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番外編

第47話 ちょっと素直に

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 まるで夢のような一日だったわ。

 憧れだったイツキ様とお会いするだけでなく、ご一緒にお料理が出来るだなんて……夢としか思えない。けれどそれは、自分用にとイツキ様が持たせてくださったお花のアイシングクッキーの包みが、教えてくれるのだ。

 たくさん作ったから、家族とも食べて欲しいとのお言葉に……この方はどこまでお優しいのだと、本当に尊敬の念が強くなるばかり。容姿で卑屈になりがちな私とは大違いだ。

 それともうひとつ。マーキュリーが先に動いたのだが、私もその……イツキ様と文通をしても良いと言うことになったのだ。イツキ様は身籠って色々大変だろうに、『お手紙は嬉しいです』と花のように微笑んでうなずいてくださった。だから、つい私もマーキュリーに続いてしまったのだ。この機会を逃すと、もうしばらく接点はないと思って。


「まあ! これをあなたが?」


 屋敷に帰って来て、母達にクッキーの包みを渡すと……母もだが、父らも手放しに褒めてくれた。まだしおれていないお花のクッキーを見て、母はさっそくお茶にしようとメイドに頼んだ。

 食べてくれた時は、お城で陛下方と同じような……花がほころんだ笑顔となってくれた。正直、とても嬉しい。


「うまいな。花がこのように食べられるとは」


 父はひとつを食べ終えると、すぐに次を手に取るくらい気に入ってくれたようだ。


「ええ、ええ! とっても美味しいわ、エイミー」

「うん。美味しい!」


 姉や兄もぱくぱく食べてくれた。私と似た容姿ではあるが、こちらは私より性格は明るい人達。二人に褒めてもらうと、前はそっぽを向いていたが今は少し違う。

 イツキ様とお会いしたからか、素直に『ありがとうございます』と言うことが出来た。だから、二人には軽く目を見開かれたが。


「……そのイツキ様は凄いな?」

「……エイミーが可愛らしくなっているわ」

「……可愛くはないです」


 しかしながら、染みついた卑屈さはすべて取り払えるわけではなかったが。だが、少しずつでも治していかないと、せっかくイツキ様と文通が出来るのだから素直にならなくては。

 その日は、アイシングクッキーの作り方を忘れないうちに日記帳に書き込んで……次の日には、便箋と睨めっこしたのだった。

 なのだけれど。


「エイミー! またあのクッキーが食べたいの!! 一緒に作らせて!!」


 と、姉が部屋に拝むように駆け込んできたので……仕方がないからと、一緒に作ることとなった。だけど、せっかくだからと花はスミレ以外にも、何か作れないかと庭でメイドらと探すことにしたのだ。
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