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番外編
第122話 魔窟へ
しおりを挟む「実地訓練やからて、油断したら死ぬで」
調達の訓練当日。
目的の日になるまで、自分は様々な準備を部下らも含めて用意周到言えるまで頑張ってたんやけど。誰も死ぬことのない結果……戦争でもないのにあり得へんやろうと思うが、この場所はちゃうわ。
鬱蒼とした、樹々や魔物が跋扈する危険区域。
凄腕の冒険者ですら、用意は念入りにすんねん。自分だけでなく、ワルシュ先輩もそうやった。とは言え、ここに何度放り込まれたことか。それでも生きとるけど。
副隊長や隊長はマントを外して、軽装備の上に鎖帷子を装着してる。マントはここやと邪魔やしな。代わりに他の防具で固めるんや。
「レクサスの言う通りですよ。一瞬の油断が命取りになります。皆気を引き締めて対処するように」
「「「「「はっ!」」」」」
「ほな、行こか」
短剣を構え、自分は目の前を邪魔している蔓や枝を捌いて道を作っていく。
後ろには隊長、間には精鋭させた近衛騎士ら数人。殿は副隊長。副隊長は間に妹のアイシスがおるからなあ、ハラハラもんやろ。
(けんど、アイシスはお転婆やけど……阿呆ちゃうからなあ)
反射神経や、機転の良さは令嬢だとは言ってもピカイチと言っていい。坊ちゃん育ちの子息より頼もしいくらいや。ちらっと見たが、隊長の後ろにおるアイシスは好奇心バリバリの表情やった。ありゃ、見知らぬ場所への期待度がドーンっと高まっとんやろ。ええこっちゃ。
「……結構奥なのですね」
魔物に運良く遭遇せんけど、隊長は自分が進む方角を見て思ったんやろうなあ? こん人も美貌覗いたら、結構な戦闘狂だから……王女殿下はそこも受け入れてそうやけど。
「まあ、けど近いですわ」
ほんのりだが、甘酸っぱい香りが漂ってきた。何度か嗅いだことのあるパイナップルのええ匂い。冒険者やった頃は嫌なもんでしかなかったけど……今回はちゃう。
それを求めに来たのやからな?
ブヒィイイイイイイイ
ただし、そう簡単に近づかせてくれん障害も忘れとらん。
熊型の魔物、ボアベアっちゅー獰猛な魔物が立ち塞がってきたわ。
自分は獲物を短剣ではなく剣に変えた。隊長らの指示で、部下連中も構えの態勢に入った。ここ半年くらいの野営訓練でも魔物は討伐してきたからなあ? アイシスも含め、新人らもちと怯みはしたがきちんと対応する姿勢になっとったわ。
「僕やレクサスが主軸で動きます。皆は援護を」
「「「「「は!」」」」」
何せ、一体だけやなくて複数おるからなあ?
それは適した判断やったわ。
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