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番外編

第158話 今更だけど

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「「こんにちは……」」


 普段城にいるばっかりだから、ちょっと忘れてた。

 独身寮とは違って、お貴族様のお屋敷とかの凄さを。

 イツキさんと副隊長のお屋敷は、小さいとは聞いてても市井の俺にとっては充分過ぎるくらい大きくて。たしか、副隊長はハインツベルト公爵家の次男……だったような。

 その妹さんは、当然公爵家のご令嬢だから……ミュラーがあれだけ悩むのが今更だけどよくわかった。


「いらっしゃいませ、お二人とも」


 だから出迎えにイツキさんが出てきてくれたので、少しほっと出来た。服装はコックスーツじゃなくて、貴族の女性らしい綺麗なワンピース姿。

 腕には、生まれたばかりのご子息がおくるみに包まれて抱っこされていた。


「おひ……さし、ぶりです」

「お久しぶり……です」

「ふふ。エリオさん、いつも通りでいいですよ?」

「いや、けど」

「お嫁にきた場所が場所ですが、私は私ですから」


 相変わらず、男前くらいにかっこいい!!

 男装してても違和感なかったけど、今はちゃんと女性なのにかっこいいんだよなあ、この人。

 だったら、と俺は遠慮なく以前の話し方をさせてもらうことにした。


「あ、これお土産」


 亜空間収納から、下っ端料理人の皆で作った寒天寄せの箱を出した。あのパイナップルのやつ、イツキさんの提案でも物凄く美味しかったから。


「ありがとうございます。では、それをお茶菓子にしてお話聞きますね?」

「……ありがとうございます」


 ミュラーは相変わらず元気ないけど……まあ、イツキさんの義理の妹さんが好きな相手だからなあ。イツキさんだから、きっといいアドバイスもらえると思う反面……うまくいかない方も想定してそう。

 いつもの勇ましいミュラーでも、恋の病には敵わないようだ。


「うん。もう少し火入れしてもいいですが、美味しいですよ」


 まずは寒天寄せの方を少し食べてもらったけど……相変わらず判定厳しい!

 いや、この人は料理長が認めた立派な料理人だからだけど!!
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