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番外編②
第31話『花豆で蒸しパン』②
しおりを挟む「これはチョコレートですか?」
「いいえ、コーヒーです」
「! コーヒーをお菓子に?」
飲むだけがメインのコーヒーを料理に使うとは、やはりイツキちゃんの発想力には驚きます。他から学んだにしても、東方大陸のどの地方なのでしょう? また旅に出る時に注意して向かいましょう。
「甘味が強くなるので、そこまで苦くは感じないと思います」
「その言い方ですと、他にもコーヒーでお菓子が作れるのですか?」
「はい。寒天やゼリーというものもありますし、もち米の類にも。飲み方も色々アレンジ出来ますよ」
「興味深いですね」
とりあえず、火にかけるために蒸し器に入れ……しばらく待ち、火の通り具合を確かめてから魔法で冷やす。
型から取り出したら、適度にカットしてみますと面白い模様のように見えました。
「これで出来上がりです」
「可愛らしい見た目ですね。お茶は何がいいでしょうか?」
「そうですね。渋めのお茶もいいですけど、甘めなので……あったかいミルクにしてみませんか?」
「あえてミルクを?」
「むせやすいので、ピッタリだと思います」
「ほう?」
ミルクでも甘いのに、中和するためにあえて……やはり面白い発想をするのですね。
しかし、ミルクは本当に甘さを一切つけず、小鍋で温めたものをカップに入れるだけでした。
「うーうー」
厨房から出ますと、アルベルトくんは起きてしまったのかイツキちゃんを呼んでいました。僕に子育ての経験はほとんどないので何と無くそう思ったのですが、イツキちゃんも察したのかすぐに彼の元に行き……抱っこであやしていきます。
城で初めて会った時は凛々しくも可愛らしい女性だと思いましたが、本当に母親の顔になったのだと改めて実感します。
アーネストくんにはほとんど会ったことはありませんが、この女性の心を射止め、幸せな家庭を築けているのですから……きちんとお礼を言わねばいけませんね。弟子の弟子、孫弟子が今とても幸せなのですから。
「イツキ、こちらに居ると聞いたが」
と考えていると、それらしい若者が部屋に入ってきました。
目がアルベルトくんそっくりの、とても凛々しい男性ですね。この子がアーネストくんなのでしょう。お互い初対面なので一瞬目を合わせましたが、すぐに自己紹介をし合いましたよ。
「アーネストと申します」
「コルトです。ワルシュくんの師で先代の料理長ですが」
「! お噂はかねがね。イツキを訊ねて来られたのですか?」
「はい。お子さんが生まれた噂も知らず、遅くなり申し訳ないです」
「いえ! それでも来ていただきありがとうございます。……厨房で何か? 甘い匂いがするのですが」
「お土産を使って、彼女と甘いものを作っていたんです」
気持ちの良い青年ですね。イツキちゃんの夫に、相応しい男性だとよくわかります。
そこから、ミルクをもうひとつ作って三人でお茶会をすることとなりました。
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