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番外編

第135話『ひとを変えたクッキー』①

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「「「「「……すみません」」」」」

「勢いで卵割ろうとすな!? かき混ぜ過ぎもあかん!! イツキはんと副隊長への品やで!? もっと丁寧にしや!!」


 本人曰く、男女の垣根を越えた友人と豪語するくらいですからね。サフィア殿と違う位置ですが、レクサスはとてもイツキを大事にしていますから。

 もちろん、僕もイツキは大事ですよ。リュシアーノ様とは違う位置にですが。しかし、男女問わず惹かれてしまう存在なのがイツキですから……心を射止めたアーネストはもっと特別でしょうね。


「……よし。まとまりました」


 今回が初めてではない僕は僕で、クッキー作りを進めていきます。まとまった生地を生活魔法で少々冷やして……麺棒で平たく伸ばしたら、ここで型の出番です。


「……あの、隊長」


 僕と一緒に作業をしていたミュラーが話しかけてきました。他の部下とは違い、彼は料理人の友人がいるので多少は料理が出来るそうです。ただ、このようなクッキーは作ったことがないのか、少し不安げではありましたが。


「あとはこれを使って抜くだけですよ?」

「え、ええ……その型がたくさんあるのに驚いて」

「ハクト親方の手製ですからね。のめり込むとたくさん作ってしまうのは仕様がありません」

「……僕が以前。イツキさんに教わったのは、丸めたクッキーでした」

「! いいですね。すべてを型で抜けるとは思えませんし、僕にもそれを教えてください」

「! はい!」


 イツキは、本当に多方面でひとの人生に影響を与えて行く存在ですね。自信のなさげだったミュラーを、少しずつでも意欲的に動かす方向にも導いてくれた。他の騎士らもそうです。

 レクサスとて、イツキとの出会いがなかったらいまだに細君を持たずにだらけた生活をしていたでしょうから。

 型を生地にしっかりと押し付け、抜いて蝋を塗ってある紙を敷いた鉄板に並べ……あとは焼くだけです。

 とりあえず、レクサスが叱っていた方の部下らも……叱られながら、苦戦しつつもクッキー生地を仕込んでいました。
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