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番外編②
第4話『驚愕当然の、鹿肉のタルタルステーキ』②
しおりを挟む「うんうん。鹿肉特有の癖はあるけど、鮮度や血抜きのおかげでそこまで気にならない。……これなら卵を乗せても」
「た……卵ぉ?? イツキはん、まさか卵も??」
「はい、生です」
「「「えぇえ!?」」」
卵を生で食す風習が、イツキのいた異世界では普通なのは知っていたが……生肉に、卵を?? それは食べられるものなのだろうか??
俺達は呆気に取られていたが、イツキは気にせずに調理を進めていた。
「白身は抜いて、卵黄のみ。味付けは焼き肉のタレをイメージして……はい! 出来ました!」
そうして出来上がった、生肉の料理なのだが……とても美しかった。円柱にまとまった、刻んだ生肉は赤黒いが艶々した光沢が美しく。中央には本当に生の卵が鎮座していたが、こちらも光沢があって非常に美しい。色の対比のバランスも完璧だ。
だが、これを『食べる』と言うことは物凄く勇気がいる。イツキが味見していても……これを食べて腹を壊すこともだが、口に合うかどうかも想像が出来ない。
「……これが、ステーキ?」
「鮮度の良いお肉だから出来る料理です。味が濃いめなので、米といっしょがいいですね」
「……合うん?」
「めちゃくちゃ合います」
「わかった。……俺は食べよう」
フォークと米を用意してもらい……まずは、生肉の部分だけほんの少しすくってみた。光沢は相変わらず美しいが、これは生の肉。少し前まで生きていたのを俺とレクサスが仕留めた鹿だ。
しかし、今回はイツキのために調達したもの……夫たるもの、妻の手料理を拒否してはいかん。いざ、と口の中に入れてみると……ねっとりとした舌触りはあったが臭みはほとんどなく、味付けに使ったソースも合わさって!!
(……美味い!?)
以前に魚のサシミとやらを食べたことがあるからか、食感などは全然違うが……味わい深く、食べやすかった。しょっぱいがわずかに甘いのと辛いのが合わさって……これは、イツキの言う通りに米が欲しくなる味だ!!
すでに皿に用意していたそれを食べれば、米特有の甘さが濃い味付けでいっぱいになった口の中を洗っていくようだ。これは……卵を合わせたらどうなるか。
「……副隊長? 平気なん?」
次を試す前に、レクサスが不安げに聞いてきたので答えることにした。
「ああ、美味い。魚とも違うが、肉も生で食べられるし味付けのおかげで臭みがほとんどない」
「ほーん? んじゃ、自分も」
俺の答えに、レクサスもフォークを手に取ってすぐに口に入れた。そしてすぐに『美味!?』と声を上げたのだ。
「ふふ。アーネストさんも試そうとした卵を絡めたものも是非」
「ほな!」
「いただこう」
黄身を潰して肉と絡め、さらにねっとりしたそれを食べれば……辛みが薄まり、まろやかな味わいに変わった。これもさらに米が欲しくなり、俺とレクサスはかき込む勢いで食べ進めていく!
「お気に召したようで何よりです」
いかん、イツキへの食材なのに俺達が満足してしまった!?
イツキ自身は気にしていないようだが……まだまだ肉があるので、今度は火を通した料理をたくさん作りたいと嬉しそうにしていた。
なら、レクサスと狩った甲斐があったなと二人で拳を合わせた。
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