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番外編

第44話 飾らない関係

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 そうして、焼き上がったクッキー達ですが。

 イツキ様がおっしゃった通り、スミレの花は焦げたりすごく萎れたりしていませんでしたわ。わたくしが担当させていただいた、埋め込んだクッキーもですが……アイシングに軽く沈めたクッキーも素晴らしく、美しい仕上がりとなっていました。

 砂糖漬けやチョコレートに乗せたものと違い……これは美しい絵画のようです。まるで最初から存在していたかのように。


「「「素敵……」」」


 わたくしだけでなく、殿下やエイミーも思わずため息を吐いてしまうほどですわ。作り方は、すごく難しいわけではありませんのに……これらを自分の手で作ったことが、まだ少し信じられません。ですが、目の前にあるのは本物ですの。わたくし達が手がけたものですわ。


「さて、陛下方ともう一度お茶会しませんか?」


 ここで試食かと思いきや、イツキ様が驚く事を口にされましたの! このクッキー達をお供に、またお茶会? しかも、陛下方とご一緒にですの!? そのようなことが許さ……れますわ。イツキ様のご提案でしたら。

 殿下のご友人ですし、この国の救い主でいらっしゃいますもの。そのような提案は、きっと陛下もお受けられるでしょうから。


「いいわね! お父様はお仕事でしょうけど、お茶菓子の差し入れでもいいかもしれないわ」


 殿下はとても乗り気ですの。わたくしとエイミーがガチゴチに固まりかけていますのに、なんてことのないように提案されますわ!?

 殿下のことですから、善意あってでしょうけれど……イツキ様の提案も悪気などは感じません。ただ、『皆で食べましょう』と言う普通の提案に過ぎないかもしれませんが……王族とそのように打ち解けた間柄でいらっしゃるのですね。すごいですわ。


『ま、マーキュリー? 私達のクッキーを陛下方に……だわよね?』

『……間違いありませんわ。殿下も乗り気でいらっしゃいますし、わたくし達で断れませんもの』


 エイミーもどうして良いかわからないでいるようですが……わたくし達に拒否権はあってないようなもの。ここは従うしかありません。

 ですが、イツキ様と殿下はわたくし達に振り返ってくださいました。


「二人もいいかしら?」

「せっかくですし、陛下方ともご一緒したいと思ったんですけど」


 なんと、わたくし達の意見を聞いてくださる提案をされましたわ。そのようなこと……貴族の令嬢とは言え、子供に聞いて良いことなのでしょうか? イツキ様もですが……殿下は何故そうなさるのでしょう? 王族であれば、殿下が命令されればわたくし達は従うまでですのに。

 まるで、普通の友人としての接し方ではないでしょうか。

 いいえ……昔の殿下のお噂だけで、殿下の人となりを決めつけていたわたくしが疑問に思ってはいけません。

 今ここにいらっしゃる殿下こそが、真実のお姿ですわ。

 エイミーも同じ事を考えていらしたのか、わたくしと目が合うと小さく頷きました。


「「……是非」」


 同じ意見を告げた、その後のことですが。

 妃殿下もですが、陛下も食堂にまだいらっしゃったため……わたくし達で作らせていただいたスミレのクッキーをとても美味しそうに召し上がってくださいましたわ。

 それと、これはせっかくだからと学園での調理実習に加えてみてはと言うのも陛下がご提案してくださいました。

 学園へ戻るのに、まだそこそこ期間がありますが。憧れの方とお料理出来たレシピで、もう一度自分の手で作れる喜びを……また感じることへの感謝で胸がいっぱいですわ!!

 その日の最後に……わたくしはイツキ様と、自分で申し出たのですが文通させていただくことになりましたの。殿下から直接お伺いしても良いのですが、自分だけでもお料理したいんですもの!!
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