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番外編
第170話 まかない料理番の再び
しおりを挟む「義姉上、私もお手伝いします!」
「僕も使ってください!」
「ありがとうございます。せっかくですし、お願いしますね」
人タラシというべきか、老若男女問わず、相手を絆していくんだよな。アーネストはそこに、最初男だと思っても惚れてたらしいが。
他の連中もイツキを手伝いたがっていたが、イツキが俺の代わりに『お仕事があるんじゃないですか?』と注意して引き離した。タラシはあっても、的確な指示を飛ばすのも相変わらずだ。しかも、笑顔付きじゃ誰も拒否出来んときた。
「騒がしいですね? ……って、料理長!? その赤ん坊は!!」
ジェストが帰ってくるなり、俺がアルベルトを抱えているのに顔を青ざめた。失礼だが、俺の悪人面とかを考えりゃ似合わねぇだろうなあ……。
「イツキの子どもだ。つまり、俺の孫だ」
「……その年で孫ですか」
「いいだろ、別に」
たしかに、この年代で孫はちょっと早過ぎる。いなくもないが、イツキは俺の養女だからな? 歳の差を考えても、ガキを産むのは少し適齢期じゃないが……無事に産めて良かったぜ。俺はサーシャとはまだまだだが、いずれは本当の子どもが出来るだろう。イツキの弟妹が出来たら、あいつは無条件に喜んでくれるはずだ。
「……で、イツキはどこに?」
「エリオが重要な話するんで、今いないから代わりにまかないを作ってくれんだと」
「エリオが?」
「一世一代の告白はしたが、今後を話し合いたい相手が出来たんだよ。イツキんとこのメイドがその相手だ」
「……よくわかりませんが。イツキはわざわざその子を連れて?」
「ちょっとした里帰りついでに来たらしい。んで、今はあれだ」
「……イツキも母親になったんですね」
ジェストが言う通り、まだアーネストとの結婚から一年かそこらしか経っていないのに……随分と女らしい顔立ちになっていた。横顔から見ても、あれは既に母親のそれだ。
料理の腕前も相変わらずなのか、嬢ちゃんらに指示出していても生き生きとしながら作っていく様は、まるでダンスを踊っているようだ。
イツキらしい、調理風景の再来だな?
「あ?」
途中、イツキが厚めに切った食パンの白い部分に切り込みを入れ、窯で軽く炙る意味がわからなかった。
たしか、サンドイッチと言っていたはずだが……どう言う仕上げにするつもりなんだ?
アルベルトを落とさないように抱きかかえてから、ゆっくり近づいて工程を後ろから見ることにした。
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