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番外編

第114話『パイナップルジャム』

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 とは言え、今までろくに扱ってこなかった食材だ。

 まずは、イツキやミーナが通達で知らせてくれたように、ジュースやゼリーにしてみたが。


「めっさ、美味いですやん先輩」

「ええ。これは美味です」


 別の日にネルとレクサスを呼び、どっちも食ってくれたが予想以上の反応だったぜ。


「そのまんまもええけど、ジュースもええわあ。レモンよりさっぱりしとるし、甘いし」

「見向きもしていなかった食材の活用……アレルギーの懸念がありますが、これはまた革命的ですね?」

「イツキはんすごいわぁ」


 レクサスは単純に味の感想ばかりだが、ネルはさすが大公爵家の家柄関係で有益かどうかを考察している。たしかに、果物でアレルギーが出るパターンもあるからパイナップルでそれがないとは言い切れない。

 イツキが以前言っていたが、甘いものだと蜂蜜でもそれが起きるらしいが……アレルギーとは、マジで末恐ろしいものだな。

 下手をすれば、『死』に陥るくらいの未知の病。

 イツキの知識でも、生まれつき以外には食べ過ぎた場合で起きるくらいしかないそうだ。あちらの世界では、ごく普通の知識でもこっちは違う。

 全部が全部じゃねぇが……フルコースを無くしてくれたおかげで、環境も一気に変わったんだ。天からの遣いとも言えるイツキには、本当に感謝しているぜ。


「とりあえず。少しずつ需要を増やすには、ゼリーよか俺はこれを考えた」


 二人の前に、黄色のジャムが入った小瓶を置き。

 別で既に用意しておいた、サンドイッチに使うパンを炙ったのも置いた。パンには、イツキに教わった『バタートースト』にしてみたんだが。


「ジャムなん?」

「……朝食向きにでしょうか?」

「とりあえず、食ってみてくれ」


 いちごより粘度は高いが、軽く塗ったトーストをそれぞれ口に運んでくれた。

 途端、肩が跳ねたような反応になったぜ。


「……これは!?」

「う、ま!?」

「ええ。甘さは砂糖があるのももちろんですが……マーマレードよりも食べやすいです!」

「だろう?」


 城もだが、国全体……もしくは他国にも広めやすいんなら。亜空間収納が出来ないやつでも、作りやすいし保存にも最適だと思った。

 だが、イツキはこれくらいなら予想済みだろうなあ?

 俺も改めて食ったが、やっぱり美味い。塩入のバターの塩っぱさに甘酸っぱいジャムがよく合う。イツキには最初いちごで教わった時は、正気か!? とか返事しちまったが……慣れると病みつきもんだ。

 あとは、ケーキに使うとしたら……ジャムのように熱を加えるか、普通に果物扱いにするかも悩むぜ。
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