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番外編
第78話『騎士のキャンプカレー』①
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水に浸して、濁ったらすぐ捨てて。
次に軽く音が出るくらい混ぜて、また水を入れては捨ててを数回繰り返して……最後は鍋に移して、綺麗な水を入れて。
そのあとに、バーミィ隊長が作った釜の上に乗せ、まずは沸騰させるのに強めの火に当てるそうだ。
「米は大事やかんな? こっちは自分が見とくから、ミュラーは野菜の下ごしらえ中心に頼むわ」
「はい」
野菜は、お城で食べるモノほど揃ってはいないけど……野営用に持参していいのとか、これまでに採取して自分の亜空間収納に入れておいたものを使う。
僕は、その中でも一番大好きな『じゃがいも』を、まずは下ごしらえしていく。フライドポテトやポテトチップスだと適度でいいけれど、カレーには必要のない皮や芽を丁寧に取り除くのだ。ナイフの扱いは、エリオに少し習ったから震えたりはしないけど……ちらっと他の同僚や先輩の騎士を見ると、ほとんどが手を震わせながら調理していた。
野営訓練は、以前より少しは増えたけど……大半が庶民出身の近衛騎士でも、自炊に慣れているかといえば違うからね。僕も、エリオやイツキさんと出会うまでは全然だったから。
「んー。よし、火ぃ弱めて」
そして、ちょっと甘いような匂いがしてきたら、バーミィ隊長がそんなことを言っていた。三つ目のじゃがいもの下ごしらえが終わった僕はそっちを見ると……白い湯気が鍋から出ていたんだ。
「出来たのですか?」
「まだや。ここからとろ火で少し煮て、そのあとにはほっとかんと鍋にくっつく」
「……難しいんですね」
いつもはお城の食堂で食べてただけだから、そこまで手間がかかるものだなんて知らなかった。エリオもいつも頑張っているけど、料理ってこんなにも大変なんだと改めて実感出来た。
けど、米だけじゃお腹はふくれないから……次にカレーのソースを作らなきゃ。
バーミィ隊長は、米の鍋を釜から下ろしたあとに、解体組からもらってきた魔物の肉と僕が下ごしらえした野菜を……別の鍋で炒めていった。その匂いだけでも美味しそうだけど、もっと美味しくなるのにワクワクしてしまう!
「ミュラー。水入れるタイミング教えたあとに、やってほしいことあるんや」
「はい」
「水が沸いたら、茶色いもんが出てくる。それを、自分が出しといた玉じゃくしで取り除いてほしいんよ」
「……それは何ですか?」
「イツキはんが言うには、『アク』ってもんらしい。取り除かんと美味い飯にならんのやと。出来るだけでええ」
「わかりました」
そして、アク取りをするときに、その意味がわかった。どう見ても美味しそうに見えない色なので、お湯を出来るだけ抜かないように慎重に取っては受け皿のボウルに入れていく。
エリオはきっと、これを知っているだろうけど……もっとたくさん練習しているんだろうなあ。帰ったら、聞いてみようと思った。
次に軽く音が出るくらい混ぜて、また水を入れては捨ててを数回繰り返して……最後は鍋に移して、綺麗な水を入れて。
そのあとに、バーミィ隊長が作った釜の上に乗せ、まずは沸騰させるのに強めの火に当てるそうだ。
「米は大事やかんな? こっちは自分が見とくから、ミュラーは野菜の下ごしらえ中心に頼むわ」
「はい」
野菜は、お城で食べるモノほど揃ってはいないけど……野営用に持参していいのとか、これまでに採取して自分の亜空間収納に入れておいたものを使う。
僕は、その中でも一番大好きな『じゃがいも』を、まずは下ごしらえしていく。フライドポテトやポテトチップスだと適度でいいけれど、カレーには必要のない皮や芽を丁寧に取り除くのだ。ナイフの扱いは、エリオに少し習ったから震えたりはしないけど……ちらっと他の同僚や先輩の騎士を見ると、ほとんどが手を震わせながら調理していた。
野営訓練は、以前より少しは増えたけど……大半が庶民出身の近衛騎士でも、自炊に慣れているかといえば違うからね。僕も、エリオやイツキさんと出会うまでは全然だったから。
「んー。よし、火ぃ弱めて」
そして、ちょっと甘いような匂いがしてきたら、バーミィ隊長がそんなことを言っていた。三つ目のじゃがいもの下ごしらえが終わった僕はそっちを見ると……白い湯気が鍋から出ていたんだ。
「出来たのですか?」
「まだや。ここからとろ火で少し煮て、そのあとにはほっとかんと鍋にくっつく」
「……難しいんですね」
いつもはお城の食堂で食べてただけだから、そこまで手間がかかるものだなんて知らなかった。エリオもいつも頑張っているけど、料理ってこんなにも大変なんだと改めて実感出来た。
けど、米だけじゃお腹はふくれないから……次にカレーのソースを作らなきゃ。
バーミィ隊長は、米の鍋を釜から下ろしたあとに、解体組からもらってきた魔物の肉と僕が下ごしらえした野菜を……別の鍋で炒めていった。その匂いだけでも美味しそうだけど、もっと美味しくなるのにワクワクしてしまう!
「ミュラー。水入れるタイミング教えたあとに、やってほしいことあるんや」
「はい」
「水が沸いたら、茶色いもんが出てくる。それを、自分が出しといた玉じゃくしで取り除いてほしいんよ」
「……それは何ですか?」
「イツキはんが言うには、『アク』ってもんらしい。取り除かんと美味い飯にならんのやと。出来るだけでええ」
「わかりました」
そして、アク取りをするときに、その意味がわかった。どう見ても美味しそうに見えない色なので、お湯を出来るだけ抜かないように慎重に取っては受け皿のボウルに入れていく。
エリオはきっと、これを知っているだろうけど……もっとたくさん練習しているんだろうなあ。帰ったら、聞いてみようと思った。
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