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番外編

第99話 個人的に贈り物

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 そんな素晴らしい女性に育つであろう、この方を思いますと。

 学園に戻られる前に、何か自分で贈りたくなってきました。宝飾関連はいくつか贈らせていただいたことはありますが、それではよくありません。

 前世の記憶も戻られ、ある意味深層の令嬢のような性格では無くなった……僕の愛しい方。

 愛くるしく、それでいてとても活発的でいらっしゃいます。大人しいだけの、ただ花のような少女ではありません。

 イツキという理解者もいますし、学園でもご友人を得られた。

 そのような楽しそうに過ごされている方に……僕は、これ以上何が出来ますでしょうか?


「……菓子ちゃいます? 手作りの」


 考え込んでいると、アーネストが席を外している間に……レクサスが話を聞いてくれました。この部下は、リュシアーノ様の第一メイドが妻ですし、自力でリュシアーノ様にも前世の記憶があることを気づいた男です。

 アーネスト以外に、唯一語れる相手なので相談に乗ってもらっていました。


「……手作り?」

「ええもんですよー? 何度か手作りしたやないですか? けんど、一から自分の手で作ったもんは……好きな相手からしたら、いつでも嬉しいもんや」

「……君もサフィア殿と?」

「可能な時には、イツキはんに習って贈ったりしてるんよ」

「……やはり、イツキですか」


 多種多様な料理もですが、菓子作りも嗜んでいる女性ですからね。どうしたって、彼女には頼りたくなってしまうものです。


「……まあ、もうちょいしたら出産やから。そこは難しいかもやんなあ?」

「……だとしたら」


 と、レクサスと一緒に向かった場所は宮廷料理人らが集まる厨房。中では、檄を飛ばしている悪人面にも等しい大男がいらっしゃいました。イツキの養父でもあるワルシュ=エイペック殿です。


「あ? お前さんらどうした?」


 ですが、僕らがいるとわかると少しだけ表情を和らげてくださいましたね。


「せーんぱーい。菓子作りたいんで、ご教授頼んますー!」

「あ? 菓子?」

「僕自身の希望です。レクサスも奥方に作りたいと」

「……ほーん。ネルがか? 嬢ちゃんにか?」

「ええ」


 城内でリュシアーノ様をそのように呼べるのは、陛下と悪友だからですが。別にこれが初めてではないので気にしません。


「だったら、細工もんに近いクッキーをイツキに教わったなあ? それにするか?」

「お願いします」


 イツキ直伝に、多大な影響を受けているのはこの方もですからね。

 誰も異論は唱えませんでした。
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