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番外編
第156話『甘々フレンチトースト』
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ワルシュ料理長が用意してくださったのは、素朴なケーキのように見えた。だが、普通に焼いたのではなくうっすら焦げ目がついていたのだ。
何切れか皿に盛り付けられ、クリームも少し添えてあった。クリームと一緒に楽しむケーキにしては随分と簡素だと思ったが……料理長は、真ん中に茶色の液体が入った瓶をどんと置かれた。
「こいつをたっぷりかけて食うのが、イツキが言うにはめちゃくちゃ美味いらしい」
「義姉上がですか?」
では、このケーキ……いいえ、料理長はパンと言っていたような。これに瓶の中身をかけて食べるおやつ……聞いたことも見たこともないが、イツキ義姉上の直伝と言うことであれば、美味しくないわけがない!
そして、料理長は手本と言わんばかりに瓶の中身……少しどろっとしたはちみつのような液体をパンにかけていった!!
「シューくんぅ、これなーに?」
「イツキが言うには、『フレンチトースト』っつー菓子パンだと」
「「フレンチトースト??」」
「卵と砂糖に牛乳を混ぜた液に、パンを染み込ませて焼いたもんだ。仕上げに、はちみつとか樹液をかけて食うとさらに美味いんだと」
「あ! メープルシロップねん?」
「そうそう。これがまた合うってイツキは言ってた」
イツキ義姉上がそこまでおっしゃるほどの美味……きっと至高の逸品なのだろう。ごくんとツバを飲み込んでしまうくらい、私は空腹で思わず暴れてしまいそうだった。
サーシャ殿がメープルシロップと言うものをたっぷりかけた後に、私も自分のにたっぷりとかけさせていただく。
フォークとナイフを構え、いざ! と切り込みを入れると……とんでもなく柔らかい感触に驚きを隠せなかった!?
(崩れやしないだろうか……?)
だが、絶対美味しいとわかると手がゆっくりと動いてしまう。
崩さないように小さく切り分け、シロップをたっぷりとまとわせ……口に入れてみると、香ばしい二種類の甘さが、がつんと伝わってきたのだ!!
「美味し~!!」
「ん。さすがイツキだな? このシロップと相性がいい」
「疲れた体に沁みるぅ!!」
「お前さんより、アイシスの方が疲れてんだろ?」
なあ? と声を掛けていただいたが、私はフレンチトーストの美味しさに感動して、すぐに返事が出来なかった……。
「その……とても、美味しいです!」
「だろう? 疲れた時は甘いもんだ」
「うんうん、いっちばん!」
温かな家庭。
その環境を得ることが出来たのは、イツキ義姉上が兄上に婿入りされてからだ。義姉上を通じて、憧れだったワルシュ料理長やサーシャ殿ともこのように気さくに話すことが出来た。
強くなることも、もちろん大切だが……誰かとこのような食卓を囲むのも良いと思い始めたのだ。その時に、不意にミュラー殿の顔が浮かんだが……すぐに消えてしまった。
何切れか皿に盛り付けられ、クリームも少し添えてあった。クリームと一緒に楽しむケーキにしては随分と簡素だと思ったが……料理長は、真ん中に茶色の液体が入った瓶をどんと置かれた。
「こいつをたっぷりかけて食うのが、イツキが言うにはめちゃくちゃ美味いらしい」
「義姉上がですか?」
では、このケーキ……いいえ、料理長はパンと言っていたような。これに瓶の中身をかけて食べるおやつ……聞いたことも見たこともないが、イツキ義姉上の直伝と言うことであれば、美味しくないわけがない!
そして、料理長は手本と言わんばかりに瓶の中身……少しどろっとしたはちみつのような液体をパンにかけていった!!
「シューくんぅ、これなーに?」
「イツキが言うには、『フレンチトースト』っつー菓子パンだと」
「「フレンチトースト??」」
「卵と砂糖に牛乳を混ぜた液に、パンを染み込ませて焼いたもんだ。仕上げに、はちみつとか樹液をかけて食うとさらに美味いんだと」
「あ! メープルシロップねん?」
「そうそう。これがまた合うってイツキは言ってた」
イツキ義姉上がそこまでおっしゃるほどの美味……きっと至高の逸品なのだろう。ごくんとツバを飲み込んでしまうくらい、私は空腹で思わず暴れてしまいそうだった。
サーシャ殿がメープルシロップと言うものをたっぷりかけた後に、私も自分のにたっぷりとかけさせていただく。
フォークとナイフを構え、いざ! と切り込みを入れると……とんでもなく柔らかい感触に驚きを隠せなかった!?
(崩れやしないだろうか……?)
だが、絶対美味しいとわかると手がゆっくりと動いてしまう。
崩さないように小さく切り分け、シロップをたっぷりとまとわせ……口に入れてみると、香ばしい二種類の甘さが、がつんと伝わってきたのだ!!
「美味し~!!」
「ん。さすがイツキだな? このシロップと相性がいい」
「疲れた体に沁みるぅ!!」
「お前さんより、アイシスの方が疲れてんだろ?」
なあ? と声を掛けていただいたが、私はフレンチトーストの美味しさに感動して、すぐに返事が出来なかった……。
「その……とても、美味しいです!」
「だろう? 疲れた時は甘いもんだ」
「うんうん、いっちばん!」
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その環境を得ることが出来たのは、イツキ義姉上が兄上に婿入りされてからだ。義姉上を通じて、憧れだったワルシュ料理長やサーシャ殿ともこのように気さくに話すことが出来た。
強くなることも、もちろん大切だが……誰かとこのような食卓を囲むのも良いと思い始めたのだ。その時に、不意にミュラー殿の顔が浮かんだが……すぐに消えてしまった。
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