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番外編
第222話 医師の診察
しおりを挟む「……でしたら、バクス先生をお呼びしましょうか?」
スイードがとてもショックを受けていると、イツキ様はあの高名なバクス医師を呼んでくださると……言ってくれた。
スイードのような者でも、あの医師の診察を受けれるのか……びっくりしていると、イツキ様は『大丈夫です』と微笑んでいた。
「私の主治医でもあるんです。頼めば、きっと診察してくださいますよ」
「……いい、んでしょうか」
「はい。すぐに呼びましょう」
通達を使用人に城へ……届けてもらってから、パイナップルのかんてんよせというものをいただきながら、待っていたが。
甘酸っぱくて美味しいけど……まだ不安が抜けないから、すごく美味しいはずなのに……全部食べられなかった。
そうして、しばらくしたら……老齢の医師が到着された。
遠目しか見たことがないけど……本当にバクス医師だった。
「おやおや、イツキくんに呼ばれてきたのじゃが……」
「先生。一大事です。この子の運命を左右する一大事ですよ」
「い、イツキ様!?」
「ほぉ? 見たところ……少し貧血気味。しかしながら受け答えは出来ておるから、健康面ではないようじゃな?」
「!?」
ほんの少し、スイードを見ただけでそれだけの情報を把握された……。やはり、このご老人は……高名なバクス医師に間違いない。
だから……スイードは言うことにした。きちんと。
「……その。す……わ、私」
「うむ。察するに、懐妊の兆しがあったのかい?」
「!? え……?」
「いやいや、イツキくんが誇張してまで言うのじゃから……顔色を見て判断しただけじゃ」
「お相手は、ゲイリッシュさんなんです」
「……あの鼻垂れ坊主か。そう言えば結婚したと聞いておったの?」
「は、鼻垂れ?」
「料理長と冒険者だった頃はそれはもうヤンチャだったからのお? まさか、こんなにも若いお嬢さんと結婚したとは」
「で、先生。スイードさんは暗部に所属してるのですが……仕事を続けたいけど、妊娠されたので非常に悩んでいます」
「ふむ。堕胎希望のようでもないしの? しかし……懐妊は自分だけでなく、旦那との問題でもあるのじゃ。ゲイリッシュともよく話し合いなさい。一人で自己完結は良くないのじゃ」
「……はい」
たしかに、親になるのは……スイードだけじゃない。旦那様も同じなのだ。
イツキ様にも言われたけど……バクス医師に改めて言われると、もっと実感が湧いた。この身体は自分だけの道具ではないのだと。
女の喜びはまだわからないが……きちんと、旦那様にも言おうと決めた。
「うむ。で、ついでじゃからイツキくんの健康診断もしよう。ご子息は良く寝ているのかな?」
「はい。母乳もたっぷり飲んで、今はぐっすりと」
「良いことじゃ」
イツキ様は……母親となったことで、とても喜びを得ているようだが。スイード、も同じになれるだろうか……?
とりあえず、豊満な胸はないので……母乳がきちんと出るか不安にはなったけれど。
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