上 下
523 / 784
番外編

第77話 騎士のキャンプ

しおりを挟む
 イツキさんが、ハインツベルト副隊長の奥様になられて数ヶ月。御子様を身ごもられて同じくらいだ。

 僕は、今も訓練を一生懸命頑張っている。成長期で身体が大きくなっても、まだまだ剣技とかがうまくついていかない。今は他国との戦争がなくても、いつ起きるかだなんて誰にも予想は出来ないから、強くなるのに意味がないわけじゃないんだ。

 そして、今日は野営訓練が始まる日。

 魔物を討伐してから、自分達で料理を作るって言う大変なことなんだけど……僕は嫌いじゃない。短い期間だけど、イツキさんにも教わったこともあって料理は嫌いじゃないんだ。

 それに、今日組んでいる相手も。


「お? ミュラーか。よろしくな」


 イツキさんとは仲の良いご友人である、バーミィ第一部隊隊長とだからだ。この方も、イツキさんに色々料理を教わっただけでなく、僕らにも作り方を共有してくださるんだ。だから、一緒に組む騎士からの『羨ましい』視線は、強いけど振り払わなくちゃ。

 似た理由で、ハインツベルト副隊長もだけど……ラインシード隊長も人気です。でも、気さくに話しかけられる理由だと、バーミィ第一部隊隊長の方が人気なんだよね。


「はい。よろしくお願い致します」

「とりあえず、薪になる枝集めと釜作りやな?」

「僕、枝集めの方がいいでしょうか?」

「頼むわ」


 これが初回ではないので、役割分担をすぐに決めることが出来た。出来るだけ乾いた枝をたくさん集め、隊長のところに戻るともう釜作りが終わっていた。早速火をつけ、二人で作るものを何にしようか決めていく。


「魚……はありますよね?」

「肉も魔物んがあるし、別の奴が解体してくれとるから……せや!」


 隊長が、ご自分の亜空間収納から金属で出来た箱と小さな麻袋を取り出した。あとは、食材らしい小瓶をいくつか。何を作るつもりなのだろうか?


「……それをどうするのですか?」

「イツキはんに教わったんや」

「イツキさんに?」

「野営で食べるカレーは何倍も美味くなるんやて!」

「カレーですか!」


 リーゾにわざわざかける野菜と茶色いソースで出来た料理。あまりの色に僕は最初拒絶しそうになったが、料理人で友達のエリオに薦められてひと口食べたら……それが間違っているとすぐに理解出来た。バーミィ隊長はイツキさんと仲がよろしいから、作り方もご存知なのだろうけど……難しいのでは? と疑問が出てきた。

 それが表情に出ていたのか、隊長は僕を見ると口元を緩めた。


「大丈夫や。自分も何回か作ったことある」

「! ご教授お願い致します」

「まずは二人で野菜の下ごしらえ……の前に、リーゾや」

「先にですか?」


 僕はまだリーゾの下ごしらえをあまりしたことがないので、隊長から水を出す生活魔法を頼まれたのだった。
しおりを挟む
感想 319

あなたにおすすめの小説

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

美少女に転生しました!

メミパ
ファンタジー
神様のミスで異世界に転生することに! お詫びチートや前世の記憶、周囲の力で異世界でも何とか生きていけてます! 旧題 幼女に転生しました

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

復讐はちゃんとしておりますから、安心してお休みください、陛下

七辻ゆゆ
ファンタジー
「フィオネよ、すまな……かった……」 死の床で陛下はわたくしに謝りました。 「陛下、お気が弱くなっておいでなのですね。今更になって、地獄に落とされるのが恐ろしくおなりかしら?」 でも、謝る必要なんてありません。陛下の死をもって復讐は完成するのですから。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。