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番外編
第166話 ヘタレなりに
しおりを挟む「…………ごめんなさい」
「謝って済む問題ではないのですが?」
エリオに叱りまくったアイシスはご立腹のようだ。まあ、僕の説明もだけど……エリオが実際エミリちゃんに言ってしまったことは、取り消せないからね。
イツキさんもその場に居たらしいけど……イツキさんは怒っていないのかな? 逆に、エミリちゃんの相談に改めて乗ってあげてそうだけど。
「で? エリオはエミリちゃんにちゃんと言うの?」
とにかく、これははっきりしておいた方がいいと思ったんだが。
「…………もうちょい、時間ください」
「エリオ殿ぉ!?」
「なんでさ!? 答えほぼ出てるのに!!」
「だからだよ!!」
僕とアイシスの言葉に、強く被さるようにエリオが大声で言ってきた。僕らは当然びっくりして固まっちゃった……。
「……エリオ?」
「だからだよ。……ミュラーもアイシスさんと付き合うまで、色々悩んだだろ? 俺だってそうだ。自分でちゃんと時間を置いてでも、あの子を傷つけたくない。本気で好きかどうかって……もう少し確認したいんだ」
「……エリオ殿」
それでも充分じゃないかと思ったけど、エリオ自身が納得いっていないんだろう。僕もアイシスに告白するまで、自分と向き合う時間をたくさん使った。
だったら、今はエリオにとってのその時間なのかも。僕は『わかった』と言ってあげた。
「そこまで言うなら、僕も言わない。じっくり悩んで」
「ミュラー殿!」
「アイシス、僕らは行こう」
「? はい」
「あんがと」
エリオをひとりにさせるのは、実はもうひとつ考えてた事があったから。騎士団にアイシスと一緒に外出届を出してから、ある場所へ向かったんだ。
「ふふふ。実は私もちょっぴり怒っていました」
エミリちゃんの雇い主であり、僕らの大恩人のイツキさんのところだ。エミリちゃんはお洗濯の仕事が忙しいからか同席はしていない。
「やはり、義姉上もそう思われましたか!!」
「手段のひとつとしては仕方ないですが。けど、ちょーっとエミリさんの気持ちを直球に言い過ぎでしたね」
居合わせていた人にこう言われちゃ、エリオ……結構障害は大きいかもしれない。がんばれ、としか言えないや……。
「やはり、急所のいくつかを突くべきでしたか」
「アイシス!? 君も一応騎士団の一員なんだから、エリオが死んじゃう!!」
「しかし! 乙女の心を弄んだ処罰は!!」
「まあ、その方法は野蛮なので……エミリさんにとどめを刺してもらいましょう」
「「え??」」
入って来てください、とイツキさんが言えば。
扉がゆっくり開き、アイシスが前に僕との語らいの時間をいただく前と同じように……エミリちゃんが真っ赤な状態で立っていたんだ。
「……イツキさん、わざと?」
「実は待機してくださいとは言いました」
「……義姉上、策士ですね」
「そんなことは。さて、せっかくなのでエミリさん主体でエリオさんへの差し入れを作りましょう」
「「「……差し入れ??」」」
意味がわからないので、エミリちゃんも一緒に聞き返してしまうと、イツキさんはとってもいい笑顔でこう言ったんだ。
「ズバリ。エリオさんに、エミリちゃんの魅力を最大限にまで知ってもらう……告白第二弾です!」
「お、奥様!?」
「エリオさんへのアタックは早いうちがいいです。元同僚として思いますが、エリオさんは相当なヘタレですね!」
「……義姉上」
「……まあ、そうですけど」
散々な言われようだけど……僕もエリオと同じだったから、強く言い返せなかった。
そして、その手段としての差し入れと言うのは。エリオがまかないで大好きだったと言う『カツサンド』ってサンドイッチを作ることになった。
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