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番外編
第40話『緊張ほぐれる花の砂糖漬け』②
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茶会の当日。
イツキもだが、リュシアーノの学友となった貴族令嬢が二人城に来てくれたのだ。
「「本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」」
リュシアーノと同じ年頃の子どもだが、やはり貴族の令嬢と言うこともあり最敬礼はきちんとしていた。城での社交界デビューはまだの年齢だから、会うのは今日が初めてではあるが対象的な二人だった。
エイミーと言う少女は、赤髪が特徴で目は少しキツめではあるが『猫』のような印象を受ける。
マーキュリーはメガネをかけていたが、穏やかな雰囲気が少し垂れた目でよくわかる。
リュシアーノ曰く、この二人が菓子作りが得意らしいが見た目だけで判断してはいかん。悪友のワルシュが学園時代、よくからかわれては反撃していたからなあ……。
「よく来た、二人とも。今日は身内だけの茶会だ、そこまでかしこまらないで良い」
「「はい」」
とは言ってみたものの、子どもゆえに顔にはそれなりに緊張の色が出てしまっていた。まあ、無理もない。社交界デビューの前に、学友となったリュシアーノの提案でもいきなり城に参上することになったのだから。場所が離宮でもガチガチに緊張してしまうものだろう。
「私もありがとうございます」
イツキの方は久しぶりだが、慣れた場所なのでいつも通りののほほんとした笑顔でいたが。しかし、元は線が細かった女性だったが、身籠ったおかげで少しふくよかになった気がする。劇的な変化はないが、ほんの少しだ。食事はまだイツキ自身が作っているようだが、アーネストはいつでも食べられる位置にいるのは少しばかり羨ましい。
ではなく、今日のメインに移らなくては。
「イツキもよく来た。今日は私達からのささやかな感謝の品を食してもらいたい」
「? なんでしょう?」
イツキにも教えていないので、わからないのは仕方ない。俺は執事に持ってくるように頼むと……囲んでいた卓の中央に俺達が作った花の砂糖漬けとチョコレートを並べてもらった。
「「……まあ」」
「お花の砂糖漬けですね!」
エイミーらは初めて見て驚いていたが、イツキにはすぐに何が置かれたかわかっていた。やはり、東方大陸出身と言うこともあり、すぐにわかったのだろう。
「さすがイツキね! これ、私達で作ったの!」
「「……殿下方が?」」
「そうよ」
「素晴らしいですね!」
リュシアーノの言葉に、また驚きと感心の反応がそれぞれ出ていたが、その反応で俺は満足だった。ここまで喜んでくれたのなら、作った甲斐があったと言うものだ。
「是非食べて? 少しばかり苦いけれど、お茶にすごく合うの」
ヘルミーナの勧めもあり、令嬢らは顔を見合わせたが……先にイツキがひとつほおばっていたので、彼女らもメイドらは取り分けたものを手に取って口に入れていた。
「すごく美味しいです!」
イツキが食べ終えると、笑みを浮かべてくれた。それに続いて、エイミーらも首を縦に振っていた。
「本当? イツキ」
「ほろ苦いですが、お茶によく合います。手間もかかるのに皆さん凄いです!」
「イツキも作ったことあるの?」
「ずっと昔ですが……」
などと、リュシアーノとイツキは話に花が咲いていたが……他の二人は、もっと食べたいと顔に出ていたのでヘルミーナが『もっといいわよ』と言葉にしたのに顔を輝かせた。やはり、マナーは学んでいても子どもなのだなとよく分かった。
そこからは、チョコレートの方も含めて皆で花の砂糖漬けを楽しみ、緊張のほどけてきた二人も実は憧れていたらしいイツキとも話ができるくらい打ち解けていった。
イツキもだが、リュシアーノの学友となった貴族令嬢が二人城に来てくれたのだ。
「「本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」」
リュシアーノと同じ年頃の子どもだが、やはり貴族の令嬢と言うこともあり最敬礼はきちんとしていた。城での社交界デビューはまだの年齢だから、会うのは今日が初めてではあるが対象的な二人だった。
エイミーと言う少女は、赤髪が特徴で目は少しキツめではあるが『猫』のような印象を受ける。
マーキュリーはメガネをかけていたが、穏やかな雰囲気が少し垂れた目でよくわかる。
リュシアーノ曰く、この二人が菓子作りが得意らしいが見た目だけで判断してはいかん。悪友のワルシュが学園時代、よくからかわれては反撃していたからなあ……。
「よく来た、二人とも。今日は身内だけの茶会だ、そこまでかしこまらないで良い」
「「はい」」
とは言ってみたものの、子どもゆえに顔にはそれなりに緊張の色が出てしまっていた。まあ、無理もない。社交界デビューの前に、学友となったリュシアーノの提案でもいきなり城に参上することになったのだから。場所が離宮でもガチガチに緊張してしまうものだろう。
「私もありがとうございます」
イツキの方は久しぶりだが、慣れた場所なのでいつも通りののほほんとした笑顔でいたが。しかし、元は線が細かった女性だったが、身籠ったおかげで少しふくよかになった気がする。劇的な変化はないが、ほんの少しだ。食事はまだイツキ自身が作っているようだが、アーネストはいつでも食べられる位置にいるのは少しばかり羨ましい。
ではなく、今日のメインに移らなくては。
「イツキもよく来た。今日は私達からのささやかな感謝の品を食してもらいたい」
「? なんでしょう?」
イツキにも教えていないので、わからないのは仕方ない。俺は執事に持ってくるように頼むと……囲んでいた卓の中央に俺達が作った花の砂糖漬けとチョコレートを並べてもらった。
「「……まあ」」
「お花の砂糖漬けですね!」
エイミーらは初めて見て驚いていたが、イツキにはすぐに何が置かれたかわかっていた。やはり、東方大陸出身と言うこともあり、すぐにわかったのだろう。
「さすがイツキね! これ、私達で作ったの!」
「「……殿下方が?」」
「そうよ」
「素晴らしいですね!」
リュシアーノの言葉に、また驚きと感心の反応がそれぞれ出ていたが、その反応で俺は満足だった。ここまで喜んでくれたのなら、作った甲斐があったと言うものだ。
「是非食べて? 少しばかり苦いけれど、お茶にすごく合うの」
ヘルミーナの勧めもあり、令嬢らは顔を見合わせたが……先にイツキがひとつほおばっていたので、彼女らもメイドらは取り分けたものを手に取って口に入れていた。
「すごく美味しいです!」
イツキが食べ終えると、笑みを浮かべてくれた。それに続いて、エイミーらも首を縦に振っていた。
「本当? イツキ」
「ほろ苦いですが、お茶によく合います。手間もかかるのに皆さん凄いです!」
「イツキも作ったことあるの?」
「ずっと昔ですが……」
などと、リュシアーノとイツキは話に花が咲いていたが……他の二人は、もっと食べたいと顔に出ていたのでヘルミーナが『もっといいわよ』と言葉にしたのに顔を輝かせた。やはり、マナーは学んでいても子どもなのだなとよく分かった。
そこからは、チョコレートの方も含めて皆で花の砂糖漬けを楽しみ、緊張のほどけてきた二人も実は憧れていたらしいイツキとも話ができるくらい打ち解けていった。
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