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番外編

第211話『流行る押し寿司』①

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「らっしゃい。炙りサバの押し寿司だよー」

「うちはマス寿司だよ!」

「うちはサーモンのハラス使ってるよ!!」


 街の市場に入ったら……なんだか、『スシ』っていうのを宣伝する声が飛び交っているんだけど。

 スシって……あの『スシ』だよな?

 イツキさんがまだ城で料理番してる時に俺に教えてくれた……リーゾに酢と砂糖を混ぜて味付けしたのに、生か半生の魚や肉を合わせた……料理。

 実は陛下方が気に入られて、時々料理調達が振る舞われているって料理が……城下街で流行ってる? なんでだろう??


「……奥様が、生産ギルドにレシピを提供されたと聞いています」


 俺がわかんなでいると、腕にしっかりつかまっていたエミリが答えをくれた。


「……イツキさんが?」

「は、はい。奥様はお城にいらした時からギルドと交流があったようで……今も、ギルドマスターに頼まれているんです。お屋敷にも時々来られています」

「へー……」


 ギルドマスターがわざわざってことは……結構な登録料を交渉に持ちかけられているってことかな? 副隊長の稼ぎがあるとは言え、イツキさんも何かしら資金を得られるってことは……資産家にもなれるんじゃ??

 世界の救世主であることで陛下から勲章もいただいているし、殿下とはご友人。そして、現在は近衛騎士団副隊長の細君。

 考えたら、王族に並ぶくらい雲の上の存在になるけど……ああいう人物だと俺は知っているから、身近な存在なんだよね。頭は上がらないが。

 とりあえず、そのイツキさんがリーゾの料理を色々広めて今に至るってわけか? 面白い!


「……エリオさんは、スシは作れるんですか?」

「うーん。まだ作ったことないな」


 ここで彼氏なら『出来る!』って言いたいとこだけど、料理人としては意固地になる必要はないので……きちんと出来ないことを告げた。下手に格好つけても、エミリを困らせてもいけないからさ?


「そうなんですね。お城だと普通の料理だと思っていました」

「お屋敷では食べれるの?」

「はい! 奥様が料理長にお教えされて……まだ数回ですが、いただきました! 私、サーモンのハラスが好きです!!」

「じゃ、せっかくだしそれ買おう。他は……俺はサバ気になるから、買っていい?」

「はい!」


 イツキさんか副隊長が食べたいから作っているんだろうなあ? 城では、俺はまだ片手で数える程度しか食べてないけど……サバはまだない。

 屋台に買いに行けば、表面に焦げ目があるけど半生の四角い形の食べ物だった。手で掴んで食べるものらしいのか、木のフォークとかは付いてない。代わりに、小さな手ぬぐいが付いてきたんだ。
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