのだろう。
「俺も直接は見ていないが、かなり気に入られたらしい。近しい年代の同性の友として、おそらく一番だ」
「ええんとちゃう? イツキはんの子どもやったら、殿下と幼馴染みになっても」
「畏れ多いことだが、イツキだと気にしないだろうな」
「せやな」
そのアルベルトの生誕への宴に必要なメニュー……メインは決まったが、飲み物で果物が多く必要とイツキは言っていたが。
採取もいいだろうが、ここは義父上にもお伺いしよう。せっかくの孫の祝いに協力してくれるだろうからな。
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