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番外編

第119話 パイナップルの可能性

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 食べた。

 食べた食べた……。

 めちゃくちゃ食べた……。

 ハーツと分担して作ったパイナップル料理は、どれもが斬新過ぎだったが味は納得出来るものばかりで、とても美味しかった。

 夕飯がいらないくらいに食べまくった。

 果物がこんなにも料理に出来るだなんて、本当に予想外過ぎて……イツキさんには、益々感謝しなくてはいけないわ。


「……もう食えねぇ」

「……私も」


 何とか片付けはしてから、執務室に戻った。また仕事の書簡は増えていたが、今はする気も起きない。心地いい満腹感に浸っていたいので、仕事は却下だ。


「全部美味かったな……」

「ほんと、美味しかった……」


 トーストも良かったけど、私としては炒め物にハマりかけた。豚肉と野菜をたっぷり使った、パイナップルも入れた炒め物。酸っぱいからか、『酢豚』ってイツキさんのレシピにはあったけど……甘酸っぱくて病みつきになった。

 あれは、パイナップル料理を受け入れられるなら、是非試したいと思える料理だ。


「とは言え、序盤は菓子とジュースからだなあ?」

「……そうだね」


 パイナップルは補助食材。

 その認識は、ギルドを利用する商人や料理人は数多くいるのだ。実は、普通の食材として扱えるだなんて、ほとんどが信じられないだろう。

 ただし、パイナップルはイツキさんが推奨してくれた食材である。国の救世主である彼女の推す物と分かれば、その認識は容易く覆されるだろうが……手始めは、料理でもデザート扱いが無難だ。

 ジュースにジャムからスタートすれば、民衆にも良い刺激を与えられるはず。完熟させたパイナップルは、そのままでもご馳走になったんだもの。


「とりあえず……明日だな?」

「明日だねぇ」


 まずは、パイナップルを仕入れるところから始めなくては。職員らはびっくりするだろうが、そこにイツキさんの名前を出せば、きっと意欲的になるだろう。彼らにも、パイナップルの可能性をよく知ってほしい。

 けど、今は。

 お腹がいっぱいなので、ハーツとのんびりしたかった。

 出来れば昼寝をしたいところだが、まだ仕事の時間内ではあるため、出来ない。だから、小休憩というところだ。

 しばらく、お腹を落ち着かせてから職員を呼び、パイナップルの活用方法をイツキさんの名前を出して提案すれば……予想以上の反応が出た。

 どんな食べ方か、問い合わせが殺到するくらい。さすがはイツキさんだわって、私は改めて実感したわ。ひとまず、そのままのスライスを食べさせたら……ほとんどの職員が絶賛の声を上げたのだった。
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