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番外編

第98話 贈り物の依頼

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「これから涼しくなってくるし、おくるみとかを贈るのはどうかしら?」


 あと数日で、学園の寮に戻られるリュシアーノ様と時間を作ることが出来まして。

 早速、イツキとアーネストらへの贈り物を提案したところ、そのようなお返事をいただけたのです。


「……おくるみですか」

「できれば、手作りしたいところだけど……時間も技術もないわ」

「僕も似たようなところです。……ハクト親方に依頼するのはいかがでしょう?」


 お互いに、無理に出来ないことを実行するよりは余程良い提案だとは思いましたが……リュシアーノ様は少し渋い表情になられました。


「親方に頼むのはいいけど……」

「何か不満が?」

「イツキとアーネストの子供にでしょう? 異様に凝った作りにしそうな気がするわ」

「……それはないと言い切れないので、事前に説明しましょう」


 その心配は僕も忘れていましたので、気づかせていただいたことはありがたかったです。せっかく決めたからには、早い方が良いと二人で親方のところへ行ったのですが。


「おくるみ? 妃殿下から先日依頼があったぜ」

「え!?」

「……そちらのことも忘れていましたね」


 王妃殿下もイツキとはご友人ですし、育児については先輩ですから……思いつくのが早いのも仕方がありません。

 なら、僕は衣服を提案しようとしたのですが、リュシアーノ様が思いついたように手を叩かれました。


「親方? おもちゃは頼まれたかしら?」

「……おもちゃ? いいや」

「じゃあ、私からはそれを依頼させて。音が鳴って、赤ちゃんをあやす時に使うベルのようなものよ」

「殿下ぁ!  詳しく教えてくれぇ!」

「いいわ!」


 何やらすごい提案をされていますが、わからない僕では口を挟む隙もありませんでした。

 親方はリュシアーノ様のおっしゃった、おもちゃの詳細を設計図に起こし。

 だいたいの絵が出来上がったそれらを見て、強く頷きました。


「面白ぇじゃないか!? イツキの嬢ちゃんから聞く道具も面白いが、殿下もどこで知ったんだ?」

「イツキに前聞いたの」

「ほー?」


 と言うことにしておかないと、後々面倒ですからね。親方も特に不審に思うことはないようです。


「とりあえず……作れそうかしら?」

「そうだなあ。試作は何回か繰り返さなきゃだが……半月は待ってくれ」

「残念だけど。出来上がりは、ネルに確認をお願いしてもいーい?」

「承りました」


 音が綺麗に鳴ること。

 壊れにくいこと。

 その二点を確認すれば大丈夫のようです。

 おもちゃへの依頼もですが、僕からも衣類の方を頼んだので、親方への依頼はひとまずこれで終わりです。


「ガラガラを思いついた、私偉い!」

「ガラガラ……ですか?」

「鈴のようなおもちゃなのよ。笑い声に似た音だから赤ちゃんには喜ばれやすいの」

「……興味深いですね」

「将来、私達の子供にも作ってもらいましょう?」

「! ええ……」


 うっかり忘れそうになりますが、リュシアーノ様の内面は妙齢の女性。

 そのような嬉しい言葉が、すんなり出てくるのは自然のことなのですね。

 僕もまだまだです。
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