王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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番外編

第232話『止まらないコーヒー大福』

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 触り心地は作りたてと全く同じ。

 ふわっとした絹の生地のようで、滑って落ちてしまいそうなのを両手で抱えて……口へ運んでいく。

 少し平たいが、ピーチモチと同じような大きさ。色合いも材料も全然違うのに、不思議。むにっとした感触も楽しみながら噛めば、チョコモチよりも柔らかいモチの食感がまず歯に伝わり……ほろ苦いが甘い味わいに、舌が喜びを覚えたわ。

 だけど、二口目にかじれば、さらに幸福が体を駆け巡った。


「……美味しいわ」


 自分で頑張って作ったクリームの優しい甘さとふわふわもだけど、この前とは違うチョコモチの甘さと食感も相まって……とてもとても美味しい。

 やっぱり、イツキの手がけるレシピは素晴らしいわ。食材の使い方次第でこんなにも美味しい料理を作ってしまうんだもの。

 これにひと口、と先程いただいたお茶を口に含めば……また違った味わいに驚いてしまった。


「……まるで、洗われたようね。さっぱりしたわ」


 濃い味で満たされていた口の中がリフレッシュされたよう。こんな感覚……初めてだわ。


「ハーブティーの類だとそう言うものが多いですからね。飲み過ぎはいけませんが、お茶は薬にもなると言われていますし」

「……お茶が薬?」

「少なくとも、私の故郷ではそう言われていましたが。大昔ではお砂糖もそうだったと」

「えぇえ?」


 そんな凄い伝承……聞いたことがないけれど。西方大陸にはたまたま伝わっていなかったのか。イツキの出身である東方大陸にはどれほどその知識が広まっているのか。

 本当に……不思議で謎だわ。イツキから聞く限り、不安はあまりないけれど。


「とは言え、アレルギーのこともあるので……いきなり発症することもありますから、気をつけなくては」

「そうね。……そうだったわ」


 イツキが見つけてくれた、この国だけでなく世界に広まっていたとされる……まだまだ未知な部分の多い病。

 先日いただいたパイナップルも可能性があるとバクス医師が言っていたが、それはまだ発症者は出ていない。このモチも、もち米ライシや粉の類で症状が出てもおかしくないが……私は、なりたくないわ。

 大好きなお菓子を二度と食べられ無くなるのよ? そんな苦行……耐えられるわけがない! 命に関わると言われても……美味し過ぎるんだもの!! けど、いつ何時起きるかわからない未知の病には予防策がほとんどないのは……辛いわ。


(だから、今はしっかり堪能するの!!)


 イツキの前だけど、一個を食べ終わったら……すぐに次を確保してまたお茶を飲んで口の中をスッキリさせるのだった。
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