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番外編②

第9話 魔物の遠征へ

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「……お弁当ですか?」


 魔物の異常繁殖……スタンビートへの可能性が出てきたとの報告があり、本日は冒険者たちの応援も兼ねて僕たち近衛騎士団も一部の部隊を率いて向かうのですが。

 部下であり、僕の右腕とも言える副隊長のアーネストから渡されたのです。彼の奥方である、僕には友のイツキから騎士団へのお弁当を差し入れにと。それは実に嬉しいことです!


「はい。レクサスと獲った鹿肉が大量にあるので……部隊分ですが、是非と」

「嬉しいですね。それは是非、遠征先で食べましょう」


 お返しは、魔物の中でも食肉になりそうな物をアーネストの亜空間収納に入れてばいいでしょう。そうするとまた差し入れがあるかもしれませんが、何もお礼をしないよりはいいはず。

 アーネストとしては少し複雑でしょうが……一児の父になっても相変わらずイツキにはベタ惚れですね。僕が言えた立場ではありませんが。


(リュシアーノ様は、まだまだ学園生活を送らねばならないですから)


 僕と一緒になるのは当分先です。それを覚悟して婚約者になったのですから……そこは我慢するしかありません。

 ひとまず、今日から予想では三日かけてスタンビートの発生地に向かう予定です。城の護りは中堅の部隊に任せ、精鋭部隊は僕とアーネストを含める強者揃いを。

 途中までは転移方陣を使って時間短縮をし、その先は用意してある馬で駆けていきます。


「隊長~、冒険者らの集まりが見えたんでー」


 レクサスが先に様子を見てきてくれていたので、僕やアーネストらも急ぎます。状況把握をするのに時間を遅らせてはいけませんからね。

 レクサスが先導してくれた場所には、たしかにギルドなどで編成された冒険者の影がありました。レクサスが先に馬から降りると、『お!?』と少し驚いた声をあげていましたが。


「久しぶりやん、ロット!」

「レクサスか! マジで騎士様になりやがって!」


 少し目を凝らして見れば、レクサスと拳を合わせていたのは頬の大きな傷痕が特徴的な浅黒い肌に男でした。

 僕はその名前に聞き覚えがあるような気がして、記憶を引き出していると……。


「『千撃のロット』……レクサスとは知己の冒険者でしたね。たしか、ランクは現在AAだったような」

「ああ、一撃が何重にも重なった威力を出すと言う」


 アーネストも情報通ですからね。遅れた僕は最近収集を怠っていたので、帰ったら情報更新するように気をつけましょうか。


「んで? 近衛騎士団も応援に来てくれたようだが……そこの綺麗な兄ちゃんが、『麗しのネルヴィス』さんか?」

「……ご存知でしたか。光栄ですね」

「隊長みくびったらあかんで? 自分がなかなか一本取れへん相手や」

「は? マジか?」

「横の副隊長は『閃光のアーネスト』はんや」

「おいおい。精鋭揃いかよ」


 僕らの異名を知る限り、突き返さない馬鹿ではないようですね。少し、実力者として興味は持ちました。
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