王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第197話 恋人との再会

　まもなく、秋を迎えます。

　ですがその前に、リュシアーノ様が学園から城に戻って来られます。少し長めの休暇がある時期なため……ですが。

　リュシアーノ様とお会い出来ます！

　まだ九歳という年頃ですが、触れ合いは陛下らにほぼ禁じられていても……お出かけ程度ならいいはずです！！

　僕はそのために相当な量の執務を終わらせ……準備期間も兼ねて二日は休みをもぎ取りました。アーネストとレクサスも協力してくれたおかげです。リュシアーノ様が学園へ帰られてからは、きちんと二人にも休みを与えるつもりですよ。レクサスに関しては、逆に昨日丸一日休みを与え、奥方であるサフィア殿とのんびり過ごしたようです。


「ネル！」


　お迎えに参上しますと、リュシアーノ様は惚れ惚れする笑顔で出迎えてくださいました。

　サフィア殿を含めるメイドが複数いるので、ここは抱きしめるのを我慢です。耐えるしかありません！


「お迎えにあがりました。ご準備は大丈夫でしょうか？」

「ええ。問題ないわ」


　リュシアーノ様は、いつのまにか亜空間収納の魔法を会得されていらっしゃいました。僕自身会得しているので大丈夫ですのに、素晴らしい方です。ご自身のためでも努力を惜しまない姿勢は素晴らしいことです！

　では、とエスコートさせていただき……今日は遠駆けで目的地へと向かうことにしました。


「体勢は大丈夫でしょうか？」

「多分ね。ネルと馬に乗るだなんて……久しぶりじゃないかしら？」

「！　覚えておいででしたか」

「んー。ぼんやりとだけど……ネルと乗ったことは覚えているわ」


　まだリュシアーノ様が五つの頃。

『ワカナ』の記憶もなく、年相応の幼子でしかなかったこの方が……僕に懐いていらしただけのあの頃。

　その頃の記憶は残っていないと思っていたのに……うれしくないわけがありません。思わず抱きしめたくなりましたが、今は馬上なので我慢しました。


「では、新たな思い出づくりに行きましょうか」

「ええ！」


　歳の差は大きくあれど、僕らの愛の障害にはなりません。

　今は世間にも認められていますから……のびのびと外へ行きましょう。まずは湖に行くことにしました。