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番外編

第209話 デートに向けて

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 色々あったけど、俺に可愛い恋人が出来た。

 エミリって言う、素朴だけど笑顔が可愛い子。俺より……六つ下だけど、イツキさんと副隊長の屋敷でメイドをしているんだ。出会ったのは、片手で数えられるくらいだけど……向こうが一目惚れで、俺は最初曖昧な返事をしたんだ。

 友達からでいいかって。

 ほんと、自分でも馬鹿な返事したと思うよ。可愛くていい子だなと思ってはいたのに、保守的な返事したことについては。


(だけど、今は違う……)


 俺もちゃんと気持ちを自覚して、ちゃんとエミリに本当の気持ちを伝えた。俺も大好きだって。友達とかじゃなく、本気で。

 イツキさんとかに背中を押されたこともあって、伝えられたんだ。だから、今では職場の距離もお互い遠いから、文通でのやり取りがほとんどだけど。

 慣れない手紙のやり取りは、最初お互い固い文章だったのが次第に変わっていくのが嬉しいし楽しかった。

 休みは向こうは作りやすくても、俺がなかなかうまく合わないことが多い。見習い卒業でも、宮廷料理人だし……普段はイツキさんの後任であるまかない料理番だから。

 だけど、文通を始めてひと月くらいで……とうとう休みが合った!!

 なので、ジェイシリアにエミリとデートに行くことに決めたんだ!! 最初は城においでよと伝えたら、一回来た時畏れ多くて緊張し過ぎたから遠慮したいって言われた。

 俺は慣れちゃってるけど……まあ、普通の女の子だとそうかもな。

 だったら、とびっきりカッコよく着飾ってエスコートしようと決めた!!

 だから……ミュラーにちょっと相談に乗ってもらうのに、まかないの合間に作ったスノーボールクッキーを持って、食堂で話し合うことにした。


「んー、初デートね」

「服のセンスだと、君の方がある気がしてさ」

「そうかな? まあ、僕ら貴族じゃないし……かしこまる場に行かないから?」

「君はいずれ婿入りするのかい?」

「ううん。頑張って騎士爵には行くようにするけど、アイシスは無理しないでって言ってくれるから」

「愛されてるねぇ?」

「……へへ」


 見習い卒業したミュラーは若手のメイドとかの憧れの的だったけど、アイシスさんと結ばれたことで脱落者がかなりいたとわかったからなあ。

 こんな貴重な照れ顔……アイシスさんが見たらさぞ喜ぶだろう。あの人結構素直なとこが主張激しいし。


「んー……まあ、一張羅ほどじゃなくても整える程度でいいかな?」

「じゃないかな? エミリさんも服とかあまり高価なものないだろうし」

「お互い、庶民の出だからな……」


 身分差は気にしてないが、歳の差がちょっとあるから……服のセンスで悩んでいたんだよな。でも、ミュラーに聞いてもらえたから、普段着より少し小綺麗なものでいいかなと決めた。

 ミュラーにはクッキーを渡して、お互い仕事に戻り……城下街のどこに連れていこうか考えながら仕事してたらいつも以上に手際よく出来て、料理長から久しぶりに褒められちゃった……。
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